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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第八章 王都にまつわるエトセトラ>
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#08-04 女神様からの依頼




『では本題に入りましょう。皆さんをこちらの世界に召喚してしまった装置の、完全な破壊をお願いしたいのです』


 なるほど、そうきましたか。


 思わず全員で顔を見合わせる――って何かな、テシテシと? え、キミも仲間の一人だって? 分かるけど、話合いができるわけじゃあないでしょうに(笑)。ま、いいか。ハイハイ、抱っこしてあげるから。


「装置っちゅうと、呪われた大陸の地下深くに埋まっとるっちゅう話やんな?」


「久利栖、なんかどっかのゲームかアニメと話が混じってるわよ? 確か魔法技術の先進国で、大災厄で国が滅びて不毛の大陸になってるって話じゃなかったかしら?」


「大陸全体が魔力的に不安定になっていて、突然魔物が湧いたり、地震や雷雨、竜巻などの天変地異が起こる……と、教科書には載っていました」


「呪われた大陸っていう久利栖の表現も、あながち間違って無いっぽいね」


「うん。でもその一方で、その不安定な魔力の影響で、飛行船の心臓部である浮岩うきいわが採掘できる唯一の地でもあるから、一攫千金を夢見る賞金稼ぎ(トレジャーハンター)にとっては、最終目標と語られることもあるようですね」


「危険とお宝が隣り合わせ。なるほど、そっちのパターンやったか」


「いずれにしても危険極まりない地っていうのは間違いなさそうだね。さて、どういった意図があるのか……」


「ま、その辺は詳しく訊いてみないとね。秀、任せた」


「了解。皆もいいかな? うん、じゃあ任された」




 女神さまからの話を要約すると。


 件の大陸に関する情報は、教科書に記載されていたので概ね間違いないらしい。付け加えて言うと、混沌として淀んだ魔力(イコール)瘴気が溜まっている箇所がそこかしこにあり、耐性の無い人間だと足を踏み入れただけで体調を崩し、最悪精神がやられて死んだり魔物化してしまったりするとのこと。怖っ!


 ちなみに瘴気への耐性は個人差よりも種族差が大きいんだと、女神さまが教えてくれた。有名な種族で言うと、ヒト族は割と耐性が高く、ドワーフやハーフリングはそれより低くて全体で言うと真ん中くらい。一方エルフは極端に低い。


 獣人はタイプによって異なって、ヒト族を上回る耐性を持つタイプもいれば、ドワーフよりも低いタイプもいる。平均するとヒト族とドワーフの真ん中よりもちょい上らへんとのこと。


 そんな瘴気渦巻く大陸の最も瘴気が濃い地に、滅んだ国の王都――すなわち目的地がある。ちなみに位置的には大陸南端の港町だから、こちらから向かう分には距離的に近いらしい。プラス材料としてはかな~り弱いけど。


 さてさて、じゃあ一番の問題点について。どうして私たちなのか?


 女神様はさっき、この世界の問題はこの世界の住人が解決すべきって言っていた。舌の根も乾かないうちに真逆のことを言ってるよね?


 この点については女神様も、苦渋の表情で説明兼謝罪をしてくれた。


 端的に言えば他に実行できる人が居ないのだ。ほとんどいない、じゃあなくて本当に、全く、一人も、いないらしい。


 元凶はやっぱり大災厄。この時、優秀な魔法使いは最前線で戦い、その多くが犠牲になってしまった。優秀な人材も技術も抱え込んでいた魔法先進国は、それらもろとも完全に滅んでしまった。


 つまり魔法関連のレベルが、人的にもテクノロジー的にもガタ落ちしてしまったってわけ。特に魔法適性は概ね遺伝するから、優秀な人材を失ってしまったのは大きかった。その痛手が未だに影響し続けている。


 魔法適性の高い者は瘴気耐性も高い。瘴気を遮断する結界を張ることもできるそうで、その魔法は依頼を引き受けたら授けてくれるとのこと。


 なおエルフは種族的な耐性の低さのせいで、魔法適性が高かろうがあんまり関係ないらしい。種族の耐性値と魔法適性値が掛け算される、って言えば分かり易いと思う。


 でもそういうことなら私たちと一緒に転移してきた日本人だったら、誰でもいいんじゃ……って? それがそうでもない。


 瘴気の濃い地を旅するっていうのは、継続的にダメージを受けるようなものだ。休もうにも瘴気の遮断結界を張れば魔力を消費してしまう。さらに普通の動物はおらず、魔物は瘴気(まみ)れでとてもじゃないけど食べられないから、食料の現地調達も出来ないときてる。


 …………


 って! 要するに私のトランク無しじゃあ、達成できないミッションってことじゃん! 選択の余地無くない?


 と私も含めた皆が思ったら、秀がそもそも論を指摘してくれた。


「仰ることは理解しました。しかし、そもそも危険を冒してまで破壊する必要があるのでしょうか? 僕たちの召還は偶然に偶然が重なった結果なのですから、放置したところで、大過無いように思えますが?」


 さすがは我らがリーダー。秀は本当に頼りになるね!


 ――と、思ったんだけど。


 秀の疑問を聞いて気付いてしまった。この件は引き受けざるを得ない。それこそ、皆とは一旦別れて私一人でもやるべき仕事だ。


「そうか……、私がこっちに来ちゃったからなのか……」


『言いにくいことではありますが……』


「っ! もしかして怜那の七五三掛の能力が?」


「そう。うっかり私が『こんな人材がいてくれたらなー』とか『今、こういう技術者が欲しいのに!』とか思っちゃったら、マズいことになるかも」


 まあそれプラス他の条件が揃ったらの話だけどね。でも確率的には、日本に居た私がこの世界への転移を引き当てるよりもずっと高いはず。


 問題は私自身が能力を全くコントロールできていないところだ。無意識的な話だから、気を付けようがない。


「皆ゴメン、この話は引き受ける。なんだったら私一人で行くから、皆は王都で待っててくれてもいいよ」








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