表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トランク一つで、異世界転移  作者: ユーリ・バリスキー
<第七章 再会はトラブルとセットで>
100/399

#07-04 騎士との遭遇(ただしニセモノです)

戦闘シーンがあるため、残酷な描写があります。

苦手な方はご注意ください。




「怪しいな。話を聞きたい。我々に同行して貰おう」


「お断りします」


 間髪入れずに断ると、騎士風の男たちが目を見開く。ま、平民ならその出で立ちで威圧的に言えば、大抵は言うことを聞くだろうけどね。


 でも残念。ごくごく一般的な教育を受けた日本人は、よく知らない人や怪しい人にはついて行ってはダメだと知ってるんですよ。


「何? お前、我々に逆らう気か?」


「逆らうも何も、あなた方にそんな権限は無いでしょう? 逆に聞きますが、その我々さんたちは、どこの所属の誰なんです?」


「「…………」」


 いや、そこで押し黙っちゃダメでしょう(笑)。自分たちが似非エセ騎士だと言ってるようなもんだから。これが秀なら、瞬時に適当な家名をでっち上げて流れるように嘘を吐く(返答する)っていうのに。私? まあ、私も出来る――かな?


 ま、アドリブは難しくても、設定くらいは用意しておかないとね。


「話になりませんね。次の雇い主には、偽でもいいから紋章付きの装備を要求することをお勧めしますよ。まあ次があれば(・・・・・)ですが」


「……てめぇ」


「素の下品な口調が出てますよ? 煽り耐性無さすぎ。ああ、隠れている三人も出てきていいよ。最初っからバレてるし」


 なんだか程度が低くて、まともに相手をするのが面倒臭くなってきた。さっさと片付けてしまおう。


「舐めた口ききやがって。大人しくしてりゃあ、話を聞くだけで済んだかもしれないってのに」


 リーダーらしき騎乗した男がサッと手を挙げると、伏せていた三人が姿を現し、それぞれが武器を構えた。


 チョンチョン クイックイッ


「え? 武器を貸して……って、キミもヤル気なの?」


 あー、対人戦の経験を積みたいのか。確かにずっと私と訓練をしてたからね。客観的にどのくらい強くなったのか、試してみたいっていう気持ちは分かる。


 そういう意味では、この“似非騎士とその仲間”は練度的にも人数的にもちょうどいいくらいか。――我ながら酷い言い種だね。


 ま、でもそういうことなら魔法で一気に片付けるのは止めておこう。私も弟子カーバンクルの成長を見てみたいし。


「はい、じゃあこれ。あっちの三人は任せたから」「キュッ☆」


 複数のナイフで錬成した片手半剣バスタードソードを手渡すと、カーバンクルが横ピースにウィンクで答える。――き、緊張感が。


 なんて思った次の瞬間、魔力を込めた踏み込みに風魔法を併用して一気に距離を詰め、隠れていた男の一人をバッサリ袈裟懸けに斬り捨てた。うん、やるね。


 え? 声なんてかけないよ? もうとっくに戦闘は始まってるんだから。


 って、リーダーとサブリーダーっぽい二人も何ぼさっとしてるんだか。思わず忠告したくなっちゃうよ。


 騎獣二体を拘束魔法で縛りつけ、ハンマーでチョンチョンと触れて回収。時間を止めておく。騎獣に罪は無いし、殺してしまうのはもったいな――ゲフンゲフン、可哀想だからね。


 突然騎獣が消えてドサリと地面に落ちた二人の内、サブリーダーの方にサッと近づき、取り出した刀で心臓を一突きする。


「てめぇっ! 何をしやがった!」


「答えるわけがないでしょ。っていうか、そんなの今はどうでもいいんじゃない? 端っから勝ち目なんて無かったけど、状況は絶体絶命。あっちの方も……、ああ、もうカタが付きそう」


 チラリと見ると、カーバンクルは魔法を纏わせた蹴りで一人をぶっ飛ばし、反対側で剣を振り下ろそうとしていた男の両腕を肘の辺りから斬り飛ばした。アレでは武器も魔法も使えないだろう。数的な有利がなくなれば、あの程度にやられるカーバンクルじゃあない。


 うんうん、私の弟子(パダ〇ン)もなかなかやるじゃない。マスターとして誇らしいね――なんて。


「さて、降伏しますか? 命だけは助けても良いですよ?」


「舐めるな、小娘がっ!」


 あっそ。へー、一応リーダーだけあって、五人の中では一番できるみたいだね。ただ――別に剣で相手をするなんて一言も言って無い。テイザー魔法を放って気絶させ、さらに拘束魔法を掛けておく。ま、リーダーには聞きたいこともあるし、生かしておきたいからね。


「キュッ!」


「あ、お疲れ様~。キミもなかなかやるようになったね。良かったよ」


「フヒュヒュ~(ドヤッ)」


「ハイハイ。まあ上には上がいるから、あんまり調子に乗らないように。特に対人戦はね。それはともかく、結構返り血を浴びてるからちょっと洗っちゃうよ」


 カーバンクルに清浄化の魔法――洗浄魔法とも言われる――を掛ける。この魔法は教科書で覚えたもので、生活魔法の一種。ただ生活魔法の中では割と高度な部類になる。


 日常的な“汚れ”を落とす魔法で、食べカスとか油跳ねとか泥とか血とか汗とかそういったものが綺麗さっぱり取れる。ちなみに可食判別の魔法と同じ理由で、上手くイメージできなかったものでもある。


 なお除菌・殺菌効果は無い。ただ汚れに付着してる菌とかはたぶん一緒に取れる。この辺はちょっと曖昧な感じね。


 結構便利な魔法だけど、気を付けないといけないのは範囲の指定が出来ない――つまり全身にかかるとこ。で、化粧――日焼け止めやハンドクリームの類も含む――も“汚れ”扱いらしく、綺麗さっぱり落ちちゃうんだよね。それはそれで便利なんだけど。


 あともう一つ欠点があって――


「フヒャッ、ヒャウッ!」


 なんか妙に擽ったいんだよね~(笑)。思わず変な声が出ちゃうくらいに。なので、あんまり人前で使うのは向かないのですよ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