第3話:教授の崇高な発明
前回までのレディブラスト
初めてのヴィランで爆発物を扱う男、ザ・ボマーを倒すことに成功したレディブラストは浮かれていた。
ザ・ボマーと言う爆弾魔のヴィランを倒した私は、正直言って浮かれている。それもその筈、ここまで注目の的になるなんて思わなかったからだ。
確かに正義の味方としての目的も忘れてはいない───ヒーローに休みは無いのだ。
ある日のこと、秋津市にとある大きな会社が"テクノマイト"と呼ばれる鉱石を調べにやって来た。
その会社の名前は"ドレイクスコープ"と呼ばれる会社で本社はイングランドにある。名前の由来はフランシス・ドレイクという偉人が使っていた望遠鏡から、らしいけど私は歴史に詳しくないからそこは君達に任せるよ。
話を戻すと、その会社は日常で使う家電製品や薬品を手掛けており、実は秋津市にも支店がある大企業だ。
ならなぜこの話をするかって?・・・それは私にとっての宿敵がこの事件に関わっているからだ。
ある日のこと、ザ・ボマーを倒した事に浮かれていた私は、嬉々と朝食を食べていた。
そんな私を見て不思議に思う両親は最近いつものことだが、兄は少し様子が変だった。
何というか、いつにも増して兄がテレビに齧り付くように見入っている。まるで好きな番組がやっているかのようだが、彼が見ていたのはニュース番組で、そこにはレディブラストが映っていた。
「お兄ちゃんどうしたの?」
私が兄に話しかけると、彼は我に返ったような反応を見せながら言った。
「いや・・・ちょっとな」
私は兄の言葉を聞いて、心の中で怪しく思う。何故ならその時彼は『レディブラスト』の単語が出た瞬間、睨みつけるように見ていたからだ。
ただ、その時はそんなに気にしてなかった。何故なら私の勘違いかもしれないと思っていたからだ。
私は朝食を食べた後すぐに高校へ登校する。空を飛べばすぐ着くものの、そんな事をしてSNSに晒されたら一巻の終わりだ。
私がそんな事を考えながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある明るい声が聞こえてきた。
「ミーカっ、久しぶり!」
後ろから私に抱きついてきたのは橙子だった。
「久しぶりって、まだ2日しか経ってないよ・・・」
ザ・ボマーと戦い、橙子を救ってからまだ2日しか経っていないにも関わらず、彼女はそう言って私は呆れた声で突っ込んだ。
それから私達は2人で登校する。彼女は私・・・もといレディブラストに助けられた事を嬉しそうに言い、私は心の中でにやけながら聞いていた。
学校に着いて教室に入ると、クラスメイトの話題はレディブラストのことで持ちきりだった。
「レディブラスト、だいぶ流行ってるよね」
「そうだね」
「ミカ、顔がニヤけてるよ?」
「そうかな?」
橙子から顔がニヤけていることを指摘されると私はすぐに誤魔化した。
人々の平凡に刺激を与えた存在、レディブラスト───この時の私は正直浮かれていた。
ある日のこと、私はいつも通り外に出て犯罪が起きてないか監視していると、ある人物に声をかけられた。
「おい、ミカ?」
私はその声にビクッとなりながら振り向くと・・・やっぱりそうだ、その声の主は兄だった。
今の私はコスチュームを着ていない為、顔見知りだからすぐ分かったのだろう。
「お前が散歩とは珍しいな」
「そ、そうでしょー?」
少し棒読み気味な言い方になったものの、取り敢えず誤魔化した。
どうやら彼は聞き込みをしているようで、感心はするもののあんまりいい感じはしなかった。
「お兄ちゃん休み無いの?」
「いや、ちょっとな」
刑事とはいえ、休みがある筈の兄は土日も休みを返上して働いているようだ。寧ろそれが私にとって気になるが・・・
とにかく、私はその場から立ち去る。どうせ兄は詳しく話してくれないからね。だったら私は自分の使命を果たすまでだ。
私は目に届く範囲で地元を巡回した後、家に帰って風呂に入る。普通なら夜も巡回すべきところだが、正義の味方だって休みたいのだ。
しかし、そんな時に事件が起こる。事件といっても些細なことだが、その時の私にとっては最悪だった。
夕食を食べている時のこと、その時は兄もいて、久しぶりに全員揃った食卓だった。
夕食を食べている中、あるニュースが流れる。それは私が爆弾魔のヴィランと戦った時の映像だった。
「レディブラストってのは正義の味方なのか?」
父が何気なく言うと、兄が口を開く。たがそこから出た言葉は、私を不快な気持ちにさせた。
