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トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
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#07-12 テンプレ展開、あれこれ

昨日の投稿で、一つ先に当たるこの話を間違えて投稿してしまいました。

気が付いた時点で訂正しましたが、この話を読んだという方は、お手数ですが一つ前に戻ってご覧ください。

ご迷惑をおかけします。




「さてと、確認しておくけど護衛の二人はここに放置で良いと思う人は……まあ、いないよね」


 私が馬車の外へ出たところで、秀くんがあくまでも念の為に、という風に問いかけます。当然、私たちは揃って首を横に振ります。


 確かに護衛のお二人は、自分たちよりも子供たちを優先して欲しいと仰っていましたが、じゃあその通りにできるかと言えばそんなことはありません。魔物の大群が迫っているなど、切羽詰まっている状況でもないのですから。


 幸い馬車の損傷は少なく、横倒しを元に戻せば走らせることは出来そうです。騎獣が居れば、ですけれど。


 私たちは相談して、元に戻した馬車に子供たちと護衛の二人を乗せ、魔法で馬車を持ち上げて重量を軽減した上で、私たちの騎獣のところまで引っ張って(押して)いくことにしました。


「なんちゅうかアレや、映画とかでガス欠の車を押すシーンがあるやん? あんな感じやな」


「ああ、そういうのも定番ネタだよね。イメージ的には季節が夏だけど」


「ええっ!? 夏に魔法も無しでそんな重労働するの? バカなんじゃない?」


「いやいや鈴音さ~ん。そういうトラブルを起点にして、ドラマが生まれんねん。それがテンプレっちゅうもんや」


「では仮に今回の件がそのテンプレだったとしたら、これから先はどんなドラマがあるのでしょうか?」


「せやなぁ……、訳ありっぽい四人組やし、襲撃もな~んか訳ありっぽい雰囲気やし、大方厄介事やろうな。例えば双子が忌み子とされる一族で、母親が密かに逃がしたんやけどバレて、追手を差し向けられた……とか?」


「お、結構捻ったね。もっと単純に、貴族の継承問題で継母に疎まれて消されそうになった、なんかもアリじゃないかな」


「……意外とありそうなところが嫌よねぇ。そういうのもテンプレなの?」


「せやで。ラブコメ方向のもあんねんで。例えば双子ちゃんがとんでもない屑貴族に目を付けられてて、俺と秀が偽装婚約者とか恋人になってパーティー会場に乗り込む……とかやな」


 双子ちゃんはとても可愛らしかったですからね。そういうこともあるかもしれません。


「ダ・メ・よ! っていうか歳が合わないでしょうに。次そんなこと言ったら、あんたのことロリコンって呼ぶわよ!」


「ちょっ! 俺はケモナーであって、ロリやあらへん!」


「どうでもいいわよ、そんなこと!」


「ふふっ」


「……ナニよぅ、舞依」


「いいえ、なんでもありません」


 まあ、本当の婚約者としては面白くない話ですよね。







 私たちは騎獣を繋いでいたところまで戻り、そこで一休みすることにしました。馬車の中の四人が未だ目覚めない為、この後の方針が決められないからです。


 ちなみにここに来るまで戦闘のあった場所の様子を時折伺っていたのですが、あれから魔物がやって来る気配はありませんでした。薬の効果は切れたと考えて良さそうです。一安心ですね。


 結局、夕方になるまで四人とも目覚めなかったために、この場で野営をすることになりました。


 テントを張り、焚火を焚いて、夕食の準備をします。ちなみに防風結界や消臭結界といった野営キャンプに最適な各種魔法を使えば、案外快適に過ごすことが可能です。――魔力に余裕のある私たちだからこそ言えることですけれどね。


 焚火を囲んで作り置きのハンバーガーとハッシュポテトにオレンジジュースで、簡単な夕食にします。


「焚火を囲んでバーガーセットを食うっちゅうんも、なかなか乙なもんやな」


「栄養バランス的に夕食がこれだけっていうのは気になるけど……、まあ、たまにはいいか。カレーメン一つよりはずっとマシだし(笑)」


「わははっ! せやな~」


「……ってか、なんでカレー味限定? 醤油ラーメンじゃダメなの?」


「ソロキャンJKが夕食にカレーメンを食べるちゅう印象的なシーンがあるんよ」


「ふーん。まあキャンプと言えばカレーは定番だし、そういう意味では変でもないのかしら?」


「私はカレー味よりも、女子高生がソロでキャンプという点が気になるのですけれど……。ちょっと怖くありませんか?」


「ま、まあ……、確かにそこらへんはリアルに考えると気になるとこやけど……。そういう小さな嘘があるからこそ、フィクションは面白くなるんよ。たぶんな」


「……久利栖にしては、随分とまともな意見ね。ちょっと見直したわ」


「せやろー? って、褒めて無いやろ?」


「褒めてる褒めてる。……それで秀、これからどうする気なの?」


「話を聞いてみないことにはなんともね。久利栖も言ってたようにキナ臭い背景がありそうだし、あまり深く首を突っ込むのは危険だ……」


 と、そこで秀くんは一旦言葉を切りました。顎に手を当てて数秒考えてから、首を横に振って溜息を吐きます。


「……そう、思ってたんだけどね」


 苦笑する秀くんと目が合って、私は思わずクスリと小さく笑ってしまいました。秀くんが考えてることが分かってしまったからです。


 鈴音さんと久利栖くんがキョトンとしています。けれど、たった一言で二人ともピンとくると思います。それは――


 ガチャリ


 と、そこでタイミングがいいのか悪いのか、馬車の扉が開きました。


 護衛の二人が先に馬車を出て、双子の手を取ります。ごく自然な様子なので、普段からそうしているのでしょう。


 いずれにしても四人とも回復したようで何よりですね。








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