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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
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#07-14 毎度おなじみの例のアレ




「では、こういうのはどうでしょう? 僕らの拠点に一時的に身を隠すというのは。幸い余っている部屋があるので。……ボロ屋ですけど(笑)」


 鈴音さんと久利栖くんが目を見開いて秀くんを見つめます。慎重派な秀くんがそのような提案をするのは確かに奇妙で、その反応も良く分かります。


「それは……、有難い申しだが、本当に良いのか? 場合によってはそなたらを巻き込むことになってしまうが……?」


「ええ、それは承知しています。まあ乗り掛かった舟ですし、このまま危険と分かっている方法でお別れというのも……、いささか後味が悪いので」


 そして話し合いの末、まず夜が明ける少し前くらいに一旦襲撃現場に戻り多少の偽装工作などを施した後、なるべく人目を避けて私たちの拠点に向かうことになりました。人通りが多くなる前に辿り着けると良いのですけれど。


 なお話し合いの最中、鈴音さんと久利栖くんは微妙に釈然としない表情をしながらも、口を挟むことはありませんでした。




 疲労が抜けきっていない四人には休んでもらい、私たちは焚火を囲んで見張りをしつつクラン会議です。一応遮音結界を張って、と。


「で? いったいどういう事なのよ、秀。いきなりあんな提案をするなんて。しかもこっちから(・・・・・)なんて」


「せやな。正直、俺もらしくない思うたで?」


 そうですね。状況的に他に良い手が無いので同じ結果にはなるでしょうけれど、普段の秀くんならあちらからお願いされるように誘導するはずです。それが交渉というものですからね。


「鈴音と久利栖がそう思うのはよく分かる。でも今回の件に関して言えば、もう流れに乗ってしまってるなら、面倒な交渉なんてスキップして、話を先に進めてしまっていいんじゃないかなってね」


 秀くんは肩を竦めて、ちょっとおどけた仕草で説明します。


「いやいやスキップて……、そんな周回ゲームの会話パートやあるまいし」


「またもや真っ当なツッコミね。相変わらずのゲーム思考だけど」


「そう、それ。普通に考えたら“襲われてる馬車の助けに入る”なんてゲームや漫画みたいな展開、そうそうあるはずがないんだ。その上ここは王都で、訳ありっぽい人たちなんて、もう出来過ぎだ。でも僕らは日本に居た頃から『こんな偶然あってたまるか!』っていう状況に何度も遭遇したことがある。……だろう?」


「あっ……」「例のアレかいな……」


「つまりこの件は本質的に、私たちは怜那に巻き込まれたのだと、秀くんはそうお考えなのですね?」


「そういうことだね。というか、舞依さんは最初から反論しなかったよね?」


「はい。私もそうではないかと思っていましたから」


「ちなみに舞依は、どの時点で怜那絡みの案件だって確信したのよ?」


 そう確信したのは、馬車の中で双子ちゃんを見た時ですね。なんというか、怜那が可愛がりそうな子たちだな、と。


 思い返してみると、怜那と一緒に居て偶然巻き込まれた出来事は、その過程で子供や小さな生き物と関わることが多かったように思います。


「怜那って意外と子供とか小動物とか、小さくて可愛いものが好きなんですよね……」


「「「あ~……」」」


 そして子供にも懐かれるんですよね。


 怜那は本人がそうだったからか、子供の次から次へと湧いてくる好奇心や疑問を否定しません。普通の大人なら一笑に付してしまうような事でも、一緒になって楽しんだり考え込んだりします。


 そういうところ――ちゃんと自分に向き合ってくれていると思えるところが、きっと好かれるのでしょうね。


 ちなみに私は、インドア派の子供と絵本を読んだりゲームをしたりするのは好きです。ただ怜那と意気投合するような活発な子には――残念ながらちょっとついていけないです。主に体力的に。怜那と一緒に遊んでいるところを見守るのは好きですけれど、ね。


 あ、ですがこちらに来て体力も大幅に上昇したので、これからは一緒に遊べるかもしれませんね。機会があったら試してみましょう。


「まあ、ともかく理解して貰えてようで良かったよ」


「そりゃあ長い付き合いだもの。こうなっちゃった以上、こっちで避けようとしても無駄よね」


「せやねんなぁ~。むしろ気になるんは、話がどこまでデカくなるかの方やな。なんせ異世界こっちに来て、怜那さんはめっちゃパワーアップしとるんやろ?」


 何故か皆さんの視線が私に集中します。えっと、怜那と一番付き合いが長いのは私ですけれど、こちらに来てからまだ会っていないのは同じですよ?


 これまでの経験から言えば、怜那と一緒に居て巻き込まれた出来事は、過程で面倒な事や大変な目に遭うことはあっても、最終的には良い結果に終わる事ばかりでした。怜那がこちらでパワーアップ(?)しているとしても、そういう方向性は変わらないのではないでしょうか。


「いずれにしてもこうなった以上は、近い内に怜那と合流できると思いますし、きっと大丈夫ですよ(ニッコリ☆)」


 私の経験に基づく断言だったのですけれど、何故か皆さんは顔を見合わせてからヤレヤレという表情で苦笑します。……不思議ですね。








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