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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第九章 王家にまつわるエトセトラ>
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#09-20 王宮へ行く(正規の)方法




 ふぅ~。では、一息ついたところで今後の話をしよう。


 私が会頭さんを頼ってドゥカーさんたちを連れて来たのは、とにかく一旦追手の目を完全に断ち切っておきたかったから。その上で一刻も早く王城へと向かうっていうのが基本方針。


「で、ココからが相談なんですが、会頭さんには正規のルートで王族の方々に直接会う手段はありませんか? 謁見とかの公的なものではなく、もっとプライベートな形で」


 敵に察知されないよう可能な限り内密に、王宮まで一足飛びに双子ちゃんたちを送り届けたい。王族ともパイプを持つっていうミクワィア商会なら、直接王宮へ取引に行くこともあるんじゃないかなって思ったんですけど?


「うーむ。王族とも取引があるとはいえ、基本的には必要な時に王宮へ呼ばれて出向くという形だからな。こちらからというのは滅多にない」


「無理ですか……」


「いや、方法はある。おいそれとは使えないが、王族の方々に手紙を直接届ける特別な方法はある。しかし……」


「もしかして検閲されます?」


「いや、魔法による入念なチェックはされるが、内容の検閲は無い。その為の特別な方法だからな。しかし他人の手に渡る以上、見られる危険性は考慮すべきだろう。まして我らはロックケイヴ子爵との繋がりが深い。紛失を装って敵の手に渡る可能性も無いとも言い切れない」


 つまり手紙に殿下たちに関わることは書けないってことね。商談に関することなら問題無いけど、それでは今の状況だと断られる可能性が高いと。


 うーん、困ったね。


「それならば内容は私が書こう。王族の方だけに伝えられる方法がある」


 いわゆる符丁ってやつかな。もしくは暗号。一見普通の文章だけど、それを知る者にだけは隠された内容が分かる――みたいなね。うーん、なかなか興味深い。どういう仕組みなのか気になるよね。読ませてくれないかなー。あ、もちろん無理なのはわかってますよ?


 なんにしても、方法があるなら早速出しちゃいましょう。で、今を逃すとマズい急ぎの商談って感じで会頭さんを呼びつけて貰うと。


 私も含めた全員はトランクの中に入って、会頭さんに持っていって貰うと。


「外に出るタイミングを計るためにも私はついて行かざるを得ないんだけど……、皆はどうしよう?」


 まあ極端なことを言えば、会頭さんにトランクを持っていってもらって、双子ちゃんの母親あたりに預けて、夜中になってから外に出ればいいんだけどね。頃合いを見計らってトランクは回収すればいいだけだし。


 ただこの方法だとかなり長い時間トランク内で待機することになるし、結構辛いと思う。スロットの時間を止めてタイマーを掛ければって? それだと中に入ってる人は時間を止められてた感覚は無いはずだから、何時外に出ればいいのか分からなくなっちゃうからね。


 てなわけで、外の様子を確認できる私は不可欠ってわけね。商談の時間を指定してたとしても、不測の事態でズレる可能性はあるからね。――誰ですか? 王宮に入ってみたいだけなんじゃ、なんていう人は。先生、怒らないから手を挙げなさい。成敗してあげます。


「せっかくやし、王宮ちゅうもんを見たいとこやな。あくまでも興味本位と好奇心で、必然性はこれっぽっちも無いんやけど」


「確かに王宮なんて普通いける場所じゃないし、僕も興味はあるね」


「二人とも変なところが怜那に似てきたんじゃない? 大丈夫なの」


「えーっ、そんな言い方って無くない? 好奇心と探求心は人生を豊かにしてくれるんだよ」


「言わんとすることは分かるけど、怜那の場合は行動力が突き抜けてるから、周りを巻き込んで大変なことになっちゃうのよね」


 そ、そそ、そんなことは無いよー。と、さり気なく視線を逸らしてみたり。


「まあ久利栖も言ったけど、僕らが付いて行く必然性は無いね。ただそうなると、どこかに宿を確保しなきゃいけないんだよね。念の為に拠点には暫く戻らない方が良いだろうから」


「ふむ。そういう事であればミクワィア家の屋敷に来るといい。今の時期、王都の一定以上のクラスの宿はどこも予約でいっぱいだからね」


「それは助かります。よろしいのですか?」


「もちろんだとも。部屋は余っているし、遠慮はいらない。それに色々と話したいこともあるからね」


 屋台の後に始める商売の話が伝わってるのかな? 醤油開発に関する話もしたいし、神殿でも大豆栽培と納品の件もある。ちょうど良いからお世話になる?


 ――なんて皆とアイコンタクトを取ってたら、待ったがかかった。


「「えっ、一緒に来てくれないの?」」


 双子ちゃんがそう言った後でドゥカーさんの反応を窺う。


「そうだな。そなたたちには世話になったことだし、ぜひ一緒に来て欲しい」


 双子ちゃんが両手をパチンと合わせて喜んでいる。流石は双子、息がピッタリだ。こうしていると、本当に一卵性の双子にしか見えないね。


 もっともドゥカーさんには、素直に喜んでいる双子ちゃんとは違う思惑がありそうだけど。


「そなたたちの力を借りたい状況になるかもしれん。本当に済まないとは思うのだが、いましばらく付き合って貰えないだろうか?」


 ま、ここまで肩入れしちゃったんだから、今更放り出すのは忍びない。結末を見届けたいっていう気持ちもあるしね。


 とはいえ、私はヒラのクランメンバーなので。リーダーの決断は? オッケー? じゃあ決まりだね。








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