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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-27 飼育小屋(檻?)を作ろう




 さてさて、そんな風にドタバタしてたにも拘らず、相も変わらずドードルは全然動かない。――あ、いや、何匹かこっちを見てるね。と思ったら、近くに咲いてる花をパクリと食べて……、あ、また元に戻った。恐ろしくマイペースな魔物だね。敵意があるよりはいいか。


 危険は無さそうだね。だったら確保は皆に任せてしまって、私は並行してやっておかなきゃいけないことに手を付けよう。


「やっておかなきゃいけないことって?」


「確保したドードルを入れておく檻……的なもの? を作らないといけないでしょ?」


「あら? トランクに入れておくんじゃないの?」


「それはそうだけど、時間を止めちゃったら卵が採れないから。時間を止めないでも外に逃げられないようにしておかないとね」


「あっ、そうよね。目的は卵なのよね」


 そうそう――って、当初の目的を忘れちゃったの? しっかりしてよ、サブリーダー。え? 私が脱線ばかりさせるから? 失礼な。ちょっとは脱線したかもだけど、原因は私だけじゃあないし。


「ねえ。怜那。檻に閉じ込めたとしても、ドードルが外に出たいと思ったら出て来ちゃうんじゃないの? そう言ってなかった?」


「ああ、それは大丈夫」


 その辺は仕様がちょっと複雑というかね。


 人間とか動物とかを色んなものと纏めて一つのスロットに入れた場合、入れた物がバラバラの状態なら、出ようと思ったらすぐ外に出られる。でも檻なんかに閉じ込められて出られない状態だと、その檻を飛び越えて外に出ることはできない。


 ちなみに私が取り出す場合でも、檻ごと取り出すしかできない。でも逆に入れる時は着ている服だけを収納するようなことも普通にできる。ミステリー。


 たぶん仕様的に、入れ子(マトリョーシカ)状のものは、一番外側を収納したっていう扱いになるんじゃないかな。


 そんなわけで、檻に入れて収納すれば勝手に出てくることはない。っていうか、ドードルはそんなに高く飛べないから、ある程度高い塀で囲めば天井も無くて良いくらいかも?


「まあ、そう複雑に考えなくても、餌があって落ち着ける環境なら、そもそも動こうとしないような気もするけどね」


「えっと……、そうかも?」「確かにそんな気はするわね……」


 と、いう訳でドードルの確保は任せた!


 では私は檻を作ります。と言っても普通の檻じゃあないけどね。


 まずはドードルの居ない泉の対岸側に移動しまして、目ぼしいポイントを探します。そこそこの広さがある草原と茂みに木が何本か――この辺でいいかな?


 地面に手を付いて魔力を浸透させて直方体状の領域を指定する。で、その直方体の上面以外の五面に、土魔法で壁を作る。これはこの場にある土を利用して固めるから、魔力の消費も比較的少なくて済んだ。


 壁の高さは地面から五〇センチくらいの高さにした。あとはこの壁から柵の棒を伸ばしてと。ドードルが外に出られなければいいんだから、間隔は割と粗目でいいよね。高さは領域内に取り込んだ木と同じくらいでいいだろう。


 よし、こんなもんでしょう。檻、完成~!


 まあ檻っていうか飼育用の巨大テラリウム――みたいな? 中にドードルを入れておけば、その能力で環境は維持されるだろう、たぶん。たまに水をあげるくらいで大丈夫じゃないかな。なんなら家庭果樹園で採れた実の種を植えてみてもいいかもね。


 あとは中にドードルをって、出入り口を作るの忘れてた。ドアを作るのは――ちょっと手間だから、柵を何本か消して、ドードルを入れた後でまた設置すればいいか。卵を回収する時とかは、柵を跳び越えればいいだけだし。


 で、皆の方はどうなってるかな~って、なんだかみんなで楽しそうにドードルと遊んでる。省エネなだけで、案外人懐っこいのかな?


 いや、違うか。アレは餌に釣られて動いてるだけだね。双子ちゃんがおっかなびっくり、木の実を乗せた手を伸ばしてるのが微笑ましい。あと久利栖が両手に果物を持って、交互に差し出してキョロキョロさせておちょくってる。暢気そうに見えても魔物なんだから、あんまり調子に乗ると――


「コケーッ!(ビシッ)」「アウチッ!」


 ほら、嘴で突っつかれた(笑)。っていうか、鳴き声は「コケーッ」なのか。そこは鶏っぽいんだね。


「もー、皆でなに遊んでるの?」


「あ、怜那、お疲れ様。凄いね、あっと言う間に檻ができちゃって」


「お疲れー。遊んでるってわけじゃないのよ? 魔物の手懐け方なんて知らないから、取り敢えず餌やりで警戒心を解こうとしたのよ」


「アレも?」


 おちょくった報復で、ドードルに追いかけ回されてる久利栖を指差す。


「…………アレはただのアホ。っときましょ」


 オッケー。まあ、万が一にも不覚をとることはないだろうしね。アレも遊んでるって言えばそうなのかも。それしても意外な事に、結構走れるんだね。


 久利栖は好きに遊ばせておくとして、どうしようかな? 極端なことを言えば、魔法で縛って檻の中に放り込めば、そのまま大人しくしてそうな気もするんだけど――ん?


 テシテシ ピシッ ドン


 手を挙げて――で、胸を叩く? 自分に任せろって。キミに説得ができるの? たぶん? え? 果物が欲しいの? ああ、家庭果樹園の果物で釣るのね。ピロールでいい? それじゃあ手頃なボウルに山盛りにしてと。はい、持ってっていいよ。じゃあ、任せた!


「上手くいくのかしら?」


「さあ……。色んな意味で優秀な子だけど、基本ボケ体質だからな~。失敗して突き回されるって方もありそう」


「もう、怜那ったら。折角立候補してくれたんだから、もっと期待してあげよう?」


 舞依は優しいね。じゃあ温かく見守りますか。








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