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第18話:The Young Justice

 最終回です。

 十条現彦───彼は、私への愛を証明する様に、爆薬を積んだ小型の無人飛行機(ドローン)が目に見える各地に飛んでいき、何処の誰か分からない人達に死を送り届けていた。


「何故こんな事を・・・・・・?」


「えっ? それは君への好意であって───」


「どうしてこんな事を!?」


「・・・・・・君や誰かが戦っているのに、彼等・彼女等は安全な所から物を言い、それでお終い。

 もし君や誰かが命を落とそうとも、彼らは気にも留めない───寧ろ茶化すだけさ」


「でも、それは・・・・・・」


「対岸の火事とは正にその事さ。

しかも、この世には生きてちゃいけない人間(モノ)は山程いる。

 でも、全員を消す事は出来ないから、こうして君を貶している市民"様"を殺しているという訳さ」


 屋上からは燃え盛る街が見える。誰が死んで誰が傷付いているかは分からない、地獄のような光景だった。


「これはデモンストレーション───まだまだドローンは発射できるからね。

 なら今度は範囲(レンジ)を日本全土にしちゃおうか」


 そんな独り言を聞いてる内に、本格的な2波が訪れた。


 発射されていくドローンを見て、私の中には邪な気持ちが芽生えていた。




 私を誹謗中傷する人達は多い・・・・・・それは被害の有無に限らず、自分達が無事なのを当然に、"善良な"市民だと言う事を棚に上げて好き放題に物を言う───


「そんな奴らが死んだところ(生きている事)で、私に"()"なんてあるのかな?」



 損得の考えで人の命を軽く見ていると、産まれてから現在(いま)に至るまでの過程がファスト動画のように収縮され(まとまっ)ていく。

無音で白黒だが、その中で確かに思い出した言葉があった。


「私は自分の"信条"を貫きたい。

それが自分勝手な綺麗事(考え)であっても、私は・・・・・・後悔したくないんだ」


 私の信条───それは、正義の味方として、私としての───




 私は現彦くんの近くにある装置とそこから発射されるドローンにサウンドブラストを放つ。しかし、装置にはバリアが仕掛けられており、私はすぐドローンの撃墜に飛んだ。


 ドローンは無数の編隊を組んでおり、私はそこに突っ込んでいく。

 何十機、何百機───数えている暇など無い。

誰かが傷つく前に、誰かが死ぬ前に。


 また何処かが爆発する。

止めようとしても、何度も何度も選択を迫られる。


 悲痛と自分への怒りが混ざり合って、叫び声を上げながら再び無数の編隊へ突っ込む。

逃げたい、諦めたい───そんな心の叫びを無視して、私は身体中にエネルギーをチャージして、その場で爆発(放出)した。



 ───それからしばらく経った後、私は何処かの瓦礫の下へ埋まっていた。


 何故埋まっていたのかなど分からない・・・・・・ただ、背中に重いコンクリートがのしかかっているのが分かった。


 超人であったおかげか、大事には至らなかったものの、それでも苦しみはある。

何度も背中のコンクリートを退けようとするが、全然動く気配が無い・・・・・・

狭くて苦しい状況。

何処で起きているか分からないものの、爆音と誰かの叫びが私の頭の中で響く。


「・・・・・・お、おかぁさん・・・・・・おとぅさん・・・・・・おにぃぢゃん・・・・・・助けて・・・・・・

誰か助けてよぉ!!

