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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-19 セイバーではなくケイボーです




 皆からちょっと離れて、剣舞っぽい派手な型を披露する。意味もなくクルクル回転させたり、背中側から反対の手に持ち替えたりとかね。タイミングよく日が暮れて来たし、皆からは光る刀身が軌跡を描いて見えることだろう。


 まあこんなものかな。スイッチを切ってと。


 パチパチと拍手をしてくれる舞依の隣へ戻る。カッコ良かった? ふふっ、ありがと。


「あの、レイナ。ちょっと貸してもらってもいい?」


 おや? 久利栖が真っ先に言うかと思ったけど、アンリちゃんだったか。じゃあはい、これ。


 アンリちゃんが目をキラキラさせながら、矯めつ眇めつしている。活発なのはロッティちゃんの方だけど、武器とかメカニカルなものが好きなのはアンリちゃんの方なのかな。――興味深いね。


「あの、レイナ様。危なくは無いのですか?」


「魔力を込めながらスイッチに触れないと刀身は形成されないから、大丈夫ですよ」


「ああ、そうなのですね……」


 なんて安心してたら――


 ピシューン


「わっ!」


「お嬢様っ!」


 アンリちゃんが刀身を出してしまった。ありゃりゃ、アンリちゃんはコッソリ魔力の扱いを練習してたのかな? ああ、もしかしたら私のあげたケープで練習しちゃったのかも。うっかりしてたね。


 エイシャさんがオロオロして、双子ちゃんも慌ててる。


「怜那、迂闊よ」「子供に武器はちょっとね」「そらあかんわな」


 ちょっとー。よってたかって非難すること無いじゃない。ぶーぶー。


「でも、らしくないよ。子供相手の時は、いつもはもっと注意深いのに」


「だから、ちゃんと考えてるって。皆、人の話聞いてた? 玩具おもちゃだって言ったじゃない。ちょっと見てて」


 もう一本取り出して刀身を形成すると、手のひらにパシパシと打ち付けて見せる。もちろん切れることも火傷することもないし、ビリビリすることもない。


「えっ!?」「はぁ?」「はい?」「どうゆうことや?」


 種明かしをすると、これって棒状で中空のシールド魔法を形成して、その中に魔力を満たしてるだけなんだよ。ちなみに魔力は光らせる為だけ(・・)に中に入れています。それ以外に意味はありません(笑)。


 だから当たれば衝撃はあるけど、触れただけなら攻撃力は皆無。盾魔法は衝撃ダメージを逃がす為なのかもともとすこ~し弾力があるから、当たった時の感触は硬いゴムみたいな感じかな。


「つまり、見た目こそアレっぽいけど、実際にはただの木刀? ああ、伸縮式の特殊警棒ってあるじゃない? あれと同じようなものかな」


「ラ……、ライトケイボー」


 あはは。いいね、ソレ。これの名称はライトケイボー(命名:久利栖)に決定!


 ちなみに魔力の属性を変えれば色が変わる。だから何も考えずに魔力を込めると、その人の属性の偏り――得意な属性とも言う――が色で分かる。アンリちゃんは緑色だから風属性かな? なお、赤は火属性です。決してダークサイドではありません、念の為。


 それからもう一つ仕掛けがあって――スイッチを切り替えてと。


「久利栖、久利栖。ちょっと……」


「うん? なんや?」


「隙ありっ! メェーーン!」


 思いっきり久利栖の頭に振り下ろすと、ヒットした瞬間刀身がパキーンと砕け散った。


「あいたーっ!……くない?」


「今のがセイフティーモード。一定以上の衝撃でヒットすると刀身が砕け散るようになってるの。ただし、ライトケイボーの刀身同士だと砕けないから、打ち合うことはできるよ」


「なるほどー、おもろいな。ちょっと貸してもろてええ?」


「はいはい、好きなだけ」


「……っちゅうか、コレの名前、本当にライトケイボーで決定なん? ダサない?」


「えー、自分で言ったんでしょ。まあ、じゃあ略称はセイバーってことでいいよ」


「全然略してない略称やな……。ま、ケイボーよりマシやけど」


 久利栖に手渡すと、秀と一緒になって早速刀身を出してみたり属性を変えてみたりして遊び始めた。まあ、好きだよね、やっぱり。やっぱりこの武器は浪漫だからね!


「安全なのは分かったけど……、じゃあ一体何のために作ったのよ、アレ?」


「どういう意味ですか、鈴音さん?」


「だってそうじゃない、実戦には刀とトランクを使ってたでしょ? なんだか手が込んでるし、アレを作った意味は何なのかって思ったのよ。まさか本当にただ遊ぶためだけの玩具なの?」


 鈴音が疑問を口にすると、カーバンクルがぴょ~んと跳んで舞依の膝の上に収まり、ピッと手を挙げた。


 ハイハイ、そうね。そもそもはキミの為に作ったようなものだからね。それは良いけど、その膝は――膝以外の全部もだけど――私のだから、キミは鈴音そっちを使いなさい。


 ひょいっとカーバンクルを持ち上げて鈴音の膝に移すと、二人ともクスクスと笑っていた。も~、いいでしょ、別に。独占欲を見せたがる時期なの!


「コホン。アレはその子と模擬戦をするために作ったの」


 そこらで拾った枝とか木刀とか模擬剣とか色々試したんだけど、カーバンクルのサイズ的に中々しっくりこなかったんだよね。で、魔力剣的なもの作ればちょうどいいんじゃないかと思って作ってみたと。


 まあデザインはただの趣味だけどね。最初は棒状に成型したむき出しの魔力発動体だったんだ。で、ちょっとずつ装飾を足していったら、あんな感じになったってわけ。








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