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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十一章 コルプニッツ王国>
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#11-09 本命アイテム(もしくはドラゴンの鱗と浮岩に関する考察)




 ドラゴンの鱗は一種の魔法発動体になっている。


 わざわざ“一種の”って付け加えているのは、通常の魔法発動体としては使用できないから。即ちドラゴンの鱗は浮遊(飛行)魔法専用の発動体なのだ。


 魔力を通すだけで宙に浮かぶことができるけれど、これを通して別の魔法を発動させることはできない。鱗自体が一種の魔道具になってるって言い換えても良いね。


 余談だけど鱗自体に付与魔法を掛けることはできるし、錬金術で加工することもできる。鱗に魔力を通して、魔法発動の補助に使うことはできないってことね。


 つまりドラゴンは空を飛ぶ際、翼を羽ばたかせることで飛んでいるのではなく、魔法によって浮いているってわけ。まあ普通に考えれば、ティラノサウルスに羽をくっ付けても飛べるわけ無さそうだよね。


 恐らく翼はバランスを取るためとか、旋回・急減速する際に使用しているんだと思う。もしくは翼は翼で、別の魔法――例えば風の魔法で加速するとかしてるのかもしれない。動いているドラゴンを間近で観察すれば分かるかもね。なかなか興味深い。


 で、更に考えていくと、もしかするとドラゴンは飛ぶときだけではなく、地上を歩いている時も――というか、常時浮遊魔法を使っているのかもしれないと思ったんだよね。巨体を維持するならそうした方が良いから。ドラゴンの魔力量はそのくらい簡単にできそうだったし。


 仮にこの推測が正しかったとしたら。


 それはドラゴンに限った話では無いはず。ドラゴンに匹敵する巨大な魔物には、浮遊魔法を自動で発動する何かが備わっていると考えられないだろうか?


「もしかしてレイナさんは、浮岩にドラゴンの鱗に類するものが含まれていると考えているのでしょうか?」


 さすがはレティーシア殿下。魔道具開発に興味があるだけあって、ピンと来たみたいだね。推測に推測を重ねてるから信憑性は低い――というか、私の勘みたいなものだけど。


 浮岩が採取されるっていう場所に、巨大な魔物の墓場的なもの、或いはそれらの化石が大量に埋まっている地層があったなら、多少はこの思いつきの裏付けになるかもしれない。


 ま、浮岩の中に竜の鱗に類する魔法発動体が含まれてるのか、それとも何か別の理由で浮いてるのかは、本職の研究者がその内突き止めてくれるでしょう。


 浮岩に関する考察はここまで。いろいろ興味深いところはあるし、利用法のアイディアを出し合うのも面白そうだけど、話が逸れまくって収拾がつかなくなりそうだからね。


「ってことで、本命の装備を皆に配りまーす」


「本命? スキーやボードで遊ぶのが目的じゃなかったのかい?」


「暇つぶしも目的の一つだけど、アレはあくまでも玩具だからねー」


 じゃあハイ、女性用を舞依と鈴音に、男性用を秀と久利栖に。


「なにコレ? 防弾チョッキかしら?」


「鈴音さ~ん、ファンタジーの世界観で防弾チョッキは無いで?」


「う、煩いわね。鎧の種類なんて知らないもの。仕方ないでしょっ」


「あはは。まあ防弾チョッキやボディアーマーでも間違いじゃないけど、この場合ブレストプレートって言った方が良いかな」


 ドラゴンの鱗を体にフィットするように加工したもので、胸側と背中側の二枚があり、それを肩と側面を革のベルトで繋いである。割と薄くできたから、ジャケットの下に問題無く着れる。――ちょっとだけ着ぶくれするけど許容範囲のハズ。


 まあ鱗は頑丈だから、防弾チョッキ(ブレストプレート)としての役割も十分に果たせるけど。


「ブッブー、不正解! それはどっちかって言うとライフジャケットだね」


「ライフジャケット? 話の流れからすると、これも竜の鱗でしょ。……あ、もしかして、飛行船から転落した時のことを考えて?」


「そ。いざという時の為にね。ちなみに海に落ちた時にも使えるし、素材的に防弾チョッキにもなるから、万能ライフジャケットって言ってもいいかも」


 呪われた大陸に渡るには海を越えないといけないからね。ちょうど良い機会だから作っておいたんだよ。まだ時間はあるから、調整や修正も出来るしね。


 というわけで、早速着てみましょう。着やすいようにちょっと大きめに作っておいたけど、サイズ自動調整をかけておいたからそのまま着ちゃって大丈夫だよ。サイドのベルトを留めたら、ちゃんとフィットするハズ――うん、オッケー。