「父さん、レディブラストは正義を気取っただけの自警団だよ。信じない方がいい」
何故そんな事を言うのか、私は腹を立ててレディブラストを弁護する。そんな私を見た家族は、目を大きく見開いて無言で驚いていた。
「れ、レディブラストは正義の味方だよ!!」
「ミカ、お前がレディブラストを信じたいのは分かるが、こんな田舎にいきなり現れたんだぞ?しかもそれと同時に爆弾を使う犯罪者も現れて・・・」
「爆弾魔とレディブラストは関係ないよ!!」
私が怒鳴ると、両親は間を持って私達を宥める。しかし、それでも私の中にある怒りは収まらず、あともう少しでサウンドブラストを撃つところだった。
あんな事を言われて腹の虫が治らない私は部屋に行くとすぐに泣きじゃくる。まるで・・・と言うか完全に自分のアイデンティティを否定されているようなものだ。
そして次の日、私は兄とは一切話さず学校へと向かい、そしていつもと同じように帰る途中でヒーロー活動を始めた。
こんな事が人の為になっているのか、だったらボランティアにでもなった方がいいんじゃないか───と、この時にそんな考えも浮かんでいたが、なるべく自分を正当化しようとして、あまり考えないようにしていた。
そんな思考に至ったのは、恐らくザ・ボマーに撃たれて殉職してしまった警察官への罪悪感で、後のニュースでは彼の奥さんがテレビで出ていたが・・・私は謝ることができずにいた。
怖い、とにかく怖くて私は謝ることができずにいる。もし仮にあの人が私を恨んでいたら? もし私が謝る事でさらに悪い方向へと進んでしまったら? そう考えてしまい心の中には躊躇いがあった。
そんな事を考えながらも空を飛びながら街の様子を眺めていると、街外れの港にある倉庫で何やら人影を見つけた。
少し様子を見る為に物陰に降りた私はその様子をよく見る。2人組の男が真ん中の男に肩を貸している・・・ようには見えない。どう見ても連れて行かれてる感じだ。
再び空を飛んで今度は倉庫のどこからか内部が見えそうな所に向かう。この倉庫は古いのか所々に錆があり、運良く屋根に隙間があった。
誰かがクレーンのフックに両手を上げて吊るされていく。その男はスーツを着た青年で私にはとても見覚えがあった。
その人物は兄で、動揺がつい口から出てしまう。そして、彼を囲んでいた人達が色々な所を見て私を探し始めた。
「おい、さっき誰が声を出した?」
「空耳じゃねぇか?」
「馬鹿、お前も聞こえただろ」
私が『ふぅ・・・』と安心するが、運悪く兄を捕らえた集団の1人が天井を見て私に気付く・・・どんだけ目がいいの?
「おい・・・侵入者だ!」
「撃て、撃て!!」
その人達は銃を構えて私に発砲するが、それを浮遊しながら戦闘機のように避ける。そして撃ち落とされなかった私は、自分の番と言わんばかりに宙からサウンドブラストを放って1人ずつ倒していった。
しかし、撃ち落とせないことに痺れを切らした敵の1人がフックで吊るされている兄に銃口を向け始めた。
私は思わず兄の前に立ち塞がり、敵が放った銃弾を一斉に浴びた。
銃弾を浴びた私は緩やかに地面に足をつけた後、そのまま右膝を付いた。
私が撃たれた時、兄がどんな表情をしているのかは分からないが───とにかく私は生きている。そう、銃弾が私に当たって潰れたのだ・・・痛いけど。
そんな事を知らずに、敵は私に近づいて銃を構え直した。
「やったか・・・?」
私はその言葉に不適な笑みを浮かべて、目の前に構えられたマシンガンの銃身を握る。構えていた敵は予想外な事に驚いていたが、私は引き金を引く暇を与えずにサウンドブラストを彼の腹部に放った。
「さて、次はだれから懲らしめられたい?」
自分の能力を知った私は余裕の表情でそう言った。
それから数分後、倉庫にいた敵を全て倒した私はどっと疲れが出たように座り込む。敵は至る所で倒れていた。
粋がった台詞を言っといて情けない・・・そんなことを思いながらも思い腰を上げて兄をフックから降ろして救出した。
助けたのは良いものの、兄は状況が読み込めず思考停止状態で、私は声を掛けた。
「大丈夫?」
私の声を聞いた兄はハッと我に返って、こちらを見た。
「お、お前はレディブラスト!?」
助けた恩人に対して第一声がそれなのか・・・と呆れる私だが、感謝される為にヒーローやっているわけじゃない事を思い出しながら冷静になる。今は普通の女子高生、立花未可矢ではなく秋津市を守るヒーロー、レディブラストなのだから。
「あなた"刑事"さんね、早く応援を呼んだほうがいいわ」
