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#00-03 異世界に行く準備 共通




 神様は私たちの正直な感想に気分を害することも無く、むしろ大きく頷いていました。


『その気持ちはよく理解できます。私たちこちらの世界の神々も、何の前触れも無く皆さんが召喚されたことに驚いたのです。急遽割り込みを掛けざるを得なかったので、このような間に合わせで創った空間に呼び寄せることになってしまいました』


 誤作動した召喚装置は地下で瓦礫に埋もれています。仮にその場に召喚されてしまったとしたら、私たちはそのまま生き埋めです。あまり想像したくありません。気付いて下さった神様には改めて感謝ですね。


 召喚された経緯の説明が終わったところで、今後の話です。


 私たちは神様の管理する異世界で生活することになります。


 人間以外にもエルフやドワーフ、獣人、巨人、ゴブリンといった様々な人類種が存在し、また先ほどの説明にもあったように魔物という危険な生物もいる世界です。概ね私たちの世界で語られている、一般的なファンタジー世界と考えていいようです。


 文明の水準も地球の中世、もしくはその少し前くらい。ただ人々は魔法を使える上、魔法を活用した技術もあるので、それほど不便ではないとのことです。


 いずれにしても現代日本とはかけ離れた世界には違いありません。生きていく術、そして身を護る術が必要です。本来は召喚した国が様々なフォローをしてくれたそうですけれど、今回はイレギュラーなのでその部分を神様がして下さるとのことでした。




 大陸共通語という言語の習得。


 私たちが身に着けている制服の防御力の大幅な向上。


 手持ちの鞄に一〇〇キログラムまでなら何でも収納できる魔法鞄(マジックバッグ)の魔法を付与。


 制服や鞄を含めた手荷物全てに、現地の人からは違和感が無いように見える魔法の付与。


 一年(三六五日)ほどは標準的な宿屋で寝泊まりできる程度の現金。




 以上が全員に共通の神様からのフォローです。


 それにしてもクラスメイトの数人が「チートだ!」とはしゃいでいますけれど、神様からの贈り物に対して不正チートと言うことには抵抗を感じます。本来の語意ではなく、インターネットやゲームなどの隠語なのでしょうか?


 私たちのグループでは久利栖くんがその方面には詳しいです。今は時間がありませんので、後ほど訊いてみましょう。


 さて、それとは別に、後ほど上乗せされる能力を身体能力と魔法適性にどのくらいの割合で適用するのかをそれぞれ個別に決め、さらに希望する武器や道具などを一つ授けて下さるそうです。その際、それぞれの希望に沿った形で、初歩的な魔法や武器の扱い方も習得させてくれるとのことでした。


 なぜ“後ほど”なのかというと、これから六人までのチームを作ってそれぞれ別の場所へ送り出されることになるので、チームで各々の役割を相談してからの方が良いだろうから、ということでした。


 私たちは皆例外なく、現地の人々に比べると高い魔力を有することになります。従って、もし全員を同じ場所に転移させてしまうと極端な魔力の偏りが生じ、魔物を刺激して暴走を誘発する恐れがあるのだそうです。


 ちなみに召喚装置が正常に稼働していた場合は、そのような危険性のある召喚はそもそもできないようにリミッターがあるのだとか。召喚を元に暴走が起きては本末転倒ですからね。


 イレギュラーというのは色々と厄介なことのようです。――ある意味、私にとっては都合が良いというところが、少し後ろめたいですけれど。


 神様からの説明が終わったその後、私たちからの質問と回答を経て、早速チーム分けとなりました。


 チーム分けとは言っても、そもそも私たちは校外学習の為にグループを組んでいました。概ね仲の良い者同士で集まっていたので、それでほぼ決まりと言ってもいいくらいです。


 ただ校外学習では男女混合のグループだったので、女子同士、男子同志でチームを作りたい人たちは再編の相談を始めています。ちなみに引率の担任と副担任の先生は、大人しめの子たちが集まったグループに請われて相談に乗っているようです。


 私たちはというと、今のままで大丈夫です。怜那の不在に気付かれる前に決定してしまいところですね。


「秀くん」


「ああ、分かってるよ。鈴音と久利栖もいいよね? よし」


 鈴音さんと久利栖くんが頷いたのを確認すると、秀くんは軽く手を挙げました。


「神様。僕らはこの五人(・・)で大丈夫です」


『……そうですか、分かりました。では場所を移しましょう』


 神様は久利栖くんの「五人」という言葉について指摘することはありませんでした。







 神様が手を軽く振った次の瞬間には、私たち以外のクラスメイトの姿が消えていました。


 ――恐らく私たちの方が移動したのだと思いますけれど、何の衝撃も違和感も無かったので移動したという実感がありません。


 私たちがポカンとしていると、先ほどと同じ神様が現れました。


『本来はこのまま希望を聞くところなのですが、あなたたちにはその前にお話しすべきことがありますね』


「ありがとうございます。ですが、神様はこちらに来てしまって大丈夫なのでしょうか? 僕らは相談したいこともあるので、待つのは構いませんが……」


『ええ、何も問題ありません。これは分体の一つですし、そもそもあちらの方も分体ですから』


「なるほど……、分かりました。舞依さ――」


「あのっ! 怜那は……。私たちと一緒に召喚されたはずの七五三掛 怜那は、今どこに居るのでしょうか!?」


「ちょ、舞依、落ち着いて」「舞依さーん、どうどう」


 思わず秀くんの言葉に被せ気味に訊ねてしまい、窘められてしまいました。


 いけませんね。自分で思っていたよりもずっと不安になっていたみたいです。こんな風にならないように、予め怜那がちゃんと話してくれていたのに。


 すー、はー。


 深呼吸をして、少し落ち着きました。


「ごめんなさい、みんな。神様も、申し訳ありません、取り乱しました」


『いいえ、構わないのですよ。あなたたちは彼女と結びつきが強いようですから、心配に思うのは自然なことです』


 神様の気遣うような微笑みに、何かとてもほっとして肩の力が抜けました。どうやら自分で思っていたよりもずっと気を張っていたようです。


 鈴音さんたちも――比較的冷静に見えた秀君でさえ――そうだったようで、私たちは顔を見合わせてちょっと笑ってしまいました。


『さて、彼女についてですが、少々複雑な事情があって今は別の場所で眠っています。その事情を話すには、まず彼女が特殊な存在であることを説明しなければなりません。ただ……』


 神様はそこで言葉を切ると、私と目を合わせました。


『それは、あなたから説明した方がいいでしょうね』


「……はい、そう思います」


「ねえ舞依。それって結構深い話なんでしょ? 怜那に断りなく、私たちが聞いちゃってもいい話なの?」


「それは大丈夫。こういうことになってしまったら、皆には私から説明してって言われていたから」


「……っちゅうことはまさか、怜那さんは異世界召喚を予想してたってことなん?」


「ええと、恐らく怜那も、異世界に召喚されるとまでは考えて無かったと思いますけど……」


 もっとも怜那はアニメやゲームも嗜んでいましたから、もしかしたらこういうファンタジー的SF的な展開も予想していたかもしれませんね。再会した時に聞いてみましょう。








本日の投稿はこれで最後です。明日以降は当面毎日12時に投稿予定です。

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