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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第九章 王家にまつわるエトセトラ>
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#09-12 急転




「否定が無いという事は、怜那さんが言ったことは事実と考えていいんですね?」


「…………うむ。もはや隠しても仕方があるまい」


「これは単純な疑問なんですが、そういう事であれば王城へ帰還するのが最善なのではありませんか?」


「その通りだ。だが、それもそう簡単ではないのだ」


 王城と一口に言っても広い。というかバカみたいに広い。高さこそ精霊樹には及ばないが、面積はめちゃくちゃ広い。


 貴族の領地の場合、精霊樹を挟んで領主の城と神殿があるという形が一般的だけど、王都の場合は広い王城の敷地があって、その南寄りに精霊樹の広場があり、神殿はその東側、王城の敷地内にめり込むような感じで存在している。


 で、そのひっろーい敷地内に、日本的に言うと国会議事堂やら各省庁の庁舎やら裁判所やらが――正確にはその機能が入ってる建物が――あって、さらに奥の方に王族のパブリックなスペースとプライベートなスペースがあり、さらには迎賓館やら離宮やらもある。ちなみにいわゆるシンボル的な王城って言えば、王族のパブリックスペースに当たる城の事を指す。


 広すぎでしょっ! って思うよね。うん、私も思う。っていうか長い歴史のある王政国家の中枢は、現代日本で育った私たちの価値観では想像しきれないものがあるんでしょう、きっと。


 さておき。殿下一行と言えど、王城に――というより、奥の方にある王族のプライベートスペースまで戻るには色々と手順を踏む必要があり、一足飛びに「ただいまー」とはいかないらしい。で、どうも敵は王城内にも力が及ぶらしく、ノコノコ帰れば飛んで火に入るなんとかになっちゃうと。


 王城内で暗殺騒ぎなどが起これば、それは王家にとって汚点・醜聞となり、それは双子ちゃん自身もドゥカーさんたち護衛の面々も望むところではない。同じく危険ならば王都を脱出し、第三側妃の生家へ向かう方を選択する。


「……しかし、そのままずっと身を潜めているわけにはいかないのでしょう?」


「それもその通りだ。しかし緊急避難的であろうと当面の安全を確保しなくては、次の手も打ちようがない」


「痛し痒しですね……」


「まったくだな。……ふっ、一足飛びに王城の奥まで移動できる奇跡のような一手があればよいのだがな」


「「「「…………(ジーッ)」」」」


 ちょいと皆さんや。どうしてこっちに視線を向けるのでしょうか?


「キュウ?(コテン)」


 あはっ! いやっ、注目を浴びてるのはキミじゃないから! まったく、ボケのタイミングに天性のものを感じるよ。いや、割と本気で。


 まあやろうと思えば手はあるよ。一番手っ取り早いのは、皆をトランクにしまった上で、王城に侵入すればいい。セキュリティー? まあ、大丈夫じゃないかな。人的なものにせよ魔法的なものにせよ、突破する方法は何通りか考えつくしね。


「それは、本当なのか!? であればそれが最良だが……、いや、セキュリティー的には問題があるのだが……」


「実行そのものは可能です。ただ、それをやった挙句、犯罪者として捕まるのでは話になりません。ですからこちらの身の安全を、正式に記録に残る形で確約して貰わないことには――」


 ん? これは……、良くない反応だね。このタイミングとは、厄介な。っていうか、これは存外、双子ちゃんは持ってる(・・・・)ってことなのかな?


「レイナ殿、それを用意できるのならば協力してもらえるのだろうか?」


「……ドゥカーさん、皆も。どうやらそんな時間は無くなったみたい」


「うん?」


 結構な魔力持ちが二人組で複数、この家のある住宅地で何やら嗅ぎまわってるみたい。うん、たぶん敵の偵察部隊だね。


 私がそう告げると一同がザワッとして、ドゥカーさんが腰を軽く浮かせた。どうどう、落ち着いて下さいな。ビ~、ク~ル。


 推測だけどドゥカーさんが尾行されたとかじゃあないね。もしそうだったら、ここを中心に包囲を狭めるように近づいてくるだろうし。


 もっと大雑把に双子ちゃんたちの潜伏先がこの辺りって、見当を付けたんじゃないかな。で、ちょっと乱暴だけどここ最近人が出入り吸うようになった家とか空き家とかを、ローラー作戦で探ることにしたんだと思う。


 ――ああ、ローラー作戦って言うのは要するに人海戦術の事ね。人手を使って虱潰し。スマートじゃあないけど、確実に成果は出る。


 見つかった理由なんて、考えるだけ無駄だよ。認識阻害って言っても姿を完全に消すわけじゃあないし、人間が生きている以上痕跡はどこかに残る。人じゃなくてモノの方――例えば台車になっちゃってる馬車とかね――の方を追われたって可能性もあるし。


「怜那さん、ここが見つかる可能性は?」


 ちょっと秀、そういう難しいことは聞かないで欲しいんだけど?


「正直言えば分からない。今回に限って言えば五分五分かもしれないけど、それでこのエリアを諦めるのか、更に詳しく調査するか分からないし」


「切羽詰まった状況ではないけど、楽観視は出来ないか……」


「うん。考える時間くらいならまだあるよ」








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