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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
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#07-21 かぽーん

感想を数件頂きました。ありがとうございます!

二人の再会を喜んで頂けたようで、作者も一安心です。


ちなみに二人は、友達であることを免罪符にして、結構すすんで(意味深)います。




 長く深く愛し合って、私も舞依も汗やら何やらで体中ベトベトになっちゃったね。もうちょっと時間を延長してお風呂にも入っておこう。


 バスタブを用意して、ちょっとぬるめのお湯を張る。


 浅く短い呼吸を繰り返してぐったりしている舞依を抱きかかえると、一瞬体がビクンと跳ねた。まだ全身が敏感みたいだね。


 ――ちょ~っと、激しくし過ぎちゃったかな? うーん、後悔はしてないけど反省はしよう。でも可愛すぎる舞依もいけないと思うんだよね。今後はあんまり煽らないで欲しいな。


 魔法で再現したシャワーで軽く汗を流してから、舞依を後ろから抱っこして一緒にお湯につかる。


 ふぅ~、気持ち良い~。なんだかすごくリラックスできる。


 こっちの世界に来てから、寂しさとかホームシックなんかは敢えて考えないように、好奇心全開のお気楽な一人旅――あ、途中から一匹プラスね――をしてきたわけだけど、それってある意味常に気を張ってるってことでもあるからね。


 舞依と、皆と合流出来て、ようやく肩の力が抜けたみたい。


 一人旅を楽しんでたっていうのも、別に嘘じゃあないんだけどね。でもなんて言うのかな? 帰る場所が無いっていうのは、思ったよりも落ち着かないものなんだね。


 舞依に「ただいま」って言って、ようやく地に足が付いたって感じがする。


 まあ物理的に、定住するっていう意味でどこかに居場所を作るかどうかは、まだ分からないけど。舞依たちがどういう活動をしてたかまだ聞いてないし。


 手のひらでお湯をすくい、舞依の顔や首筋、肩から胸元へ撫でるように掛けていく。


 呼吸が落ち着いたらそのまま眠っちゃったね。だいぶ無理させちゃったかな。


 それにしてもこれは結構由々しき問題だ。いや、割と真剣な話。


 何しろこっちに来て、身体能力がめちゃくちゃ上がってるからね。それは舞依も同じなわけだけど、私とのスタミナの差って意味では、向こうに居た時よりもさらに大きく拡がってる。


 辛い思いはさせたくない。なのに、友達っていう制約が外れたことで、舞依が欲しいっていう気持ちはずっと強くなってしまった。暴力的といってもいいくらいに。


 恋人になった後の方が、強い自制心が必要になるとは、これ如何に?


 なんてことを考えながらも、ぱちゃぱちゃとお湯を掛けてた手がいつの間にやらあちこちに触れてしまっている。――ダメダコリャ。


 う~ん自制心……。自制心かぁ……。


 …………


 あれ? 私って今まで自制とか自重とか意識したことあったっけ? 基本、好奇心と探求心の赴くままに動き出しちゃうからねぇ。


 あ、そっか。そういう部分(・・・・・・)は舞依が――場合によっては鈴音たちも含めた皆で――担当してくれてたのか。


 つまり私のブレーキは、外付けのオプション装備だったってことか。なるほど、納得だね!


 納得はしたけど――否、この結論で納得しちゃ、本当はダメなんだけど――今回の場合、それじゃあ意味が無い。というのも――


「何か……、変なコト考えてる?」


「あ、起きたんだ。んー、変かな? 変ではないと思うけど……」


「怜那、場所交代。こっちに来て」


 舞依は一旦私から離れると、バスタブの反対側に寄りかかって両手を拡げた。


「はいはーい」


 大人しく移動して舞依の身体に背中を預けると、ふよんとした甘美な柔らかさと、ほっそりとして滑らかな両腕に包みこまれる。


 一緒にお風呂に入る時は何故かこうしたがるんだよね。身長は舞依の方が高いから、ある意味順当な位置関係と言えなくもないけど――なんだろう? こうしてる時の舞依は、妙に私を子ども扱いするような気がするのは?


 ほら、今も頭をナデナデしてるし。


 悪い気持ちはしないけど――なんかちょっと照れ臭い。


「私に気を使って、もっと手加減しなくちゃ……なんて、考えてたんでしょう?」


「当たり。舞依に隠し事は出来ないね」


「本当に~? 一人旅をしている間に、だいぶやんちゃしてるんじゃない?」


「旅の話は、後で皆も交えてちゃんとするよ。お互いに報告しなきゃいけないことは沢山あると思うしね」


 ふっふっふ、今のはブラフだ。いくら何でも犬&猫獣人さんの耳と尻尾を堪能したこととか、エミリーちゃんのお姉様になっちゃったことまで想像できるわけが無いからね!


 いや、別にどっちも疚しいわけじゃないよ。本当だよ?


「そう? ふふっ、まあ、それはいいけど」


 ザワリ


 あ、あれれ~、おかしいな~? お湯の温度が下がっちゃったのかな~?


「あのね、怜那。気を使ってくれるのは嬉しいし、本気でされちゃうと体力的に辛いのは本当なんだけど……」


 そこで言葉を切ると、舞依は私の耳元で――


「嫌じゃない……からね?」


 と、囁くように言った。


 も~っ! そういうところだよ、舞依!


 舞依は私のブレーキ役のはずなのに、これに関する限り全然機能してくれないんだもん。っていうか、結構アクセルをふかしてくるし。


 う~ん、頑張って適度な(・・・)手加減を覚えよう。それもなるはやでね。だってせっかく晴れて恋人になれたんだから、沢山触れ合いたいもの。







「あ、そうだ。ついでだから体と髪を洗ってから出よう。はい、ボディーソープとシャンプーにトリートメント」


「えっ? これ……、まだ残ってるの? 使っちゃって大丈夫?」


「うん。沢山あるし増やせるから。あ、化粧水と乳液にリップもあるよ。私が使ってたのだけど、舞依と鈴音に薦められたのだから大丈夫でしょ」


「えっ? えっ? 沢山? それに、増やせる?」


生理用品ナプキンは……、あとで鈴音にも渡すからその時でいっか」


「それは凄く助かる! じゃなくて、どういう事なの?」


「詳しくは後で話すけど、トランクにそういう機能があるんだよ。醤油と味噌に、パックのだけどご飯もあるから、和食もいけるよ。今度作ってね」


「それはいいけど、もう……。取り敢えず、シャンプーとかを借りるね」


「はいはーい」








少々蛇足を。


お風呂の擬音と言えば“かぽーん”。

作者の想像では、コレは恐らく銭湯なんかの割と広めの浴室で、桶を置いた時の音が響いたのを表現したものではないかと。

従ってトランクのスロット内でしかも桶を使わないこの話に、この音が鳴ることはありません。

しかし、やはりお風呂シーンと言えば“かぽーん”だろうということで、このサブタイにしました。

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