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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十二章 呪われた大陸>
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#12-04 遊んでばかりはいられない(訳:ちょっとは遊びたい)




 私たちが呪われた大陸に直行せず、島(珊瑚礁)に降り立ったのには理由がある。


 まず戦闘になった際、レティーシア殿下――おっと間違った、レティとの連携に不安があったこと。基本的にはレティは後ろに控えているお姫様ポジション。まあ、正真正銘、本物のお姫様だからこれは当たり前。でも、私たちの戦い方を知っているかどうかで、護られる側としての意識が変わるはず。やっておいて損はない。


 温泉ダンジョンでそういう機会があればよかったんだけど、速攻でクリアしちゃったからね。旅に出た当初は、コルプニッツ王都を馬車(モード)で出て旅をしながら、その辺りの訓練をする時間を取るつもりだった。飛行船が使えるようになったお陰で、そのタイミングが無くなちゃったってわけ。


 レティをお預かりしてる私たちとしては、戦闘になったらトランク内に退避してて欲しいっていうのが本音だ。ただねー、仲間の一人として扱って欲しいっていう本人たっての希望なので。


 ともあれ。それが一つ目の理由。そしてある意味それに関連して、レティに瘴気遮断結界をレクチャーするっていうのがもう一つ。


 基本的には誰かがレティに張り付いてることになってるけど、戦闘も含めて一緒に行動するとなれば不測の事態は起こり得るから。念の為にマスターしてくれてた方が安心だ。まあ一種の保険ね。


 それから装備の見直し。いい機会だから防御面を強化しておこう。これまで危機的状況になったことが無くて先送りにしてたからね。


 珊瑚礁に降りるタイミングに合わせて、レティも私たちとよく似た騎士服に着替えている。ただ差し色がレティの髪色に似た銀灰色になってて、金糸の刺繍が袖や襟に加えられててちょっと豪華仕様。全員で並ぶと、アニメ的なんちゃら騎士団とかっぽいかも? レティが部隊長でね。


 聞けばレティの騎士服は、騎士に関連する式典に参加する際に着用する用に仕立てられたもので、姉妹全員分があるのだそう。もちろん用意したのはルナリア(腐女子)殿下。末っ子が男の子だと判明したから、嬉々として男子用を準備していたとか。


 これは余談だけど、騎士服に着替えた時からレティは耳と尻尾を出している。デリケートな話題かもしれないから、なんとな~く訊けないままでいるけど、そっちの獣人スタイルの方が素の自分っていう認識なのかな? うーん、興味深い。あとモフモフしたい。シェットさんとティーニさんの耳と尻尾はとても良いものでした。


 ゾワリ


 おっと、舞依からほんのり冷気を感じる視線が飛んできた。いやだなー、別に良からぬことを考えてたとかじゃないから。レティの尻尾をブラッシングさせて欲しいなーとか? その程度だから。舞依だってやってみたいでしょ? ほらー。


 それはさておき。


 ライフジャケットがブレストプレート代わりになるから、後は腕と脚用の防具かな。頭はどうしよう? 一番重要だけど、戦闘時に防具が一番邪魔になるところでもある。うーん、取り敢えず前衛の二人用に何か作るろうか。ボクシングのスパーリングの時に被ってるみたいなのとか。アレならあんまり邪魔にならなそう。


 で、ついでにトランク内スペース用の家具をアレコレ。空間はいくらでも作れるけど、ドアとか窓とか建具の類が無いからね。男女のスペースは左右で分けたけど、ドアなり衝立なりはやっぱりあった方が良い。気分的に。


 後はカウンターとか食卓とかカーペットとか観葉植物とかね。無くてもいいけど、あった方が寛げる。いっそ土と芝生を大量に確保して、キャンプ場でも作ろうかな? 体も動かせるし、おうちキャンプっぽくてちょっと面白そう。


 ――とまあ、そういった理由から島に上陸したのです。


 え? 飛行船に乗ったままでも可能だったんじゃないかって? 大変良い質問ですね。先生、花丸あげちゃいます。


 ま、やろうと思えばね。戦闘訓練はトランク内に広いスペースを作って模擬戦をやればいいし、魔法のレクチャーなら飛行船のゴンドラでもできる。モノづくりだって、やろうと思えば錬金釜無しでもなんとかなる。


