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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-16 ダンジョンでイチャイチャするのは間違ってるだろうか?




 秀と久利栖の無双アクションの後ろから、テクテクついて行く。魔物の残骸が無ければのんびりとしたお散歩気分なんだけどね~。


「二人ともー、ちょっと左より一〇時の方向に修正ー!」


「分かったー!」「了解やー!」


 魔法探知でボスと思しき個体の居場所は分かってるから、移動の方向は私が指示している。


 ちなみに舞依と鈴音は私の後ろにこそこそ隠れるように付いて来ている。双子ちゃんとエイシャさんはさらにその後ろね。


 何で二人がそうしてるかって言うと、薙ぎ倒した魔物の残骸の中でも、特にグロいのとか巨大イモムシのまだちょっとウネウネしてやつとかを、私が魔法で遠くに弾き飛ばしてるから。なるべく見ないで済むように、私に隠れてちょっと視線を横に逸らしてるみたい。


 っていうか、二人とも魔物の死体なんて見慣れてるでしょ? 解体だってしてるって言ってなかったっけ?


 ――ああ、食材として魔物を狩る時は綺麗に仕留めるし、解体して処理するのとグロい残骸は別と。なるほど。ニュアンスは伝わったし、気持ちは分かる。あの二人、テンション上がってかな~りオーバーキルしてるからね。


 それにしても背中にぴとってくっ付いてくれるのもいいけど、どうせなら左右から両手に花状態だと、なおいいのに。あ、もちろん舞依が隣に居てくれればそれで十分だよ? でも両側が埋まってると、なんていうかこう……バランスが良い。つまり鈴音はいわゆる一つの賑やかし?


 それは酷い扱いなんじゃないって? えー、別に酷くは無いでしょ。だって鈴音は売約済みなんだし。(ニヨニヨ★)


「ば、ばば、売約済みって……。あれ? っていうか、その話怜那は何で知ってるの? 舞依から聞いた?」


「いいえ、私は話していません。一体その話をどこで知ったの?」


「秀のお爺ちゃん」


「えっ!?」「はぁ~っ!?」


「だから、あのご当主さん(タヌキじじい)から聞いたの」


 あはは、二人ともかなり驚いてるね。どういうコトなのって、まあまあ落ち着いて。おおっと、そんなにガックンガックン揺らさないでってば。


 まああのご当主さんが、私に直接そんな話をしてたってのには驚くよね。一応、口止めされてたし、今まではちょっと二人に話しにくかったから言えなかったんだよ。でもまあ異世界こっちに来ちゃったから、もう期限切れかなって。


「どういう事なのよ?」


「なーに簡単な話だよ。あのタヌキは真行寺家に、七五三掛の()を入れたかったみたいなんだよね」


「「え……」」


 あーもー、だから深刻に受け止めないでってば。そもそも私と秀の心情なんて一ナノすら考えてないし、もはや別の世界の(・・・・・)話なんだから。


 ほらほら~、表情が暗いぞ。そんな二人はこうだ!


 ギュ~


「きゃっ! もう、怜那ったら」


「あははっ! そうね、もうあっちの話よね。あっ、ちょっと怜那、どさくさに紛れてどこ触ってるのよ!」


「れーいーなー?(ジトーッ)」


「ええっ!? デマカセだよ、そんなことして無いって! あっ、ほら秀と久利栖から離されちゃうよー」


「……むー、話を逸らした」


「逸らしてないって。もうちょっと恋人のことを信じて欲しいな?」


 ほっぺにチュッと軽くキスをしてご機嫌を取る。まったく、売約済みのお尻を触るなんてこと、私がするはずないのにね。


 さて、それじゃあ本当に置いて行かれないようにしないとね。行くよー。


「ねえ怜那、私たちの婚約話はもう確定してたのよ。あのご当主様が冗談や酔興だけで、怜那にそんな話をするとは思えないんだけど……?」


 あー、そこに気付いちゃったか。軽く話して流そうと思ったんだけどね。やるね、鈴音。


 つまり結婚するのはあくまでも鈴音ってこと。で、私との間に子供が生まれたら認知するか、養子縁組で法的には秀と鈴音の子ってことにするか、まあそんな感じ?


 要するに、真行寺家公認の妾――みたいな立場ってとこかな。ああ、もう二人ともそんな嫌そうな顔しないでよ。え? 私は気にしないのかって? まあそれほどでもないかな?


 今でこそ一夫一妻制が当然みたくなってるけど、ちょっと前まで王族だの為政者だのは側室を持つのは当たり前だったでしょ。だから「ああ、今でもそういう話はあるんだなー」って思っただけ。


「それで……、怜那はご当主様になんて答えたのよ?」


 フフフ、よくぞ聞いてくれました。


『ふーん、なるほどね。……舞依と一緒にだったら、考えてもいいよ?(ニヤリ★)』


『ほう……。御子紫の娘と。うむ、相変わらず、お前さんは面白いことを考えるな(ゴゴゴゴ……)』


『でしょう?(ゴゴゴゴ……)』


 ――と、まあこんな感じに答えたよ。


「怜那、あなた……、本当に怖いもの知らずね」


 そう? まあ真行寺と御子紫の関係を考えれば、舞依を妾の一人にするなんて絶対に有り得ないんだけどね。


 でも案外悪くないんじゃないかなって思ったんだよ。私たち三人で秀に嫁ぐっていう選択肢もアリかなって。もちろん正妻は鈴音で。名実共にね。まあ子供を一人は生まないとだけど、舞依と一緒に子育ても悪くないかなって。


「つまりナニ? 私と秀をカモフラージュにして、あなたたち二人は暢気にイチャイチャするってこと?」


「正解! もちろんそれだけじゃなくてね、私たち三人なら、どんな状況でもきっと仲良くやっていけると思ったから」


 くるっと振り返って二人に笑いかける。


 世間一般に受け入れられるとは思わないし、家族としてはかなり歪ではあるけど、私たちならその中で一番良いやり方を探していけると思ったんだ。ベストの選択肢ではないにしても、ね。


「……っ! もう、怜那って本当にそういうとこズルい」


「まあ……、それが怜那ですから」


 なになに? どういうこと? 二人とも笑いながら溜息を吐かないでよ。


 それで……、両側からギュッとするの? ま、よく分からないけど、これで本当の両手に花状態だね!








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