「何でそれを───」
「良いから早く!!」
私が大声で急かすと彼はスマホで自身の勤めている警察署へ連絡をかけた。
その間に私は"ある事"をする為に、まだ完全に気絶していない敵の元へ向かう。彼は地面を這いずりながら落ちている銃の所へ近づくが、私が銃を踏んで阻止した。
「無駄だわ、お前達が秋津市に危険を及ぼす気なら、私は何度でも食い止める」
いやぁ、言いたかったんだよねこの台詞!! ただ、それを言うのが目的じゃなくて、最も訊きたいのはこの武装集団が何者かという事だった。
「誰かに頼まれた?」
そう訊くが、その男は沈黙する。しかし、彼の沈黙は本当に知らないわけではなく、何かを隠しているような素振りのような気がした。
「なら私のビームをもう一回浴びせても良いわよ?」
私の脅しで何とか焦り始めるが、逆に"脅されている"かのような事も言い始めた。
「待ってくれ、言ったら殺される!!」
「そんな嘘通じるわけ───」
私が呆れながら言いかけた瞬間、どこかでスマホの振動音が鳴る。どうやら男の片腹のポケットに入っているようだった。
着信音を聴いた男は失神し、私はスマホを取る。画面には誰かへの着信が掛かっていた。
「電話?」
しかし、自分が電話を取ろうと画面を押すが何も起きない。すると応援を呼び終わった兄がこちらに来た。
「スマホの使い方がわからないのか?」
「いや、電話に出ることができなくて───」
彼が私を見かねてスマホを取り、失神した男の親指をホームボタンにタッチさせる。すると、通話ができるようになっていた。
『おい、どうなっている?テクノマイトはまだ輸送できないのか?』
「〔テクノマイト?〕」
テクノマイトとは鞠尾山で見つかった鉱石のことで、どんな鉱石なのかは知らないけど、唯一分かっているのは、この代物が悪者の手に渡ってはいけないという事だ。
私達が応答しないでいると、向こうもそれに気付いたのかすぐに電話を切った。
「コイツらの雇い主はなんなんだ・・・?」
「あの時逮捕した男は?」
「あの爆弾魔も口を割らなかったんだよな・・・って、お前に話す義務はないんだよ」
彼は頑なにレディブラストを拒む。手柄を横取りされたくないのか、警察の存在意義が無くなるからかは分からないけど・・・そんな頭の固い兄に呆れた。
「あっそ、なら私は私で行動するから」
「ちょっと待て!」
空に飛び立とうとした私を兄は呼び止められ、私は不機嫌そうな表情をした。
「まだ何か?」
兄は少し葛藤を見せながら言い、その発言に私は目を丸くした。
「コイツらの雇い主は、恐らく"ドレイクスコープ"にいる」
兄の言うドレイクスコープというのは、名の知れた海外の大企業で、現在、秋津市に"調査"という名目で来ているからだ。
「何でそんなこと知ってるのお兄ちゃ───」
あまりの驚きに、危うく兄を呼びそうになった私は寸前で自分の口を塞ぐが、彼は聞いていたようで怪しんでいた。
「待て、今"お兄ちゃん"って言いかけなかったか?」
「すいません人違いでした・・・」
彼に正体がバレそうなのを誤魔化している中、私の耳に"ある音"が入ってきた。
その音を詳しく聴くとどうやら機械音のようで、こちらに近づくように音が大きくなっていった。
「おい、お前は───」
「危ないっ!!」
私が彼を庇うと同時に、音の正体はやって来た。
「何だ!?」
倉庫の門を破壊して来たのは人間より一回り大きく、下半身は蜘蛛のような6本脚に上半身は人型に近い形状をしていた。
武装したロボット───これが、人を殺す為に作られた機械だと確信した私は、このようなロボットを"殺人機"と呼ぶことにした・・・ネーミングセンスは置いといてね。
兄はすぐスーツの中から拳銃を取り出して、襲撃してきた武装ロボットに構える。私もそれに合わせて左腕をその機体に向けた。
緊迫感のあるこの瞬間───私達とロボットはお互い睨み合っている。どちらか先に攻撃を仕掛ければ戦いは始まるのだが、相手は一向に攻撃せず、ただこちらを見つめていた。
「あのロボット、なんなんだ?」
「さぁ・・・」
両肩の六連装ミサイルポッドに両手に持っているマシンガン、それに下半身前面にあるレーザーの発射口と言った武装はまるで戦争に使われるような兵器で、とてもじゃないが、こんなものが秋津市で使われるなんて、B級映画じゃないんだから。
私達が身構えていると、殺人機はこちらにマシンガンの銃口を向け始め、私は咄嗟にサウンドブラストを腕から放った。
