#08-15 ダンジョンと暴走の密接な関係
さて、ここから先は女神様からこっそり教えてもらった深いお話。
そもそもこの世界にダンジョンは何故生まれるのか? これ実は単純な自然現象ってわけじゃあないらしい。
より正確に言うと、魔力と瘴気の集中によって空間が異界化するところまでは自然現象で、そこから先のゲームっぽいというかシステマチックな部分は神様が構築したものらしい。
そりゃそうだよね。ボスを斃すと次のエリアへ行けるってナニ? って話だし。しかも先に進むルートだけじゃなくて、帰還用のショートカットルートも同時に出現するらしい。
それからダンジョン産のアイテムもね。
基本、斃した魔物は死体が残るんだけど、低確率で武具や魔道具に変化する事があるとのこと。なおボスはアイテムに変化することがない代わりに、討伐報酬としてアイテムがいくつか出現する。同じエリアのボスからは必ず同じアイテムが出現する。で、先の方のエリアだとより稀少なものが出やすいと。うんゲームっぽい。
ちなみにより強い魔物の方が高確率だとか、長生きしている魔物の方がより稀少なアイテムになるだとか噂は沢山あるけど、真偽のほどは定かではない。つまり差があるとしても誤差の範囲程度。あ、この辺はエイシャさんから聞いた話ね。
さてさて、ここまで聞いたら誰でも思うんじゃないかな? 神様が構築したシステム部分って、人間を誘き寄せる為に作られたんじゃ――ってね。
結論から言うと、それは事実だった。
ただ誘き寄せるってのは人聞きが悪いかな。それじゃあまるで、ノコノコやって来た人間――っていうかトレジャーハンター的な人達が、やられるのを望んでるみたいだもんね。神様的には、ローリスクハイリターンでダンジョンに挑戦できるようにしてくれたってことらしい。
ダンジョン内に満ちている魔力と瘴気というエネルギーを使って、神様が魔物やアイテム類を生み出し、人間が中に入ってそれらを斃してダンジョンの外へと持ち帰る。それが重要な意味を持っている。
何故ならダンジョンにも寿命があるから。
寿命が尽きたダンジョンが弾けると、内包していた魔力と瘴気、そして大量の魔物を外に吐き出す。もう分かるよね。これが暴走の原因――その一端になっている。
つまりダンジョン内を適度に探索して、魔物もアイテムも定期的に持ち帰っていれば暴走も比較的軽いもので済むってことになるわけね。
ちなみに王家や領主が管理しているダンジョンもあって、そういうのは軍や騎士が定期的に遠征しているとのこと。そうやって長~い間維持されたダンジョンは、空間の不安定さが無くなって定在化し、ちゃんと管理している間は寿命が尽きることはほぼほぼ無いと考えていいとのこと。
以上、この世界のダンジョンの基礎知識&ちょっと深い話でした。
では座学が終わったところで実践といきましょう!
――と、最初は意気込んでたんだけどね。
「ねえ、レイナたちは戦わないの?」
「……と言うより、私たちの出る幕が無い」
最初のエリアだからランク的は初級の上――のはずだよね? 正直言って、ザコしかいないんですけど。
ああ、ボスに対してのザコ敵っていうカテゴリー的な意味じゃなくて、純粋な強さって意味でザコね。無人島に無尽蔵に居た、殺る気満々ウサギの方が一〇倍強い。――それは言い過ぎかな? でも魔力量的にはそれ以上の差がある。
ちなみに出現するのはネズミとかウサギなんかの小動物系と、イモムシとかバッタなんかの虫系とがいる。もちろんサイズはどれもでっかいけどね。体長が一メートル以上あるイモムシが上半身(?)を立てて襲ってくるのは、ちょっと近づきたくないね。
でもそれが嫌で前に出て無いわけじゃあないから。いやいや、本当だって。
単純に、秀と久利栖が無双してるってだけの話なのです。ダンジョンでテンションが上がってるのかな?
うん? そうじゃない? 死体を処理する手間が無いし、素材的にも食材的にも欲しい品質じゃあ無いから遠慮なくぶっ斃せると。なるほど。
そう言えば皆は、別にレベル上げがしたかったからとかバトルマニアだからとかじゃ無くて、食材と現金収入の為に“狩り”をしてたんだもんね。魔物を木端微塵にしたら意味が無い。
だからストレスなくやりたい放題できるダンジョンで、無双アクションを満喫していると。
「って言うかもしかして~、二人ともアレなのぉ~? そっち系のマンガとかにありがちな “俺TUEEE!”をやりたかったってことなのかなぁ~?(ニタァ~リ★)」
なんて。ちょっと大袈裟な口調と表情でからかってみたりして。まさかね。二人とも中二じゃああるまいし、そんな子供っぽい願望を持ってるはずがない。秀はもちろん、久利栖だってあれで意外と現実的なところがある――
ギクゥ~ッ!!
って、ええっ!? ちょっ、まさか本当なの? フォローした私の立場は?(笑)
「いやいや、怜那さん。これはしゃあないんよ。男なら誰しも一度くらい、圧倒的な強さで敵をバッタバッタと薙ぎ倒すっちゅうんを、夢見るもんなんよ。なあ秀?」
「そうだね。色んな制約があってなかなかできるもんじゃないけど、ここでならそれが出来る。若干中二っぽいっていうのは否定できないけど、これは浪漫だからね(キリッ)」
左様で。ま、やる気に水を差す気は無いし、気の済むまで無双すればいいんじゃない。ああ、鈴音と舞依は私が護るからご心配なくー。