お願い、誰か・・・・・・助けてよぅ・・・・・・」


 プライドも無く、ただ泣き叫んで助けを乞う私は、自分でも情けなかった。


 苦しい、辛い───そんな事、誰だって同じなのに。

同じなのに───



 それからどれぐらい経ったのだろうか───何人もの死傷者が出たのだろうか。


 私の涙は枯れ果ててしまった。

どうすれば良いのかもう分からずじまいで諦めそうになっていた。


 私のせいで大勢が死ぬ───それは紛れもない真実となる。

現彦くんを止められず、あの時に躊躇ってしまった時点でヒーロー失格だ。


 もう駄目だ。

 そう諦めていた時、瓦礫の外から声が聴こえてきた。


「───にいる筈なんだが・・・・・・」


「───さん、───なんですか?」


「まぁ、───の友人だ」


 私は知ってる声を聴き、声を出してみる。

 すると、瓦礫の外にいる人達あら反応があり、彼等は私にのしかかる重りをどかそうとしていた。


「───クソ、重機でもあれば・・・・・・」


 誰かが私を助けようとしているのに、私はこの中で諦めかけている。

それで良いのだろうか───いや、駄目だ。


 私は、正義の味方(ヒーロー)になると誓った───それなら、私は。


 一筋の光が差し込んだ時、私は再び両手を地面に付けて瓦礫を押し除けようとする。外での助けもあってか、やっと瓦礫が押し除けられ、私が出た頃には眩しい朝日と2人の男が出迎えた。


「大丈夫か───って、その顔まさか!?」


 そう、私を助けたのは藤堂さんと───兄の和也だった。


 兄・・・・・・お兄ちゃんは唖然としており、私がふと顔に触れると、そこからは肌が露出していた。


 その時に察したのだが、マスクは顔が見えてしまうぐらいに破損していたようで、顔半分でも知ってる人からすれば正体はバレバレだった。


「どういう事か説明を・・・・・・」


「お願い、今は時間が無いの。"奴"を止めないとまた大勢の人が死ぬ───これ以上、私のせいで犠牲を増やしたく無いの」


 私は兄にそう言った後、藤堂さんの方を向いた。


「藤堂さん・・・・・・目覚めて良かったです。

お怪我は?」


「まぁ、所々痛むが大丈夫だ。それより立花、本部がどうなってるか聞いてるか?」


「いえ・・・・・・聞いてません」


「そうか・・・・・・困ったな」


 私達の会話に付いて行けず、兄は腕を組みながら咳払いをし、私達を振り向かせた。


「・・・・・・で、どうする?

ミカ───レディブラストの方は今回の犯人を倒さないといけなくて、藤堂さんの方は、拠点が気になるんだろ?」


「だね・・・・・・私はこのコスチュームをなんとかしないと・・・・・・」


「替えのスーツは本部にあるが・・・・・・」


 東堂さんの言う替えのスーツとは隠密用と空戦用の事だろうが、本部があるのは御場原(ごばら)の方なので天崎より遠い・・・・・・それなら家に帰って"あの"コスチュームを着た方が早いかなと考えた。


