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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-28 鳥、確保~!(意訳:卵、ゲットだぜ!)




 トテトテとドードルの方へ歩いて行ったカーバンクルは、小脇に抱えたボウルからピロールを一つ手に取りビシッと高く掲げて注目を集めると、説得――なのかな? たぶんそうだと思うけど、身振り手振りを交えてプレゼンを始めた。


 なんとな~く、あの檻に入って一緒に来ればピロールが食べ放題――みたいなことを言ってるような気がする。


 で、最後に実際ピロールを配って食べさせると……。


 ――お? おおっ!?


「あらら」「凄いね!」「上手くいっちゃったわね」「いや、これはお手柄だ」


 ハーメルンの笛吹き状態で、カーバンクルの後についてドードルが行進して行く。そして久利栖が一羽のドードルに追いかけられつつ、その行進の列を追い越していった(笑)。


「久利栖はいつまで追いかけられてるのかしらねぇ……?」


「いや、案外楽しんでるんじゃないのかな? あのドードルに気に入られたのかもね。……ん? どうしたの、鈴音?」


「んー……、アレはアレで遊んでるのかって思ったらちょっと。その、私ってあんまり動物に好かれないでしょ? 乗馬も未だにちょっと苦手だし」


「ああ、鈴音は慣れるまでちょっと身構えるからだと思うよ。家に居た猫たちには懐かれてたんだから、好かれないってことはないさ。せっかくだからドードルで慣れてみれば」


「ドードルのお世話ね……、やってみてもいいかな。秀も付き合ってくれる?」


「ああ、お安い御用だよ」


「ありがと。……そういえば秀は――」


 ふむふむ、らぶらぶですね。ニヨニヨしてたら舞依に頬を突かれてしまった。大丈夫、邪魔したりはしないから。


 さり気なく距離を取ってと。ちょっと檻の方を見に行ってみようか。ああ、双子ちゃんたちも一緒に行こうか。


 ドードルたちはどうしてるのかな――っと、ああ、もうすっかり落ち着いてるね。檻の中に入ってみると、四方を棒で囲まれてるのが結構気になるんだけど、この子たちは全然気にならないみたい。案外大物なのかも?


「ぜいぜい……、なかなか根性あるやんか。まさかここまで俺について来れるとは、思わんかったで。ホレご褒美や。二つともええで?」


 なんか久利栖が追いかけられて他ドードル相手に小芝居をやってる。


 ヒョイパク ヒョイパク ビシビシッ


「あいたっ! おまっ、なにすんねん!」


「コケッ!」


 訳すと「ふんっ!」って感じかな? まあ本気で突っつかれたわけじゃあ無さそうだし、一応仲良くなったって言っていいのかな。ケンカ友達的な?


 ええと全部で何羽いるのかな? 一羽、二羽――ちょうど一〇羽か。まあ私たちで管理するにはこのくらいで丁度いいかな。卵そのものを卸す予定は無いしね。


 私たちで消費しきれない分は時間を止めておけばいいし、ストックが増えたら卵料理をキッチンカーで出しても良いからね。その辺は秀の裁量に任せよう。とにかく私的には舞依の卵料理――特にオムライスね!――が食べられれば満足だ。


 テシテシ


 うん? ああ、空になったボウルを返しに来たのか。ありがと。そうそう、助かったよ。キミは他の魔物と話せるの? そうじゃないけど、大まかに言いたいことは伝わる? なるほど。魔力の意思を読み取ってるのかな? 興味深いね。


「ねえ怜那、ピロールで釣って連れて来たんだから、鉢植えを置いたほうがいいんじゃないかな?」


「あ、そう言えばそうだよね。契約不履行で卵を譲ってもらえなくなったら本末転倒だ」


「チチッ!?」


 どうしたの、愕然として。ああ、自分の分が減るって? あはは。大丈夫だよ、二つあるピロールの鉢植えの内、一つだけしかここには置かないから。それにキミが収穫のお駄賃で食べてるのはほんの一部だしね。一つでも量は充分ある。


 っていうか、ピロールで誘い出したのはキミでしょう? こうなるのが分からなかったの? あらら、ガックリと両手をついて耳と尻尾もだらりと。リアクションのレパートリーは着実に増えてるね。それがカーバンクルクオリティ。


 さて、それじゃあ適当な場所に鉢植えを置いてっと。これでドードル確保作戦は完遂かな。


「そろそろ檻を閉じるから、みんな外に出てー」


 全員が外に出たのを確認してから、抜いていた柵をもう一度設置する。


 双子ちゃんがちょっと名残惜しそうにドードルたちを見てる。遊びたいならどこか人目の付かないところに檻を出してあげてもいいかな。もっともゴタゴタが収まるまでは、そんな目立つ真似は無理だけどね。機会があればいいんだけど。


 さて、檻ごとトランクに収納して――これでオッケー。


「おわっ! この穴……、学校のプールくらいあるんちゃう? 意外とおっきかったんやなぁ~」


「ドードルがストレスを感じないようにって思ったんだけど、ちょっと大きくしすぎたかな?」


「まあ、大は小を兼ねるっちゅうしな。あー……、せやけど広いと卵の回収が面倒やないかな?」


「探知魔法を使えばそうでもないけど……。でもそうか。なら、卵を産んでもらう場所かなんか、後で用意しておくよ」


「それがええやろな」


「……この穴、埋めなくて大丈夫? そのままにしておいてドードルが落ちたら、出て来られないんじゃないかな?」


「あっ、それは考えてなかった。舞依は優しいね」


 うーん、ギリ飛んで出て来れそうな気もするけど、どうかな?


 女神様から聞いた話では、ドードルは最大で二メートル飛べるか飛べないかくらいで、どうしても食べる物が無い時にだけ飛ぶらしい。普通は落ちて来たものを食べる。


 やっぱり念の為埋めておくか。泉と繋げちゃうって手もあるけど。


 ――と思ったら、エイシャさんがこのまま放置しても明日には元に戻っているはずだと教えてくれた。なるほど、それもダンジョンの仕様ですか。








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