表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
106/399

#07-10 問題発生ですか?

投稿再開です。よろしくお願いします。


※これからしばらく舞依視点のまま話が進みますが、物語の本筋に当たるのでサブタイトルに「閑話」の記載はしていません。




 一二月も半ばを過ぎたある日、私たちはいつものように食材の調達に森へ向かいました。


 早朝に騎獣をレンタルして出発すると、昼頃には森の近くの集落に着きます。集落の宿屋に騎獣を預け、日が暮れるまで森で狩りをしたら宿に戻り一泊。そして翌日の午前中にもう一度狩りをしてから拠点に戻る。――というのがいつもの(・・・・)予定です。


 そう、その日はいつものようにはいかなかったのです。


「ちょっと待ってください。左手の方に大きな魔力反応があります。魔物と……、魔法の反応が多数? 戦闘中……でしょうか?」


「戦闘中? あっちの方って道が伸びてるだけで、他には何にも無いわよね? 森からも離れてるし、魔物が出るとは思えないけど……」


「せやなぁ~。……ん? ああ、でも爆発音っぽい音が聞こえるような……聞こえんような? 秀、どうするん?」


「……舞依さん、人と魔物の数、それとどちらが優勢かは分かる?」


「いいえ、距離が遠くてそこまでは分かりません。……あ、ですが魔物の増援が向かっているようです」


「ほう! 仲間を呼ぶ魔物がほんまにおるんやな。そういうんは厄介やけど、討伐クエの数を稼ぐには便利なんよ(キリッ)」


「討伐クエぇ? 知らないわよ、そんなこと。……でも魔物に仲間意識なんてあるのかしら?」


「うーん、少なくとも教科書にそんな記述は無かったね。でもそれだけに状況は確認したい。狩りの予定は一旦取りやめにして、そっちに向かおう。ああ、介入するかはまだ保留だから、慎重に」


「承知しました」「分かったわ」「りょーかいや!」




 私たちは途中で騎獣を手頃な木に繋ぎ――戦いに向いた種類ではないので――木立や草むらでなるべく身を隠しつつ、戦闘を辛うじて目視できるところまでやってきました。


 激しい戦闘があったことを窺える現場でした。横倒しになった馬車があり、倒れている人の姿も複数あります。バラバラになったり黒焦げになったりしている魔物の残骸も転がっています。


 私と鈴音さんは思わず顔を顰めてしまいます。魔物や野生動物との戦闘は流石に慣れましたし、解体もしているのでそちらは大丈夫ですけれど、人間の方は――どうしても慣れることができませんね。


 木に登っていた久利栖くんがひらりと飛び降りてきました。


「どうだった久利栖?」


「戦闘はまだまだ継続中って感じや。戦士風のおっちゃんとねーちゃんvsオオカミ軍団! それ以外はピクリとも動かん。見た目のダメージからすると……、生きてはおらんやろうな」


「そうか。戦況は?」


「今んとこは膠着……っちゅうより、防戦に徹してるからどうにか膠着しとるって感じや。おっちゃんらは横倒しになっとる馬車を庇うように立ち回っとるから、かなりやり難そうや」


「馬車の中に要救助者がいるってことか」


「せやろうな。ま、それだけやなくて、なんやデカいヘビの魔物の死体があったから、毒を食らっとるっちゅう可能性もある」


「ちょっと待って、デカいヘビの魔物!? 冗談はよしてよ……」


「まあまあ鈴音、死体だって言っただろう? だけどそんな魔物、王都にいるわけが……」


「せやな、普通に生息してる魔物やないやろ」


 何者かが魔物をここに連れて来て襲わせた――ということでしょうか?


 それだけではなく、そもそも王都の森に棲息している魔物は、基本森の外へは出て来ません。何らかの方法でおびき寄せられたと考えるのが妥当でしょう。


「割と立派な箱馬車やし、おっちゃんらの装備も立派なもんや。金持ちか貴族か……、そんなとこやろう。どやっ、キナ臭いやろう?」


 あの、久利栖くん。そこでワクワクした雰囲気を醸し出すのは、少々不謹慎だと思いますよ?


「で、どうするん? 疲労もあるやろうし、長引けばおっちゃんらの方が不利や。介入するんなら早いとこした方がええと思うで」


「舞依さん、増援はありそうかな?」


 集中して魔力を探ってみますが、今のところ周囲にそういった反応はありませんでした。ただそもそもの話、魔物の増援が何故あったのかという点が不明です。増援が無いと決めつけるのは危険でしょう。


 そういったことを伝えると、秀くんは頷きました。


「分かった。彼らを救助しよう。舞依さんはまず馬車に防御結界を掛けてほしい、鈴音は後方から支援。こちらが救助に入ったからと言って、向こうが敵対してこないとも限らないから、二人はその見張りも兼ねて欲しい」


「承知しました」「オーケー、任せて」


「僕と久利栖はオオカミの相手だ。増援の警戒も怠らないようにしよう。ああ、全員なるべく手の内は見せない方向で。この際、素材とかは考えなくていい」


「ま、相手の素性も分からんしな。しっかしアレやな、襲われてる馬車を助けるっちゅうシチュエーションは、不謹慎やけどテンション上がるわな!」


「あ~、実は僕も思ってた。なにしろテンプレ中のテンプレだからね」


「ちょっと……、二人とも真面目に(ジトーッ)」


「おっと失礼。大丈夫、分かってるよ」


「せやで、俺らは切り替えが出来る男なんや(キリッ)」


「本当に大丈夫かしら(ヒソヒソ)」「ま、まあまあ(ヒソヒソ)」


 お二人とも根は真面目ですから大丈夫ですよ。――まあ、こちらの世界に来てから若干箍が緩み気味ですけれど、ね。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