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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第十章 王都の新拠点>
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#10-01 今こそ、私たちの秘密を話そう……

新章、始まります。よろしくお願いします。




 新年を迎えるお祭りが終わり、私たちは先王陛下と改めて話をした。ちなみに会頭ドルガポーさんも結構関わってしまった為に、王宮に呼ばれている。


 話と言ってもそう難しい話では無く、今回の件に関して私たちが知ってしまった情報の内、外に漏らしてはいけない事の再確認がメインね。小さい子供じゃないんだし、その辺はなんとな~く線引きしてるけど、ちゃんと認識を擦り合わせておく必要はある。


 一種の守秘義務ってところかな。で、それと引き換えに報酬を頂いた。お金を貰ってもね――と思ったら、なんと王都の商業区に物件を貰った。


 図面を見た感じだと、日本的に考えるとかなり立派な一軒家だけど、お屋敷というには小ぢんまりしてるってくらいの物件だ。私たちだけでもギリ管理しきれるくらいかな。庭が広いところも良いね。


 立地的にもミクワィア商会の南地区支部にほど近い。ミクワィア商会とは今後も関係が続くだろうし、なかなか便利だ。メインストリートからは外れて路地を少し行ったところだから、人通りも少なくて静かそうだ。


 ――なんだか随分良さげな物件だけど、こんな空き物件がたまたまあったの?


 と、疑問を呈したところ、何でも数代前にお忍び好きのやんちゃな王妃(・・)様が居たらしく、そのお方が街歩きをする際の拠点として使ってた場所なんだとか。なんでも当時は、凄まじく貴重な遺物アーティファクトである転移装置が設置されていたんだってさ。筋金入りだね(笑)。


 お分かりであろう。要するに、なんだか懐かれちゃった双子ちゃんとか、久利栖がロックオンしているレティーシア殿下を始めとした王女様ズは、今後も遊びに来る気満々ってことね。


 いやぁ~、実は話し合いに先立って双子ちゃんにお別れを告げたんだけど、大変だったんだよ。静かにポロポロと涙を零して、第三側妃様(お母さん)にギュッとしがみ付いてね。我儘を言えない(言ってはいけない)のを理解してるんだろうけど、見ていて辛いものがあった。


 それだけに報酬としての物件っていうのは有難い提案だった。ま、物件があってもそうそうしょっちゅう遊びに来るのは無理だろうけど、繋がりが形として残ると安心できるものだからね。




 さて、王族側からの話はそんな所かな。じゃあ、私たちの話といきましょうか。


 ちなみに私たちの相談は昨夜のうちに済ませてある。全会一致で事情を話すことに決まった。


 結局のところ、私たちの存在は余りにも不自然過ぎるんだよね。個々の能力――魔力だけじゃなくて、知識も含めてね――がこの世界の一般人からはかけ離れてるし、トランクを始めとした神様謹製の便利アイテムもある。


 どこかの国の訳あり貴族出身で追い出された身っていう説明で、一旦は納得できるだろう。あながち大ウソってわけでも無いからね。でも長く関わっていけば、どうしたってそれだけでは説明できない部分が見えてくる。


 誰ですか? 概ね私のせいだろう、なんていう人は。先生が優しく成敗してあげますから、手を挙げなさい。


 ともあれ。このタイミングで話しておくのがベターだろう。ってことでリーダー、説明よろしく!


「実は僕らは、異世界から召喚された者なんです」


 秀がいきなり結論をブッ込むと、先王陛下と会頭さんは一瞬絶句した。


「…いや、しかし、全ての召喚装置は廃棄されたはず。一体何者がそなたらを召喚したというのだ?」


「それが、私たちは誰にも召喚されていないのです。いくつもの偶然が重なった事故が原因なんです」


 私たちが女神様から聞いた――あ、私はしおりのムービーで見たんだけど――説明を、秀が簡潔に話す。あ、なんならムービー見ますか? 証拠代わりに。ほい、じゃあどうぞ。


 再生中…… 再生中……


 なんていうか、改めて聞くと「そんなバカなことが……」ってぼやきたくなるような話だよね。先王陛下と会頭さんも、何とも言えない表情をしている。


 で、言ってみればココまでは前提の話。本題はこれから。


 私たちはこれから、女神様からの依頼で辛うじて生き残っている召喚装置を完全に破壊しに行かなければならない事。そして場合によっては、呪われた大陸(仮称、久利栖命名)へ渡航する際に協力をお願いする可能性があることを伝える。


「女神様からの依頼という事であれば、無論協力はしよう。しかし、それ以前の話として、そなたらだけでは危険過ぎるのではないか? 例えば騎士の精鋭で遠征隊を組むということも可能だが……」


 その申し出は有難いんですが、むしろ私たちだけの方が自由に動けるんで楽なんですよ。――ま、ストレートに言ってしまえば足手纏いなんだけど、秀はそんな身も蓋も無いことは言いません。私だって(たぶん)言わない。


 表向きの理由としては、瘴気塗れの大陸だと私のトランクをフル活用することになるだろうし、それはあんまり多くの人に知られたくない。物資も自分たちの分だけなら十分持っていける。――まあそんな感じの説明をする。


 まあ渡航に関しても筏と気球を活用すれば何とかならなくもないんだけどね。速度がなぁー、ネックなんだよね。ジェット機モードとか無いのかな?


 ちなみに女神様からの依頼は一年くらいの猶予期間はあるから、それほど急ぎの話では無いことも合わせて伝えておいた。









この章は全体からすると、旅に出る前の幕間のような章になります。

なので、ちょっと短めになる予定です。

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