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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第九章 王家にまつわるエトセトラ>
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#09-16 厄介事を持ち込んでみた




 認識阻害を全開にして、夜の街を切り裂くように(J-POP的表現)疾走する。


 探知魔法で常に警戒しているけど、幸い偵察部隊は囮作戦にまんまと引っ掛かってる。ターゲットが唐突に姿を消して、混乱の只中って感じだ。


 姿を消した場所に何か仕掛けがあったのか、或いは何らかの強力な魔道具でも使って欺いたのか。――そんなことを考えてるんじゃないかな。どっちでもないんだけどね。フハハハ、そこで見当違いのことをしているがよいわ!(魔王風に)


 何にしてもミクワィア商会の王都本部までは安全に到着! もう日もすっかり落ちたっていうのに、結構人が行き交ってる。おー、繁盛しているねー。


 さてと。受付のおねーさーん、ちょっと用事があるんですけど――って、いや、お使いじゃあないんです。本当に用事がって、え、お菓子をご馳走してくれる? それはどうも。――じゃなくて。


 もー、おねーさんちょっと屈んでください。ムギュ――って、抱き締めて欲しいんでもなくてですね。ま、ちょうどいいや。はい、コレ、よく見て下さい。本当の本当に、会頭さんに大事な用事があるんです。


 はー、もうやっと信じてくれた。子供の姿なのを忘れてたね。


 ともかく、取り次いでください。ああ、待つのは全然構いません。ただちょっとここだと目立ち過ぎるので、どこか空き部屋か、なんなら廊下とかでも全然――え? カウンターの奥でいい? そこってスタッフオンリーなんじゃ? 構わない? そ、そう?


 うーん、まあいいのか。じゃあちょっとおじゃましまーす。


 事務所の休憩スペースっぽいところのソファーに座って、足をプラプラさせて待つ。あ、ホットミルクと甘い焼き菓子を頂きました。――本当はコーヒーの方が良かった、なんて言いませんよ。好意は有難く受け取ります。


 営業時間が終わってしばらく経ったところで、会頭ドルガポーさんと執事バスティアーノさんが現れた。ああ、私の姿を見て目をまん丸に見開いてる。


 立ち上がってなるべく優雅に見えるように一礼。子供の姿でそう見えるかは不明だけどね。


「ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです」


「あ、ああ、久しぶりだね、レイナ殿。そうそうお土産を有難う。素材の査定は終わっているから、明日にでも代金を渡せるように手配しておこう。……いやしかし、少し見ない内に、随分と若返って(・・・・)しまったようだな」


 あはは。この姿を見てその反応は、なかなかセンスがありますねー。


 さておき、この姿に関する説明は後で。実は相談したいことがありまして、どこか内密で話ができる場所はありませんか? あ、できればある程度の広さ――そうですね、一〇人くらいは余裕で座れる広さがあるといいです。




 会議室へ移動する間に、近況をざっくりと説明した。やっぱり会頭さんは、秀たちの屋台が私の仲間ではないのかと当たりを付けていたらしい。とはいっても、特に優遇したりはしていないから、話題になったのは皆の実力だ。


 まあブームを盛り上げる為に、フライヤーの開発に援助したり、食用油を大量に確保したり、新規メニューを打ち出す屋台を推奨したりとアレコレやって、ミクワィア商会もかな~り儲けたらしいけど。抜け目が無いね。


 あと会頭さんは、私たちのクラスメイトがこの国の各地に居るらしいことに気付いていた。唐突に表れた高い能力を持つ、しかし妙に常識に疎いちぐはぐな集団。その中で、王都へ移動して来て話題になってたのが秀たちだったから、目星がついたというわけだ。


 同郷のものなのか探りは入れられたけど、今は曖昧に誤魔化しておいた。これから厄介事を片付けないといけないんだから、余計な情報は後回しってことで。


 会議室に到着。探知魔法でヘンなモノが仕掛けられてないかチェック、うん問題無し。で、遮音結界を張ってと。


「まずは仲間の紹介をしますね」


 一旦トランクの舞依たちがいるスロット内に入って、皆に状況を説明。ウィンドウを開いて――えーっと、あっちが会頭さんで、こっちが補佐官っていうか執事さんね。じゃあ外に出るよー。


 会頭さんと執事さんはトランクの非常識さには慣れたのか、皆と一緒に外に出ても特に表情は変わらなかった。残念なんて思ってないよ? 本当に。


 先ずはお互いに自己紹介。あ、この子は旅の途中で拾ったカーバンクルです。割と頭が良くて、愉快な性格なんですよ?


 屋台関連でミクワィア商会と関わりがあったとは言っても、会頭さんと会ったことは無かったってことだからね。変な状況だけど、顔合わせができてよかったね。


 ああ、ちょっと秀――と会頭さんも。屋台の次の構想に関する話とか、そういうのは後で時間に余裕ができた時にでも、膝を詰めてやって頂戴。今はそれどころじゃあないでしょ?


「レイナ殿がそんな風に言うとは……。一体なにを持ち込まれたのかな?」


「まあ、厄介事には違いないんですけど、持ち込んだのは本質的には私ではないんですよ。ではちょっとお待ちくださいね」


 今度は双子ちゃんたちのいるスロットに入る。


 無事ミクワィア商会に到着したこと、今は会議室のようなところで会頭さんと執事さんが居ること、それと舞依たちは先に出て自己紹介は済ませたことなどを説明する。


「で、どうしますか? 会頭さんたちに合う前に何か相談することがあるなら、ちょっと時間を取りますけど?」


「いや、相談は既に済ませている。待たせるわけにはいかないから、すぐにでも頼む」


 ドゥカーさんの言葉に双子ちゃんたちも頷く。そういう事なら、早速外に出るよ。心の準備はオッケー? よし。では――


「この方たちをお連れしたんですよ」


「なっ!?」


「「お久しぶりです、ミクワィアの小父様」」








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