 でもさー、折角旅に出たんだし、色んな所を見たいじゃない? おあつらえ向きに珊瑚礁なんてものも見つかったわけだし。


 飛行船をフル活用すれば、世界中どこに行くのだって一日あれば十分。この程度はタイムロスでもなんでもないのです(←言い訳)。


 さてと、皆は訓練を始めたことだし、私は錬金釜でモノづくりに取り掛かろう。まずは防具からかな。







 ふと斜めから差し込む日差しに気付いて顔を上げると、太陽が傾き夕暮れが近づいてきていた。集中してて気づかなかったよ。


 おーい、みんなー。そろそろ夕飯の支度を始めようよ。気付いたら結構お腹も空いてたしね。皆も集中して時間を忘れてたみたいだね。っていうか、水分補給とかちゃんとしてたの? ああ、そっちは休憩を挟んでやってたのか。


 相談の結果――というか、久利栖が強く推したので今日の夕食は野外バーベキューとなった。好きだし別にいいけど、ビーチだからバーベキューってちょっとパリピっぽくない? しかもかなりベタな感じの。


「ナニをおっしゃる怜那さ~ん。ベタでええやん。いや、むしろこの場合ベタ()ええんよ」


 さようで。まあそれじゃあパリピっぽくお酒も用意しましょう! じゃ~ん! 新開発の、ビール風アルコール飲料~!


 これは秀が監修して私が錬金術を駆使して作ったもの――の、試作品。まだ私も秀も納得していない。及第点ってところかな。色んな果物や野菜のエキスをブレンドして蒸留酒を加えて炭酸にしたものだから、どっちかと言えばカクテルに近い。なお見た目は泡の立ち方も含めてビールそっくり。


 別に私たちはビールが欲しかったんじゃあ無い。っていうか、そもそもビールの味をちゃんと(・・・・)は知らない。なにせ未成年ですから。こっそり味見したことはあるけど。なんとなく苦みと炭酸の強いお酒っていう、ふわっとした印象があるだけ。


 じゃあなんでわざわざ開発したのか? それにはそんなに深くは無い理由がある。ええ、全然深くは無いんですよ。ツッコミはお控え下さい。


 普段飲んでるお酒はワインで、これはトランクの機能で温度管理と熟成をした自作のものだから味は良い。皆にも好評だしね。ちなみに赤・白・スパークリング各種取り揃えております。


 でもさー、なんて言うの? 上品なんだよね、ワインって。単に日本人的イメージなのかもしれないけどさ。


 料理によっては多少お行儀が悪くても、こう……ゴッキュゴッキュ飲んでプハァーッってやりたいでしょ? 少なくとも私はやりたい。


 そういう時はレモン(又はグレープフルーツ)サワーを作ってて、それで不満は無かったんだけど、こういう時の定番はビールなんじゃないかとある時話題になった。トリアエズナマっていう合言葉もあるくらいだし、と。


 ちなみにこっちの世界のエールは、ビールとは似て非なるものね。何度か試しに飲んでみた感想としては、苦みよりも酸味が強いのと、日本人の舌的に雑味が結構気になる。不味い……とは言わないけど、自作のお酒もあるし、敢えて買おうとは思わないかな。


 ――とまあ、そんな感じで雑談の延長線上でビール風アルコール飲料を作ってみた。うん、実に浅い理由だね(笑)。なお本物のビールの作り方は私と秀が大凡のところを知ってたんだけど、こっちの世界の市場ではホップが見当たらなくて早々に断念した。


 さてさて、バーベキューの方もイイ感じに焼き上がって来たし、皆にグラスも渡ったね? ハイハイ、クルミ専用のグラスもあるから。ではキンキンに冷えたなんちゃってビールを注ぎまして――


「わわっ! な、なんですか、この泡っ!?」


「あはは、これはそういうお酒なのよ、レティ」


「ちょっと味にビックリするかもしれませんから、苦手だったらそう言って下さいね」


「は……、はい」


「さて、それじゃあ今更な気もするけど、親睦会みたいな感じかな。改めてよろしく、レティ。という事で、カンパーイ」


「はい、よろしくお願いします。乾杯!」


「「「カンパーイ」」」「キュッ!」「ウェーイ!」








以前にも補足しましましたが、念の為再度補足を。


この世界に飲酒を年齢で規制する法律はありません。

また主人公らは元の世界に戻ることはできないので、移住したのと同義です。

なので、日本では高校生でしたが飲酒に問題はありません。

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