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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第一章 無人島>
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#01-08 今夜はカレー!




 無人島に上陸してから二日が経過し、今は三日目の夕方。島の探索を切り上げて、ただ今夕食の準備中です。今夜は島で獲れた食材でカレーに挑戦!


 私も料理は一応(・・)出来る。一応って言うのは、どうも私の料理は良く言えば豪快、悪く言えば大雑把で、ぶっちゃけいわゆる“おとこの料理”系なんだよね。休日にたまにとかアウトドアでとか、そういう半分イベント的になら良いけど、日常的に食べるにはちょっと向かない。そんな料理ってことね。


 ちなみに私たちのグループだと、料理の腕前は秀が一番。本人は一番の趣味って言うけど、もはやプロ級と言っていいレベルだと思う。今回私の使うカレー粉も、秀のオリジナルブレンドだからね。拘りが凄い。


 次は舞依かな。技術的な話じゃなくて個人的な好みで言うなら、舞依の料理が一番好き。家庭的な優しい味付けで、美味しいよって感想を言うと可愛い笑顔を見せてくれる。あとお菓子作りも上手で、私はブラウニーが大好き。


 鈴音と久利栖は調理実習レベルってところで、上手では無いけど全く出来ないわけじゃない。きちんとレシピを見ながら作って、無難なものが出来上がる。そんな感じ。振れ幅の大きい私の料理よりも、ある意味安定してる?


 さてさて、食材はウサギのお肉にバナナ、人参、パプリカ、トマト、タマネギ。スパイスまで自生してたらカレー島って名付けるところだ。ちなみに野菜類の名前はしおりで確認したから、こっちでもこう呼ばれているみたい。地球モデル説の信憑性が増したかな。


 もっともそれぞれ地球のとは大分違ってて、バナナは見た目こそ同じだけど固いし甘みも少なくてほぼ芋として使う食材で、人参は薬草扱いのもので高麗人参にちょっと近い? パプリカは二回りほど大きくて、皮が固いから剥かないと食べられない――こともないけど、食感が良くない。


 トマトは結構立派な木に生ってて、冬以外は年中採れるみたい。日本のスーパーで買える物よりも水分が少なくて味が濃い。たぶん原種に近い感じ? 私は美味しいと思うんだけど、こっちの人からすると酸っぱいフルーツっていう認識で、不人気果物――というか普通は食べないらしい。市場にも並ばないんだとか。うーん、勿体無い。


 で、タマネギに至っては魔物の一種で、短い脚(根っこ)でちょこまか動きつつ、天辺から伸びてる茎を振り回したり葉っぱを飛ばしたりしてくる。まあ、この島では最底辺の魔物だけどね。普段は土に埋まっててじっとしてるから、こちらから仕掛けない限り植物と変わらない。


 魔物と言えばウサギも魔物だ。ピンと立った耳にずんぐり体型。それなら可愛いしペットにしても良い? いやいやトンデモナイ。ギラギラと鋭い目つきでサーベルタイガー的な牙もあって、襲い掛かってくるときには前足の爪も伸びるっていう、かなり好戦的で危険な魔物なのよ、これが。


 まあ魔法への耐性が低いから、電撃付与の盾で攻撃を防いで痺れてるうちにナイフでサクッと、で私なら簡単に斃せるんだけど。


 今ここにあるのはそのウサギを解体したブロック肉。もちろん自分で解体しましたよ。


 いやー、慣れるまでは大変だった。何しろ罠猟が題材のマンガ――これは面白そうだから自分で買った――と、狩猟雑誌で見たうろ覚えの知識しかなかったからね。ウサギはそこら中に居て十数匹は狩ったんだけど、最初の二匹は残念ながら無駄にしてしまった。申し訳ない。


 実は最初の一回だけ、バラエティー番組だったらキラキラ光るモノも出してしまいました。意外とグロ耐性が低かった自分にビックリ。やっぱり繊細なところがあるじゃないか、とは思ったけどちょっと汚い話だからこれは皆には内緒。


 ではお料理開始!


 土魔法で形成した大きな調理台兼まな板の上でお肉をナイフでぶつ切りに。匂い消しに島で獲れたいい香りの香草――胃腸薬になる薬草らしい――を刻んだものと胡椒をまぶしておく。


 バナナとニンジンは適当な大きさに切って、タマネギは薄くスライス。パプリカは魔法を利用して湯剥きしてから切っておく。トマトは器を用意して、潰してペースト状にする。


 次に取り出したるはフライパン……鍋? 深いフライパンかな? を調理台の上にドン。あ、これも土魔法で作ったモノね。オリーブオイルを引いてフライパンの底面を魔法で加熱して具材をどんどん炒めていく。ちなみに菜箸としゃもじは、島の木材を切り出して自作したものです。