 で、この上からジャケットを着てと。うん、ほぼほぼジャケットに隠れるから、目立たないでしょう。


「どう? 違和感とかない?」


「うん、特には。上にジャケットを着ても大丈夫そう」


「ちょっと厚手のベストを着こんでるくらいかしら。外見的にはどう? やっぱり上半身がちょっと大きく見える?」


 私と舞依の二人で鈴音の周りをぐるっと一回り。


「特に違和感はありませんね」


「うん。もしかしたらこの制服に合ってるのかも。お堅い感じのデザインと装飾で、もともと存在感があるから」


「あー、確かにそういう感じはあるわね」


「じゃあお次は……。秀、久利栖、軽くで良いから模擬戦をしてくれる?」


 二人に向かってセイバーを投げ渡す。ナイスキャッチ。


「了解、任しとき」「動いて違和感が無いか、だね」


 うんうん、よくお分かりで。じゃあ、準備は良い? 始めっ!


 模擬戦を始めた二人は、いつものような実戦を想定した本気のものではなく、かなり派手な立ち回りの、いわば殺陣たてのような動きをする。今回は動きまわっても違和感が無いかどうかのチェックだから、その意図を汲んでそうしているんだろう。


「わぁー(キラキラ)」「二人とも素敵ですね」「(コクコク)」


 ――と、思ったんだけど、目をキラキラさせている両殿下+侍女さん――レティーシア殿下がキラキラ増量なのは言うまでもない――の様子を見ると、カッコイイところを見せたかった久利栖に秀が付き合ってるだけにも見える。


 いや、チェックに協力してくれてるんだとは思うよ? でもね~。まあ、なんていうか、普段の行い?


 ま、どっちでもいいか。こっちはこっちでちゃんと観察しよう。


 観察中…… 観察中……


 ふむふむ、ほうほう、なるほど。見る限りでは、二人ともいつもの動きと特に変わるところは無いっぽい。


 数分動き回ったところで模擬戦は終了。ちなみに殺陣らしく、最後は久利栖が斬られて派手に錐揉み回転してぶっ倒れていた。いや、でも倒れた後で震えた手を伸ばしてからバタッと下ろす演出は、完全に蛇足だから(笑)。


「お帰りー。どうだった? 違和感とかない?」


「いや、それは全然。動きに合わせてある程度形が変わるみたいに感じた」


「せやな。ドラゴンの鱗はゴムか何かなん?」


「あはは、いやまさか。ってことは、運動の阻害を軽減する付与はちゃんと機能してるみたいだね」


 万能ライフジャケットを謳うなら、常に着ていられるものじゃないと意味が無い。なので、今回は初めて運動阻害軽減を付与してみた。これまでに練習も含めて付与魔法はかなりの数をやって来たけど、鎧的なものに付与したことって無かったから、その辺りに関しては考える必要が無かったんだよね。


 考えてみると私も含めてクランメンバー全員、これまで防具に関してちょっと無頓着すぎたかもしれない。まあ皆は神様が強化してくれた制服があるし、私はトナカイのローブを着てるから、並大抵の状況では問題無いと言えばそうなんだけど。


 いい機会だから、この(なんちゃって)騎士服の下に着込んでも違和感のない防具を、他にも作っておこうかな? 脛あてとか籠手なら簡単にできそうだし、なんならナイフとか仕込んでおけるように――って、それは方向性が違う。


 おっと、話が逸れた。


 で、ライフジャケットとしての機能の方ね。こっちは単純明快。二メートル自由落下したら、自動的に装備者から魔力を吸い取ってゆっくり落下するようになる。あと全体が水に浸かった場合にも発動して、この場合は胸の方が上になるように浮かび上がって水面に出たら止まるようになってる。なお、どっちの場合も意図的に魔力の流れを止めることはできる。


 というわけで、ちょっとだけ実演。四メートルくらいの高さまでジャンプして、そのまま自由落下。――よし、ちゃんとゆっくり落ちるね。もっと高くジャンプしても良かったんだけど、舞依に怒られそうだからね。自重しました。


「とまあ、こんな感じね」


「なるほど。ところで、これも意識して魔力を流せば飛べるんだよね?」


「一応できなくはないよ。ただ前後から挟まれて上に引っ張り上げられる感じになるから、結構息苦しいかな。これで飛ぶことは緊急時くらいにした方が無難だね」








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