撃った光線がロボットに命中し、当たったと同時に火花が散って爆発するが、別に倒せた訳では無く、胴体は焼けたような跡が付くだけで損傷が留まった。
相手は謎の電子音を出しているが、それは私達をどうするか演算しているように思えた。
「逃げるよ!」
「お、おい!」
危機を感じた私は、兄の手を引っ張りながら空を飛び、倉庫の天井を突き破る。どう見てもあの殺人機が私達を狙っているというのは判っているのだが、何故こんなロボットが突然来たのかは意味が分からなかった。
「危なかった・・・」
大きなため息を吐いた私をよそに兄は独り言を言った。
「あれが"プロフェッサーJ"の・・・?」
「プロフェッサー?」
待って、と言うように私はその名前を思い出す。"プロフェッサーJ"とはキャプテン・サンダーボルトと戦ったヴィランの1人で、正体は未だに誰も掴めていないらしい。どうやらその人物は"教え子"と呼ばれている尖兵達がいると聞くが・・・それについてまたもう1つ驚くべき事があった。
この時、私はある事について思い出す。そういえばザ・ボマーも電話相手を"教授"って呼んでいた。
もし私の考えが正しければザ・ボマーは恐らくプロフェッサーJが放った尖兵で、さっきの小悪党達の雇い主はもしかしたら───奴だ。
私はなぜその名前を兄が呟いたのか訊くと、彼は持ち前の頑固さで黙秘し始めた。
「何で"プロフェッサーJ"の名前を?」
「・・・お前に言う気は無い!」
「"相変わらず"頑固だなぁ・・・あっ」
しまった、またやってしまった・・・これだから知り合いと話しにくいんだよ。
「"相変わらず"だって?お前と会ったのはこれが初めてなんだが・・・」
兄が怪訝そうに私の顔を見て、私は顔を背けた。
「そんなに見られるとレディブラストちゃん恥ずかしいなー・・・」
「とぼけるなよ、お前まさか───」
正体を明かさまいと私が誤魔化していると、下の方から何かが迫ってきている音を聴く。さっき敵対していたロボットとは違う、風を切って向かってくるような音だ。
それの正体は私の開けた穴から現れる。それは3発ぐらいのミサイルだった。
ミサイルは穴を通過して上空に少し飛んだ後、放物線状に私達目掛けて接近し始めた。
「クソっ!」
兄が拳銃を構えるがどう見ても拳銃では分が悪い・・・私はサウンドブラストを3本中の1本に当てて誘爆を引き起こさせ、すぐ兄を抱きかかえてそのまま下に降りた。
私は地面のアスファルトにヒビを入れながら着地すると、足から身体中へと電流が流れるように私は震えた。
一方で私に抱えられた彼は状況が読み込めず目を丸くしながら静かに瞬きしている。傍から見ると、女の子に抱えられた大人だから、余計理解が追いつかないだろう。
私は自分よりひと回り重い筈の彼を軽々と抱えている事に対し、恥ずかしさを覚えて彼をそのまま地面に落としてしまった。
地面に尻餅をついた彼は我に返り、その痛みに耐えながら私に怒った。
「いてっ・・・これは公務執行妨害に当たるぞ!」
「そんな事言ってる暇?」
間抜けに見える彼に呆れながら話していると、ロボットが倉庫から現れる。彼は立ち上がって再び現れた敵に拳銃を構え、私もそれに合わせて両腕を向けた。
「刑事さん、ここは私に任せて」
常人である兄には分が悪いと思った私は、そう言って逃がそうとした。
「お前、何言って・・・」
「お願い、これ以上犠牲者を増やしたく無いから」
私はロボットと向き合いながらもそう言い、そんな私の横顔に何を思ったのか、彼は否定しなかった。
「・・・分かった、お前も死ぬなよ」
「分かってるって」
私は兄に顔を向けて笑顔を見せると、再び敵と対峙した。
「来なさい、殺人機───これ以上、この街で暴れさせない!!」
私なりにカッコ良く決めてから戦いに臨んだのが、ロボットの方が早く攻撃し始めた。
相手は自身の両手に持つマシンガンを私に撃って牽制する。私は命中しないように宙を変則的に飛んだりして避けた。
殺人機のマシンガンが弾切れを起こすと、私はその好機を逃さず急接近して頭部を殴った。
しかし、ロボットを殴っても顔を傾けただけで効いていないのか、私の首を両手で掴んだ。
私の首が絞まり、息がし辛くなっていく───このままだとヤバいと思った私はサウンドブラストをロボットに放ちたかったが、首が絞まりが強くなっていくせいか放てなかった。
意識が朦朧とし始めたその時、乾いた発砲音が何発も聴こえた。
「レディブラストを離せ!!」
僅かな意識の中で聞いた声の主は兄で、彼は増援を呼びに行った後、わざわざこちらに戻ってきたのだろうか?
