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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-06 前金は何にしよう?




 あっ、食で思い出した。秀と合流したら、こっちの世界の原材料で醤油を作って一攫千金とか考えてたんだった。だったら大豆の情報が良いのかな。大豆があったら豆腐も作れるしね。


 豆腐も特に好きってわけじゃないけど、無いとちょっと寂しい食材だ。この季節に美味しい鍋物には欲しいし、味噌汁の定番具材でもある。うん、やっぱりあると良いよね。――ああ、私は作り方とか知らないよ? たぶん秀が知っている、はず。


 うーん、でも大豆の情報ってなんか地味かな。自分たちで使う分の醤油と味噌はもう十分あるから。


 っていうか、私の個人的な希望で言えば、大豆よりもむしろ卵の方が欲しい。


 さっき食べた舞依のサンドイッチにも卵サンドが無くて、ほんのちょっぴり残念だった。彩的にも卵サンドの黄色がないと寂しいしね。もちろんこっちでは稀少食材だから仕方ないっていうのは、分かってるんだけどさ。


 卵は美味しいよね。別に大好物ってわけじゃあないけど、あると嬉しくて、無いと寂しい。


 シンプルに卵かけご飯もいいし、出汁巻き卵に親子丼に卵サンド、どれも美味しい。フレンチトーストにプリンにメレンゲクッキーなんかの甘いものもいいよね。あとはそう、マヨネーズも。マヨラーってわけじゃあないけど、あると便利だよね。


 何にしても卵は素晴らしい。主役の食材にもなるし、わき役として味をぐっと良くしてくれる食材でもある。この世界の食が物足りないのは、卵を気軽に使えないところにその原因の一端があると言っても過言ではない!(※諸説あります)


 舞依は卵料理も上手なんだよね。ほんのり甘みのある出汁巻き卵とか、ふんわりオムレツとか、ベーコンのカリッと具合と卵の半熟具合が絶妙なエッグベネディクトとかね。あとは――


「そうだ、舞依のオムライスが食べたい」


「「「「……はい?」」」」


「だから、舞依のオムライスだよ。ちょっとお肉がゴロッとしてるくらいのチキンライスに、ふわトロのオムレツを乗せて、真ん中で切って。そんでデミグラスじゃなくてケチャップを少なめにかけて、その上に粉チーズをたっぷりかける。完璧!」


 こうすると卵とチーズとケチャップのハーモニーが、凄く私好みになる。チーズインオムレツ&デミグラスのパターンもアリだ!


「怜那さぁ~ん。いくら付き合い始めのバカッポー期間やからって、オンオフは切り替えなあかんで」


「そうだねぇ。そういうのは後で、個人的に、舞依さんと二人きりで、存分に、やってくれればいいから」


「そうそう。二人きりなら“はい、あ~ん”でも“ほっぺにケチャップが付いてるよ。ペロッ”でも何でも、好きなだけ乳繰り合っていいから」


「り、鈴音さん!? もうっ、怜那? 突然、変なこと言わないで?」


「えぇっ!? 舞依まで? っていうか鈴音のそれって、実は自分の願望なんじゃないの? 妙に具体的だし」


「そっ、そそ、そんなわけないじゃない! そんな、わけは……」


 あはは。ボンッ! って音が出そうなくらいに一瞬で顔が真っ赤になったよ? なるほど鈴音は結構、ベタなシチュエーションに憧れがあると見た。


 って、話が盛大に逸れてるじゃん。え? 私が言うな? 失礼な。私は最初から大真面目だってば。


「だーかーらー、舞依のオムライスが……あ、間違えた。卵だよ、卵! 毎日卵を産んでくれる鳥がどこかに居ないかなって話をしてたんだよ」


「いや、してへんやろ!(ビシッ)」


「うん、まあ、ちょっと言い間違えたかも?(テヘペロ)」


「いやいや、ちょっとやないから! まったくすっかり恋愛ボケになってからに。もうええわ」


「…………(スン)」「ありがとうございましたー」


「ちょ、なんで黙っとるんよ!? 『もうええわ』と『ありがとうございましたー』はセットやで?」


「だって私、久利栖とコンビ組んだ覚えないしー」


『……プッ』


「「「「「えっ?」」」」」


 あれ? 今、女神様吹き出しましたよね? もうすまし顔してますけど、ちょっとウケてましたよね?


 そんなことない? まあ、即興だし、本当にコンビじゃないですからね。その割に息が合ってましたね……って、やっぱりウケてたんじゃないですか~。


『あなたたちは、いつもこんな調子なんですか?』


 いつもってわけじゃないですけど、まあ割と脱線は多いですね。


 なお大抵は久利栖か私が原因だけど、意外と秀が乗ってくる。脱線から本筋の話が先に進むこともあるから、必ずしも無駄ではない、はず。


 ともあれ、卵(を毎日産む鳥)の情報ってどう? 秀と舞依も食材的に卵は欲しいでしょ。ついでに大豆の情報もあればそれも。


 卵はともかく大豆はどうしてかって?


 ノウアイラで醤油を魚介に使ってみたりドレッシングを作ったりしたんだけど、ミクワィア家の人達にかなり評判が良かったんだよね。こっちの素材だけで醤油を作れたら、儲かるんじゃないかと思って。まあ、お金は別にいいんだけど。


「醤油造りに挑戦するのは面白そうだね。それにお豆腐も。儲かるに越したことはないし、僕ら以外の転移者にとって、この世界産の醤油が出来るのは嬉しいだろうしね」


 あー、そういう視点は抜けてたかも。ちょっと反省しておこう。


 いずれにしても卵と大豆の情報ってことでいいかな? じゃあそういうことで。


 …………


 女神様から聞いたところによると。


 卵――っていうか鳥の方は、王都の西、割と近いところにフィールド型のダンジョンがあって、そこにちょうど良い魔物が生息しているとのこと。近くて良かった。早速向かおう!


 一方、大豆の方は実は普通に育てられているらしい。


 ただこの世界は精霊樹の恩恵で、各種作物が気候に関係なく良く育ち連作障害も起きない為、豆類の栽培は積極的に行われていないのだとか。麦類の方が需要はありそうだもんね。その辺の事情は米に似てるのかも。


 なので、大豆の方は農家に頼んで定期的に購入するように契約すれば、多分育ててもらえるはず、なんだけど――


『大豆の方は神託を下して、神殿の畑で栽培させましょう』


 なんか女神様がとんでもないことを提案してきたよ!?








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― 新着の感想 ―
[良い点] 神託で大豆を神殿で作れってぶっ飛びすぎてて面白そうw
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