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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-11 私たちはダンジョンへ行きますけど?




 ドゥカーさんたちの偽りの素性(・・・・・)も明らかになった――妙な表現だけどね――ところで、今後の予定を改めて話し合う。まあ話し合うというか、こちらの予定を伝えてその上で皆さんはどうするのかってことね。


 私たちの予定はもちろん、言うまでも無く、最優先で、舞依のオムラ――それはもういいって? オーケー、では真面目に。卵を定期的に生んでくれる鳥を確保するために、王都近くのフィールド型ダンジョンへ向かうことね。


 聞けばドゥカーさんたちは、足となる騎獣さえあればここから移動することを考えてたとか。なんなら私が持ってる騎獣を二体譲っても構わない。ぶっちゃけ鹵獲したものだし、正直私たちにはあんまり必要ない。いわゆる無用の長物。


 移動ならスケーターも馬車もあるし、カーバンクルは率先して引っ張ってくれるから。強いて言えば、私と別行動する時にあれば便利かな――ってくらい。ま、時間を止めとけば、餌代も世話する手間もかからないから、別にそのまま持っててもいいんだけどね。


 と、そんなことを秀が理路整然と説明した。ちなみに私たちは口を挟まず、神妙に話し合いの行方を注視していたよ。――丸投げした、とも言う。


 ドゥカーさんは王都近くにダンジョンがあると聞いて、大分驚いていた。聞き返された秀は「確かな筋からの情報」と答えていた(笑)。女神様から聞いたんだから、これ以上の信頼性は無いよね。


 件のダンジョンは恐らく未発見のものだろう、とドゥカーさんは言った。どうしてそれが分かるのかっていうのは気になるけど、秀は訊き返さなかったし、私たちも口を挟まなかった。


「それで、そなたらがダンジョンへ行く目的は、やはり食材の確保なのか?」


「広い意味ではそうです。あと僕たちは今までダンジョンに行ったことが無いので、単純に興味があるっていうのもあります」


 後半は主に私と秀と久利栖の理由だけどね。


「ダンジョンのランクは分かっておるのか?」


「下級の上から中級の中くらいだと聞いています」


 ランクに割と幅があるのは、ダンジョンは一般的に奥へ行く程、強力な魔物が出現するようになるから。ちなみにランクの目安だけど、中級までなら軍の一般的な分隊(一〇人弱)で踏破できるくらい、らしい。


 問題はそれがどのくらいの強さなのか、イマイチよく分からないってとこ。旅の途中であったキャラバンの護衛を平均すると、だいたいワガリー商会のアンナさんたちくらいになるから、たぶんそのくらい?


 私たちは人数的には分隊の約半分だけど、個々の強さが段違いだし、いざとなればトランクもある。何より踏破が目的じゃあ無くて、鶏(の代わりになる鳥)の確保だから、まあ大して危険は無いと思う。もちろん油断はしないけどね。


「ではエイシャとお嬢様たちを同行させてもらえないだろうか?」


 秀がアイコンタクトを取ってくる。――けど、判断は秀に任せるよ。判断はどっちでもいいけど、どうしてそういう提案をしたのか、その理由に興味はある。


 ――ふむふむ。今のところ追手に見つかってはいないが、生きていれば足跡は残り、いずれ足が付く。一方でコダンさんたちと連絡は取りたいが、四人で動くのは危険。


 騎獣があればドゥカーさん一人なら割と自由に動ける。その間、双子ちゃんの守りが手薄になってしまうが、それならばいっそのこと未発見のダンジョンに籠ってしまった方が、追手に見つかるリスクは低くなるだろう――と。


 一理あるかもしれないけど、私たちは基本私たちの身の安全を優先するよ? 余裕があれば、双子ちゃんの事もエイシャさんの事も気にかけるけど、優先順位としては仲間よりも低くなる。その点については?


 問題無い? エイシャさんは中級ダンジョン程度の魔物なら、双子ちゃんをちゃんと守れると。それに同行すると言っても、なるべく安全が確保できている場所に留まるつもりだから。そういうことなら了解。


「ドゥカーさんはバンラント書房へ……は、行きませんよね」


「うむ、網が張られているだろうからな。まあ安全に連絡を取る手段はあるし、私一人ならどうとでもなるのでな」


 うーん、とは言ってもね。


 主は双子ちゃんなんだろうけど、バンラント書房のリーダーというか精神的主柱――いや、物理的にもそうかな――はドゥカーさんだ。彼を失っては取り返しがつかない。双子ちゃんも心配そうな顔をしてるし。


 しょうがない。ちょっとだけお節介を焼くかな。


「怜那?」


「ちょっと野暮用。夕ご飯になったら声をかけて」


「分かった。美味しいのを作るね」


「ありがとう。手伝えなくてゴメンね。期待してる」


 舞依のおでこにチュッとキスをして、柔らかな頬をサラッと擽るように撫でてから、私はダイニングを後にした。


 ――ん? なんかキャアキャア黄色い声が聞こえるけど……、ま、いいか。


 トランクを使った作業は他人からは何をやってるのか分からないだろうけど、やっぱりお互い気が散るからね。作業は女子部屋になっている二階の主寝室でやることにしよう。


 何をするのかって? ドゥカーさんたち四人分の、認識阻害アイテムを作ろうかなってね。








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