 本当はタマネギが飴色になるまで炒めたいところなんだけどね~。カレー以外にも使えるから飴色タマネギだけ大量に作って、トランクで時間を止めて保管するのもいいね。まあ今は他にすることが沢山あるから、時間に余裕ができたときに……覚えていればだけど。


 そろそろいいかな? 魔法で水を投入、トマトペーストも入れて煮込む。灰汁を取りつつ煮込む。いったん火を止めて塩とカレー粉を適当……ゲフンゲフン、適量(・・)投入。味見をして、ちょっと塩を追加。隠し味にビターチョコレートをひと欠片。再び加熱してもうちょっと煮込む。


 お皿を取り出して、よく洗ったバナナの葉っぱを二枚敷く。土魔法は強く固めると石とほぼ変わらない物ができるんだけど、表面も同じくらいざらっとしてるから、スプーンが当たった時の感触がちょっと気になる。なので葉っぱを敷いて使うようにしてる。ま、気分の問題かな。


 温めておいたご飯と出来上がったカレーをお皿によそう。ちなみに私はご飯とカレーが、半々の二色になるようにする派です。なんとな~く、そうするのが一番美味しそう。これも気分の問題。


 椅子代わりの切り株――調理台に合わせて、喫茶店のカウンター席くらいの高さがある――を取り出してっと。


「では、いただきまーす」


 カレーをひとすくい口に入れる。複雑なスパイスの香りが鼻に抜け、同時に程よい辛さを感じる。秀のカレー粉は、辛さは程々で味と香りを重視したブレンドになっている。


 歯ごたえがあって野性味のある魔物ウサギの肉、じゃが芋よりも甘くてややねっとり感のあるバナナ芋、肉厚で瑞々しいパプリカ、香りの強い人参。


 なんというか、個性の強いトロピカルなカレーって感じだけど、カレーはカレー。やっぱり美味しいです。秀が居ればもっと本格的に、舞依なら私好みの味に調えてくれるんだろうけどね。私じゃあこんなものかな。


 でも予想よりもずっとイイ感じに出来上がった。まあ私の料理の腕がどうこうじゃなくて、これはカレー粉と素材がいいんだと思う。ウサギ肉とか、昨日は塩コショウで焼いただけだったけど、普通に美味しかったし。バナナ芋なんてまんま焼き芋にしたら美味しいかも?


 うん。島を出る前にたくさん確保しておこう。仮に売れなくても、自分で食べればいいんだしね。




 うーん、なんか久しぶりに料理らしい料理を食べたような気がする。昨日までは獲った食材の味見プラス非常食って感じだったからね。


 後片付けをしてからちょっと座って一休み。スポーツドリンクを片手に、ぼんやりと星の出始めた空を見上げる。


 ところで私は今、テントの中に居る。なのに空が見えるとはこれ如何に?


 まあ単純な話で、このテントは壁と床の透過率を設定できるのです。しかも外からは見えないマジックミラー仕様。一〇〇%に設定すると枠の部分だけが白いラインで表示されるところは、ハンマーとかと一緒だね。窓っぽく一部分だけに適用することもできる。


 他にも外観をカモフラージュする機能があって、これは周辺にあるモノの表面をコピーして貼り付ける感じかな? 今居る砂浜で使うと、近くの岩場みたいな質感になる。――形は立方体のままだけど(笑)。


 地味に便利なのが、換気と排水の機能。これも%で指定できる。ちなみに透過率一〇〇%の壁や天井と合わせると、床だけのレジャーシートみたいな感じになる。


 もう一つ重要な機能がある。このテントは床が無い、壁と屋根だけの状態にも出来て、その場合は壁と天井を遮るものが無ければどこでも展開できるようになる。つまり木が生えていようが岩があろうが、なんなら海や川さえもテントの中に取り込めるってこと。


 たぶん空間全体を切り取ってトランクの中に収納してしまう、っていうイメージなんだと思う。上手く利用すれば、安全に採取や魚釣りもできるはず。魔物ごとテントに入れちゃう危険もあるから、そこは要注意ね。


 ものすごーくアレな話で申し訳ないけど、この機能はおトイレの時にとても重宝する。もう本当に重要、超絶便利機能。


 いや、でもこれは本当に冗談ではなくて。


 何しろ寝てる時やお風呂の時と同じくらい無防備な時だからね。それに探知魔法で安全確認してたとしても、お外でっていうのは花も恥じらう女子高生にはキツイのですよ。


 ――っていうか、舞依と鈴音は大丈夫かな? 二人とも良いところのお嬢様だし、私なんかよりも精神的に辛いよね……


まあ秀は紳士だし、久利栖もお調子者っぽくしてるけど人一倍空気は読めるから……。うん、大丈夫だよね。たぶん、きっと。




 さて、休憩はお終い。今日は寝る前にやっておきたい事があるんだよね。


 錬金術に挑戦してみよう。








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