#08-10 臨時メンバーと顔合わせ
精霊樹の広場を出た私たちは、農村エリアまで戻って人目のないところにテントを拡げて一泊――というかもう一度仮眠。で、昼頃に起きて朝昼ご飯を食べたら、ちょっと予定より早いらしいけど拠点へ帰ることにした。
と、ここでちょっとした問題発生。帰りの足について。馬車モードはちょっと目立つから、訳ありな臨時メンバーがいる拠点に帰るのには向いてない。
「私と舞依とカーバンクル、秀と鈴音、久利栖は走り……でオッケーじゃない?」
「なんでやねーん!(ビシッ)」
「名案だとは思うけど、そうすると今度は久利栖が目立つわね……」
「ほうほう、名案だとは思うんだぁ~。へぇ~、ほぉ~」
私がニヨニヨ、舞依が隣でニコニコしてたら、鈴音に口を横から摘まれてしまった。って、舞依の方はほっぺを突っつくだけって差別じゃない? え? 笑い方がちょっといやらしかった――って、理不尽だー。
さておき。これまでと同じ組み合わせで、私がスケーター――も目立つのは同じか。
あ、忘れてた。騎獣は持ってるんだった。ほいっと。
「割と立派な騎獣に見えるけど、これはどこで調達したんだい?」
「ほら、私も王都で襲撃されたって話をしたでしょ? その時の戦利品……っていうか、鹵獲品? 騎士が使ってても変に見えないレベルだろうから、まあまあってところだと思うよ」
それっぽく見せてる装飾品は外してっと。じゃあ、私と舞依とカーバンクル、鈴音と秀がレンタルの騎獣に乗るから、久利栖はこれに乗るってことで。
「おー、カッケーやん。俺が乗ってええんか?」
「いいよー。……騎獣に罪は無いけど、似非騎士の騎獣に舞依を乗せたくないし」
「俺ならいいんかーい! と、言いたいとこやけど、まあええわ。確かに騎獣に罪は無いし、カッコええし」
と、いうわけで移動開始!
レンタル騎獣を返却して、皆の拠点へ。へー、一軒家なんだ。まあアパートだといろいろやるには不便だし、ご近所さんが面倒臭いと大変だからね。
ボロさ? それは別に気にならないよ。だって皆の事だから中は綺麗にしてるんでしょ? 秀の指導でDIYしたんだ。やっぱりヤツはスパダリだったか(笑)。
「ただ今帰りましたー」
「お帰りなさいませ。……あら? そちらの方は?」
メイドさんが居る……だと!? って、別に驚くことでもないか。舞依と秀の家には普通に居たからね。ああ、秀の方は本家の方ね。ちなみに純和風の屋敷だったから、どっちかというと女中さんかな。
先ずは全員でリビングダイニングへ移動してお互いの自己紹介と、ざっと私たちがここ王都に来た経緯を。うん、やっぱり秀は私と似たような話をでっち上げてたみたいだね。このままミクワィア家の人達と会っても、特に口裏合わせは必要なさそう。
「レイナは大峡谷地帯を抜けて来たの!? すっごーい! ねえ本当にドラゴンは居るの?」
「うん、居るよ。っていうか、塒にお邪魔してきた。これとか拾ったよ」
取り出したりますはドラゴンの牙。鱗と違って乳白色だけど、コレもやっぱりうっすらと透けている。ついさっき追加された機能の解説文によると、やっぱり魔法発動体としての機能もあるとのこと。
ちなみドラゴン素材はどれも、単純な魔法発動体以外の特性があるんだけど、今んところは割愛。何故って、話し始めると止まらなくなっちゃいそうだし、錬金釜でいろいろ作りたくなっちゃうからね。
「き、牙……!?」「本物のドラゴンの素材……!」
双子ちゃん、目がキラキラだね。ただ、微妙に反応が違う。ロッティちゃんがちょっと恐々(こわごわ)、アンリちゃんは憧れというか羨望というかそんな感じかな。
――あれ? この子たちの魔力って。
「ねえねえ、他にはどんな冒険をしてきたの?」
「ん? そうね、その話はご飯の時にでもいくらでもしてあげるから、今は置いておいて……」
牙はトランクにしまってと。チラッと秀に目配せをすると頷いたから、ドゥカーさんと目を合わせた。
「単刀直入に、ドゥカーさんたちは……、ブラック書房の関係者ですね?」
ドゥカーさんたちは息を飲み、驚――こうとして、奇妙な表情になった。頭の上に疑問符が浮かんで見える。
あれ? おっかしいなー。もっとこう「な、何故それを……!?」って感じのリアクションを期待した――ん? なに、テシテシと。柱の黒っぽいところを指差して、手をバッテン? あっ!
「……コホン。間違えました」
表情と雰囲気を整え直してっと。
「ドゥカーさんたちは……、バンラント書房の関係者ですね?」
「なっ! どうしてそれを……」
そうそう、そういうリアクションね! ありがとう、ドゥカーさん。いかつい見た目の割に、結構付き合いが良いですね~。
「リ……、リテイクしよったで……」
はいそこ、細かいことに突っ込まない。
かくかくしかじか、これこれこういうことがあったのですよ。
「――と、まあそういう経緯がありまして、コダンさん、シェットさん、ティーニさんの三名は無事で、既に王都に居ます。商会へ向かうと言ってはいましたが、本当にそうしたかまでは分からないです」
「なるほど、私からも助力に感謝する」
その言葉は受け取ります。ただお礼云々はコダンさんたちからもう頂いてますし、ぶっちゃけ馬車に乗っけただけですからね。目的地も一緒でしたし、王都の話も聞けて楽しかったので。
たぶんコダンさんたちの安否はずっと気にしてたんだろうね、双子ちゃんも含めて全員が安心してた。あとコダンさんたち三人が無事だと言った時に、残念そうな表情は見えなかったから、残ったのはあの三人だけだったんだろう。