私は横に放り投げられ、ロボットは彼へと近づいた。
仰向けに倒れた私は、立ち上がろうとするものの、同時に咳き込み、何度も呼吸する。涙目になる程辛かったが、まだ諦めない・・・あの殺人機を壊さないと被害が大きくなってしまう───それは絶対に避けないといけなかった。
私はおぼつかない足取りでちゃんと立ち上がり、深呼吸する。そして自分に気合いを入れるために両頬を叩いた。
ロボットが拳銃で応戦する彼を手に掛けようとした瞬間、私は機体の背後を取って左肩のミサイルポッドを引き抜いた。
すると、敵が再び標的を私に変更したのか、こちらを振り向いた。
ミサイルを放たれると周りに被害が及ぶ・・・そう考えた私は、もう一方のミサイルポッドを引き抜こうとするが3発のミサイルが発射されてしまった。
ミサイルは私と兄へ別々に飛んでいき、私は彼の方向に飛んだミサイルをサウンドブラストで破壊する。そして自分に向かってくるミサイルは一か八かの賭けで殺人機に返すことにした。
追尾してくるミサイルを制御しているロボットに当てるなんて、できるか分からないけど・・・やってみるしかないと思った私はわざと敵のの下半身へと潜り込んだ。
その時私を追っていたミサイルがロボットに見事に命中し、機体は前方に倒れ込んだ。
私は浮かび上がった後方から脱出し、兄の元へ向かった。
彼と合流した私は、外側からロボットを確認する。私達は緊張を解けず、それぞれいつでも戦えるよう身構えた。
「やったか・・・?」
「それ死亡フラグだよ」
「何かお前俺の妹にそっくりだな・・・」
そんなくだらない話をしていると、ロボットが再び動き出し、下半身にあった発射口を開ける。そこからは何かの主砲が現れ狙いを定めた。
ただ、狙いは私達では無く倉庫だ───恐らく証拠を消す気なのかもしれないと思った私は主砲の前に立ち塞がった。
私が立ち塞がったと同時に、殺人機の主砲から青いレーザーが発射されて私に命中した。
「レディブラスト!!」
兄はレディブラストの名を叫ぶが、実はなぜかピンチでも無い───というかロボットのビームが自分の身体に吸収されているような気がした。
やっぱりそうだ・・・この光線が当たっているとエネルギーが身体中に満ちていく感覚があり、そのまま近づいてロボットに突っ込んだ。
私がエネルギーを纏ってロボットに突っ込むと、案の定機体は爆発して爆煙が広がった。
私は宙を飛んで煙から出る事ができ、秋津市の綺麗な空気を吸い込んだ。
爆発には巻き込まれたものの、コスチュームは無事───どうやら本当にエネルギーを外側に纏っていたようで、この技を私は"アサルトシェル"と命名した。
兄は空から降りてきた私に近づいて気遣った。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
その後、倉庫にいた小悪党たちは逮捕され、ロボットについては警察の方で解析しているようだ。
倉庫にはテクノマイトが積まれたコンテナがあり、これをどうするのかは分からずじまいだったが、ひとまず事件は幕を下ろしたようだった。
しかし、首謀者である筈のプロフェッサーJの逮捕には至らず、彼は次なる刺客をこの秋津市に───いや、私に送り込んでいた。
これからも不定期連載ですが、少しでも見ていただけたら嬉しいです。