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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第九章 王家にまつわるエトセトラ>
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#09-23 ロイヤルファミリーが勢揃いだった




 ――ヒマだね。こんなことならトランプでも持ってくればよかったかな。事故や災害の対策ばっかり考えてたから、その手の遊び道具は持ってこなかったんだよね。校外学習の備品リストにあったからって言うのもあるし。


 え? 久利栖、持ってきてるの? トランプと……、ナニこの変な絵ばっかりのカードゲームは? ふんふん、アナログゲームをテーマにしたアニメで見て、面白そうだったから買ってみた。なるほど。まあ文字が無いなら双子ちゃんたちにも出来るかな。トランプもババ抜きならいけるでしょ、たぶん。


 と、いう訳で唐突に始まりましたババ抜き大会。よし、ではいっちょ揉んでやりますかね。フフフ、何を隠そう、私はババ抜きをやらせたら右に出るものは無いとまで言われた女!(諸説あります)


「えーっと、九人おるから、怜那さんを除いた八人を二組に分けて、負け抜き(・・・・)ビリ決定戦をやろか」


「えぇっ、私だけ仲間外れ!? どうしてよ! ぶーぶー」


「過去の自分の所業をよーっく思い出してみるんや。エゲツナイ心理戦を仕掛けてくる怜那さんは、初心者相手にゃキツイわ。双子ちゃんなんて、泣いてしまうやもしれん。トラウマになったらどうすんねん」


 そんな風に言わなくてもいいじゃない。第一、普通にババ抜き勝負をするだけで、泣かせちゃったり、ましてトラウマになったりするなんてそんなことは――


 ポン フルフル


 えっ、舞依までダメだって言うの? しょうがないなぁー、じゃあ私はルトルでも弾いてるよ。


 ♪~ ♪~♪♪~~


 こっちの世界組の人は数字を合わせるのに最初はちょっと手間取ってたけど、すぐに慣れてスムーズにカードを受け渡すようになった。ババ抜きはルールが簡単だからね。


 観戦しつつ、グループが一騎打ちになってカードの枚数も減ってきたところで、緊迫感のある音楽の演奏にしてみたりとか。これはこれで結構面白い。勝負が決まったところで「デデーン」みたいな音を奏でたりね(笑)。


 さてさて、決勝戦に残ったのは久利栖とロッティちゃんとドゥカーさんとエイシャさんの四人。こっちの世界組が多いのはやっぱり慣れかな。アンリちゃんはロッティちゃんとの双子勝負に勝って抜けている。


 そして決勝戦は久利栖とロッティちゃんの一騎打ちに。久利栖が仕掛けると、ロッティちゃんも同じ手でやり返すという応酬の末――辛くも(・・・)久利栖が勝利した。つまり、勝負は拮抗してたってことね。


「きぃーっ! 悔しいーっ!」


「ハッハッハー。お子ちゃまでは、俺の相手はまだ早かったようだな!」


「なによー、クリスだってビリから二番目じゃない!」


「ぐはっ! ゆうてはならんことを……」


 ま、まあ、名勝負? だったんじゃないかな? っていうか、久利栖がお子ちゃまと完全に同レベルになってるし。


「それにしても、これはなかなか良くできた玩具ですね。他の遊び方もあるのですよね?」


「ええ、複雑な駆け引きがいるものから単純なものまで沢山ありますね」


 知育玩具としても使えるからね。エイシャさんが「数字をこの国の文字にすれば……」なんてブツブツ言いながら考え込んでる。まあその辺はむしろ、会頭さんと話し合うべきじゃないかな。


 ――おっと、暇つぶしをしてたら、王城に着いたみたいだよ。久利栖とロッティちゃんもリベンジマッチはまた今度ね。







 王城へ入ると会頭さんたちの纏う空気が変わったのが、ウィンドウ越しにも分かった。トランク内の声が外に漏れることは無いと分かっていても、自然と私たちの口数も少なくなってしまうね。


 王城内を更に馬車で移動し、奥にある王宮へ向かう。そうして先に進み、いくつかの門と検問をパスして遂に到着。そこからは徒歩で宮殿内を進む。


 ドゥカーさんの話では、普段の商談で使う場所とは異なる、奥の方の応接室に通されるだろうとのこと。プライベートな付き合いのある貴族や、他国の要人が通されるところで、十分な広さもあるとのこと。トランク内だけで九人と一匹いるからね。それを聞いて安心。


 豪奢な装飾が施された扉が開かれた先には、ずらりと何かこうオーラのある人々が並んでいた。


 私たちの感覚だとお爺ちゃんというにはまだ若い男性が先王陛下。そして正妃と三人の側妃様、三人の王女様の合計八人。王族が勢揃いだね。先王陛下の正妃と側妃の姿は見えないけど、今回の件とはあんまり関係無いからかな? それにしても男女比の偏りが凄いね。


 会頭さんは一瞬硬直した後、膝をついた。流石にここまで勢揃いしているとは考えてなかったんだろうね。っていうか、ドゥカーさんも目を円くしてるくらいだ。


 扉が閉じられ、先王陛下から声をかけられて会頭さんが立ち上がると、互いにホッと一息。少し雰囲気が砕けた感じになったみたい。顔見知りって感じだね。


 先王陛下と会頭さんが挨拶を交わしているけど、そろそろ本題に入った方が良いんじゃないかな。双子ちゃんのお母さん(=第三側妃)がソワソワ落ち着かない感じだよ。双子ちゃんの安否がずっと気になってたんだろうね。心なしかやつれた雰囲気もあるし。


「――っと、お声がかかったね。全員一緒に出ちゃっていいんでしょうか?」


「うむ、そうしてくれて構わない。変に段階を踏む必要もあるまい」


 了解です。みんな準備はいい? オッケー。じゃあ外に出るよ!








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