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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第九章 王家にまつわるエトセトラ>
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#09-25 この王族には問題があり過ぎる!




「王族の方々が相手なんだよ? ふざけていい時とそうじゃない時があるでしょ?」


「いや、まあ、落ち着いて舞依。怒った表情も素敵だけど、舞依には笑顔の方が似合ってるよ?」


「そ、そういう言葉で誤魔化そうとしても駄目だからね」


「誤魔化してるわけじゃなくてさ。久利栖はアホだけど考え無しのバカじゃあ無いから、本当にやっちゃダメなことはやらないと思ったし」


 いきなり結婚を申し込むのはアホだとは思うしTPOを弁えて無いけど、それ自体は別に失礼な事とは言えない――と思う。ギリギリかもだけど。王女様に近づいたことも触れたことも、殊更拒否されたわけでも止められたわけでも無いしね。


「だとしても。止められるなら止めておいた方が良いでしょ? 違う? 怜那」


 舞依がぐぐっと顔を寄せて問い詰めてくる。思わずキスしたくなっちゃうけど、今したら間違いなく本気で怒られるからね。しません。


「そ、それは、まあ……。あ、そうだ! そんな事よりも気になることがあるんだけど」


 ぐるっと皆を見回して注意を引く。


「なぜ、獣人の王女様がいらっしゃるのでしょうか?」


 座がシンと静まり返る。


 脳内が花畑状態の久利栖は(ハテナ)マークを浮かべてたけど、舞依たちはすぐに理解してハッと表情を変えた。


 そう。この世界では教会で祝福を貰えない異種族間の婚姻は、公的に認められていない。にもかかわらず、獣人の王女がいる。


 正式ではない結婚っていうか、事実婚? みたいな関係はあるらしい。あとは貴族や富裕層の愛人とかね。下世話な話になるけど、種族が違ってもする(・・)ことはできるだろうし。


 正妃、側妃ともに普通にヒト族ってことは、隔世遺伝とか先祖返りの類なのかな? 何にせよ、王族に獣人の血が入ってたのは間違いない。普通に考えれば他種族同士だと出生率は低いだろうし、祝福を受けたと考えるのが自然だ。


 なんだろう、権力にモノを言わせて祝福して貰ったのかな? うーん、スキャンダラス! 王室ネタって特別興味は無くても、なんとなーく耳に入っちゃうよね。







 怪我の功名的にクールダウンしたので、互いの紹介とこうなった経緯について腰を落ち着けて話し合うことに。


 ま、シリアスな話し合いは基本的に秀に丸投げ。よろしく~。なので割と暇な私たちは、優雅にティータイムを楽しみながら聞き役に徹している。


 うん、いい香りの紅茶だね。ソファの座り心地も良いし、これはなかなか贅沢なひと時だね。ちなみにカーバンクルはちゃっかり向こう側(・・・・)のソファに座っている。第一王女様にナデナデされてご満悦な感じだ。


「怜那、ちょっと緊張感が無さすぎじゃない?(ヒソヒソ)」


「今はまだ情報を整理してる段階だから、秀に任せておけば大丈夫だよ(ヒソヒソ)」


 それに緊張感云々って言うなら……、ほら、あっちの方が。


 私たちのテーブルの向かいには、年恰好が近いという事で双子ちゃんを含めた王女様ズが着いている。


 で、例のケモ耳王女様――今はケモ耳が引っ込んでいる。出し入れできるのかな?――が、両手でカップを持ちながらチラッ、チラッ、と久利栖に視線を向けている。久利栖は久利栖で、そんな王女様に爽やかな微笑みを返している。いやホント、誰コレ(笑)。


 思わず舞依と鈴音の三人で目配せしあっちゃったよ。「いいのコレ?」「とは言ってもねぇ」「私たちではどうにも……」みたいな? 結論としては“そっと見守りましょう”ってことで。――野次馬に徹するとも言う。


 他人の恋バナは蜜の味だからね。そこには地位も財産も年齢も性別も関係ない。王女様だろうが平民だろうが、恋の始まりは見ていて面白――ゲフンゲフン、微笑ましい。


「ついでと言ったらなんだけど、もう一つの件も確認しておかない?」


 ん? もう一つの件って何だっけ? 思わず舞依と顔を見合わせるけど、舞依も分かってないみたいだね。


「怜那のスマホにマンガのデータって入ってない?」


「マンガ……って、ああ、昨夜のアレね」


 第二王女の腐女子疑惑か。うーん、BLもののマンガとかラノベは鈴音にお薦めを借りたの以外は、ほとんど読んでないからな。うん、やっぱり無いね。


「……じゃあ、ちょっと前に近藤さんに描いてあげたイラストは?」


「あー、あったね、そんなことも。あのデータならまだ……、うん、残ってる」


 確か高校に入った直後くらいだったかな? 鈴音経由でクラスメイトに頼まれて、とある人物二人――固有名詞は明かせません。双方の名誉の為に(笑)――のカップリングイラストを描いてあげたことがあるんだよね。


 ちなみに私は、オリジナリティーのあるイラストや絵画を描くっていう意味での絵心は無い。ただ自分で言うのもなんだけど観察眼と記憶力はある方で、描くテクニックもあるから、写生とか模写とか似顔絵とかは結構得意。


 という訳で第二王女様。ちょっとこちらの業の深い絵をご覧になって――


「っ! ふぉおおおおおぉぉーーっ!!」


 あああ……。目をまん丸に見開いてフンスと鼻息も荒く、スマホを食い入るように見つめてるよ。残念ながら“疑惑”の文字が外れちゃったね。いや、別に残念ってわけでもない――のかな? 鈴音にとっては同好の士が見つかったんだから、いいのか。


 何にしても、ね。


 ちょ~っと問題が多すぎじゃあないですか? 王族の皆様?








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