「いえ、家に替えがあるので取ってきます」


「いいのか?」


「いいんです。これが最後の戦いになりそうなので・・・・・・」


「そうか・・・・・・行ってこい」


 しかし、私が空を飛ぼうとした瞬間、兄が再び声をかけて呼び止めた。


「もう! 説明は後にって───」


「違う! お前まさかお父さんとお母さんにその格好見せるのか?」


「あっ・・・・・・」


 よくよく考えるとコスチュームのままだった・・・・・・これは兄に感謝。



 私はマンションに戻り、荷物を撮りに行くと、現彦くんが住んでいた部屋は不気味な程片付いていた。


 彼の自室にもはいるが、そこは写真が消えたどころか照明も昼白色に変わっており、ここで見たものは幻覚(まぼろし)だったのかと思う程に綺麗さっぱりな状態になっていた。

 ・・・・・・って違う違う、そんな事よりもリュックを持っていかないと。


 リュックの上には置き手紙のように紙が一枚置いてあり、そこには


『贈り物を受け取った地で待ってる』


とだけ書かれていた。



 リュックを持って行き、私は車の中で着替える。顔の傷や汚れは隠しきれない為、仕方なくそのまま向かった。


 どうやら私を助ける前、目覚めた藤堂さんは病室を飛び出して、私に情報提供していた兄と共にこちらへ来たらしい。

・・・・・・走行中にドローンに襲われたようだけど、何とか振り切ったようだ。


「よく追跡を撒けましたね・・・・・・」


「この車に武器が入ってたおかげなのと、お前の兄さんが上手かったおかげだな」


「・・・・・・まぁ、ゲーセンでもそういう的当てはしてたし」


「お兄ちゃん、すご・・・・・・」


 兄は指で鼻を擦りながら照れ隠しをした。



 兄を警察署に降ろし、私は家から少し離れた所で降ろして貰う。その際に、お手軽な通信機を貰い、これで連絡を取り合う事にした。

 そして、私が家に帰ると両親(おや)が慌てていた。


「ミカ、どうしたのその顔!?」


「まぁ、色々あって」


「えらい落ち着いてるな・・・・・・とにかく逃げるぞ!」


「あっ、私後で行くから」


「そんな事言ってる場合!? 死ぬかもしれないのに!?」


「大丈夫───お母さん、お父さん。

私を信じて」


 私の言葉に対し、両親は渋い表情(かお)をした後、絶対に帰ってくるよう私に言った。



 私は破損したコスチュームを部屋に隠し、ベットの下に隠してあるダンボールからお手製コスチュームを取り出した。


 着てみるが腹回りがちょっとキツくなったかな・・・・・・?

 まぁ、戦ってる内にまた痩せるよね。



 部屋の窓から出て行った私は、親の乗った車が走っていくのを見守る。秋津市全体でサイレンが鳴り響く。これではまるで黙示録だ。

でも、この世の終わりには絶対させない。この私がいるのだから───



 煙上がる秋津市の空を飛び、私は未来科学センター跡を目指す。人助けをしない時点でヒーロー失格なのだが、この選択を後悔したくはなかった。


 私が飛んでいると、藤堂さんから通信が入る。どうやら彼は本部に着いたようで、ハッキングされて他のメンバーは今まで出られなかったようだ。


『───立花、そっちは今どうなってる?』


「今こっちはセンター跡へ向かってます!」


『了解、俺達も本部の周りに展開している武装ドローンを片付けた後、センター跡に向かう。それまでに絶対───』


「ええ、死にませんよ。

ただ、藤堂さん達も」


『───俺達は、この世界の秩序を守らないといけない。それまでくたばれるか。

藤堂、アウト───』


 通信が切れ、私はさらに加速して向かった。



 センター跡に着く私・・・・・・やはり静かだ。

まるで敵を歓迎してるぐらいに静か過ぎて怪しかった。


 センターのエントランスに入り、私は過去を思い出す。確か、爆発した装置はこの奥の大広間にある───あれだ。


 そう、爆発した装置というのはエントランスの奥にある大広間・・・・・・その中央にある装置だ。

名前は確か・・・・・・電磁増幅機だったかな。


 まぁ、重要な話じゃないから端折るけど、恐らくこの地下に居るんだろうなと思っていた。



 何処に地下への入り口があるか探していたところ、通信が入る。それは藤堂さんの声では無く、現彦くんの声だった。


『───やぁ、来てくれたんだね』


「・・・・・・当たり前よ」


『なんだか冷たいなぁ、僕のやった事がそんなに気に入らなかったかい?』


「・・・・・・それで、私を煽りに来たの?」


『違うよ、君を導くのさ。ミカちゃんは僕との決着を望んでいるでしょ?』


「・・・・・・そうよ」


『だったら、僕の言う通りにしなきゃ』


 ここは現彦くんを信じて、彼の言う通りに進む。エレベーターは動かない為、非常階段から進む事になるが、彼のいる場所は更に深い場所で、そのことをまだ知らない私は突き当たりにぶつかった。


 一見、何もないように見えたが、急に目の前の壁がウネウネと変化し始め、頑丈そうなゲートに変わった。


 ゲートの隣には電子ロックがあり、0から9までの番号キーから4桁のパスワードを打たないといけないようだ。


『ヒントは、"僕達が贈り物を授かった年"だ』


「ちょっとぉ、まだ私考えてる途中だったんだけど」


『ごめんね、でもそこで時間を無駄にしたくないでしょ?』


「それはそうだけど・・・・・・てか、それなら扉ぐらい開けなさいよ」


 そう言うと現彦くんは笑いながら通信を切る。私達が爆破事故に巻き込まれたのは小学5年生の頃だから───2018年だ。


 私は該当するキーを順番に押し、最後にエンターキーを叩くと承認されて扉が開いた。


 扉が開き、階段を下っていった先には研究室のような部屋があり、目の前には監視室のように大きなモニターがあった。


 簡易的なベッドもある為、恐らくここで寝泊まりしていたのだろう。机には資料や領収書、"何らかで使うような秘密道具(ガジェット)"、そして"在りし日の写真立て"があった。


