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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十二章 呪われた大陸>
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#12-06 ラグーンには何がいる?




 バーベキューパー(ティ)ーの翌日は、みんなちょっと寝坊してしまった。それだけ楽しかったってことだから、まあ良し。目的の期限まではまだまだ時間があるしね。心に余裕を持って行きましょう。


 というわけで、お昼近くになってから朝昼ごはん(ブランチ)をとって、行動を開始した。


 まずは私も参加した上での模擬戦。レティとも軽く手合わせをしてみた。


 レティはお姫様とは思えないほど戦えてた。基本は短剣を二本持っての近接戦闘。獣人らしい反射神経と身体能力で、スピードを重視した戦い方をする。魔道具研究家だから学者さんらしく魔法主体なのかと思いきや、バリバリの前衛タイプ。


 魔法に関しては主に身体強化に使い、牽制程度の小さな魔法を織り交ぜて戦う感じね。魔力はある方だから大きな魔法も使えなくは無いけど、魔法の構築まで時間が必要なため、実戦では役に立たないだろうと本人が言っていた。


 余談だけど、スピードを生かした戦い方や、規模の大きい魔法が苦手なところは狼型獣人の特性なんだとか。獣人の中にも魔法が得意なタイプや、近接戦闘でも立体的な機動で戦うタイプなんかもいるらしい。


 ともかくレティはかなり戦える。たぶん接近されてしまったら、舞依や鈴音では手も足も出ないだろう。まあ、魔力量にモノを言わせて防壁を張ればそもそも攻撃が当たらないし、そうなったらレティの魔力が先に尽きるだろうからレティが勝てるわけでもないんだけど。


 問題は王家からお預かりしてるレティを、流石に前衛に立たせるわけにはいかないっていうところね。という訳で、基本的には舞依や鈴音と一緒に後衛に居てもらうしかない。


 じゃあ模擬戦をする意味なんて無かったんじゃないかって? でもお互いにどれくらい動けるのかはしっかり確認しておかないと、不測の事態に陥った時に、どの程度相手に期待していいのか分からないからね。


 ちなみにレティはお姫様ポジションに少々不満そうだった。いやいや、あなたは正真正銘、お姫様なんですよ?


 うーん……、まあでもこの島にいる魔物程度なら油断しなければ問題無いだろうから、今だけ限定で前衛に出てもらってもいいんじゃないかな。その辺の判断は、(リーダー)にお任せで。――丸投げとも言う。


 という訳で、私を除いた五人は狩りに出かけて行った。後で聞いたところによると、結局レティは前衛に出てもらったそうな。久利栖からの無言の圧が強くってね(苦笑)――とは、秀の証言。さもありなん。


 皆が狩りに行っている間、私は錬金釜をフル稼働させてモノづくり。装備品の類は昨日の内に済ませたから、今日は主にトランク内スペースのアレコレを作った。後はレティの分の食器類を。


 皆は日が暮れる前には戻って来た。もちろん全員無事で怪我一つなく。


 狩りの成果はキジっぽい魔物が十数羽。それからかなりでっかいヤギみたいな魔物。ヤギは体毛がこげ茶色で、頭から(ブイ)字に立派な角が伸びていて先がくるんと曲がっている。


 角の生えたイタチやキツネに似た魔物も居たそうだけど、食材としての(獣の)肉類は余裕がある――っていうか余ってる状態だから、そういった小物はスルーして一番の大物を狙って来たんだそう。キジの方は案外鳥の肉はバリエーションが無いから、積極的に狩って来たらしい。


 それから果物類も沢山採集してきた。パイナップルとオレンジは分かるけど、その他妙な形のものが数種類。ドラゴンフルーツとかドリアンとかそんな感じね。可食判別で食べられることは分かってるから、味見してみて美味しいものは沢山――何なら木ごと――確保する予定ね。


 その日の夕食はみんな大好きカレー! 浜辺→海の家→カレーという連想で決定しました。昨日に引き続き、アウトドア料理の定番って感じだね。ご飯とナンは選択式で。レティはナンの方が気に入ったみたいだね。


 ちなみに海の家→ラーメンっていう連想もあったんだけど、中華麺を作ってないのとスープの仕込みが間に合わないという理由で、秀に却下されました。ただ想像したら食べたくなってしまったから、今度挑戦するとのこと。楽しみだね! あ、協力することがあれば何なりと。


 その夕食の席でのこと。鈴音がとある発見と推測を語った。


「この島、昔は人が住んでいたのかもしれないわね」


「うん? なにか根拠になる物でも見つけたのかい?」


 頷いた鈴音がバッグから土だらけの何かを取り出した。――いや、土じゃなくて錆なのかな?


「たぶんナイフか槍の穂先部分か……、とにかく刃物の一部だと思うのよ」


 採取をしている最中に、たまたま見つけたらしい。石にしては変な形だと気になって手に取ってみたら、錆びた金属片だと分かった。自然物では有り得ない。


「だとすると、やっぱり例の大災厄で滅んでしまったという事だろうね」


「それにしちゃあ文明の痕跡が少なすぎやあらへん? 建物の壁の一部くらい見つかりそうなもんやけど」


「まあたまたま船が立ち寄ってその時に……っていうのも考えられるけど、石材は貴重だろうし気候的な問題もあるから、家は基本木造だったんじゃないかな?」


「あー、アレやな。バリ島みたいな感じか」


「なんでバリ限定なのよ?」


「イメージや、イメージ。行ったことはあらへんけど」


「またいい加減ねぇ……」


「あはは。……怜那さん、今は無人島なんだよね?」


 皆の視線がこっちに向いたから、しばらく間を置いてから答える。もったい付けた訳じゃあ無くて、スプーンを口に入れた直後だったので。


「うん、人間の反応は無いよ。…………地上には」


「「「「「…………(ゴクリ)」」」」」


 うん、やっぱり秀のカレーは絶品だね。舞依の作った料理は私にとって不動の一番だから比べられないけど、こういう本格的なスパイスカレーも、また違う良さがある。惜しむらくは、アウトドア料理の良い意味での大雑把さが皆無ってところかな。


「チチッ!」


 なに、サムズアップで「その通り」って? 私が作ったカレーとは別物だ? キミは私の作ったのもバクバク美味しそうに食べてたじゃない。


 フッ ヤレヤレ


 これを知ってしまったら、私のではもう物足りない?


「成敗!」「プギャッ!」


 まったく、本当に一言余計なんだから。しかも無駄に舌が肥えてきてるし。クルミはもう絶対に野生には帰れないね。


 皆もそう思うでしょ――って、どうしたの? 変な顔して。


「もしかしてラグーンの方に何か変化があったの?」


「ああ、そうそう、それね! 報告しようと思ってたんだ」


 モノづくりをしている最中、常時展開している探知魔法に海の深い場所から浮上してくる反応が引っ掛かった。こっちに気付いたんじゃなく、たぶん浅い位置にいる魚を捕まえに来たんだと思う。


 で、その魔力にちょっと興味をそそられた。魔物と人の中間のような不思議な反応なんだよ。だからちょっとアプローチしてみた。


 っと、そんなジト目で見ないで。舞依はどんな表情でも可愛いけど、冷たい視線にゾクゾクするような性癖は無いからね。私はどっちかって言うとSの(攻める)方だから!


「いや、そんなん聞いてへんし!」


「久利栖はMだよね」


「なっ、なな、何を仰る怜那さん! 酷い言いがかりや!」


「でもツッコミ待ちの芸人体質って、根本的にMだと思うんだよね」


「い……、いやいや、そ、そそ、そんなことは……」


「それはなかなか興味深い論点だね。でも、今は置いておこう。で、アプローチっていうのは具体的にどんな?」


 おっと失礼しました。


 何をやったのかって言うと、探知魔法の強度を上げたんだよ。いつもは探知に気付かれないようにかなーり薄く繊細に展開してるそれを、ラグーン方面だけ敢えて気付かせるよう徐々にね。


「それで、結果はどうだったんだい?」


「ちゃんと気付いてくれたよ。それで急いで元居た深い場所に帰って行って、それから数人が戻って来た。強い探知には引っ掛からない場所までね。皆が狩りから帰ってくるまでに一度交代してて、今もいるよ」








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