「〔現彦くん・・・・・・〕」



 写真立てを見ている中、私は背後に気配を感じる。しかし振り向く時にはもう遅く、私は首を掴まれて持ち上げられた。


 私を襲ったのは白いコートを着た金髪(ブロンド)の長身男性・・・・・・サウンドブラストを放つが、衝撃を吸収してるのか全然びくともしなかった。


 私は首を掴んでいる方の腕に脚を絡ませて一気に重さを掛けて相手を横に投げ飛ばす。首は解放されたものの、相手は何の外傷もなく起き上がった。


 次にチャージした拳や足で殴り蹴りするが、少し傾くだけですぐに体勢を戻してしまう。まるで相手は未来からやってきた殺人サイボーグか闇堕ちした鋼鉄の男(スーパーマン)だ。

 ・・・・・・まぁ、髪の色が違うから私の知ってるのじゃないけど。


 私は男の首に両足を組み付けた後、全身の力で私の後ろ側へ叩きつける。その衝撃でそこにあったベッドは破損したが、もう使うこともないだろう。


 叩き付け、動かなくなったかなと思いきや、やはりまだ動く・・・・・・ここで時間と体力を使ってる場合じゃないのにと思いきや、男は気配を感じたように横を向く。すると、緑色の光線が彼に当たり、跪きながら消滅していった。


「───待ってたよ、ミカちゃん」


 後ろにいるのは現彦くんで、彼は謎の光線銃を持っていた。


「・・・・・・その銃で私の事も撃つの?」


「いや、君のことは撃たないよ。彼は用済みだけど」


「貴方・・・・・・他の人まで"駒"に───」


「駒だって?

───駒にしてたのは"彼等"の方だよ」


「どういう事・・・・・・?」


「───多分、信じ難いと思うし、僕のした事は当然、世間からしてみれば非道な人間だろう。

 まぁ、僕はさっきの奴等に脅されてた。"妹"の事を引き合いに出されてね」


「妹さんはまだ生きてるのね」


「まぁね・・・・・・当分会ってないけど」


「アイツらの正体は?」


「"異星人"だよ」


 現彦くんは、ハッキリと自分の雇い主の名を言った。

 彼曰く、その異星人達は地球よりも高度な技術と科学力を持っているようで・・・・・・まぁ、ここは当然なんだよね。

問題は彼等が何件かの事件で暗躍してた事と、現彦くんの妹を手中に収めてる事。


「自首する気は無いの?」


「まぁ、僕が素直に自首したところで気の晴れる話でしょ?」


「そうかもしれないけど・・・・・・出来れば貴方を殴りたくない」


「僕もそうしたいところだけど───」


 現彦くんが地面に何かを投げ付け、辺りを眩しく光らせた。


 視界を取り戻した私が辺りを見渡すと、現彦くんが消えており、私は呆れてしまった。


「・・・・・・何が何でも抵抗するのね」


 そんな事を言ってると、イヤホンから通信が入ってきた。


『僕は君が好きだ。だからこれからも君を傷付けようとする人を片っ端から消していくよ』


「私を好きなのは嬉しいけど、知ってた? 暴走する(ひと)は嫌われるのよ」


 私の言葉に彼は笑いながら隠し扉を開き、私を招いた。


 私が扉を抜けた先は殺風景な真っ白い大部屋で、体育館ぐらいの広さはある。しかしもの一つ置いてないのが謎だった。


 私が辺りをキョロキョロしていると、何処からともなく現彦くんの声が聞こえてきた。


『───ここはシミュレーションルーム。用途は名前の通りだから省くけど』


「へぇ、決着をつける(最後の戦い)には持って来いの場所ね」


『でしょ?

・・・・・・僕は君を殴りたくない、だから他のものに手を汚してもらうよ』


 私の後ろ左右から機関銃を装備した飛行ドローンが現れ、私に発砲したが、銃口から火を吹く前に避けてサウンドブラストで破壊した。


 不意打ちを仕掛けた2機のドローンを破壊した後、急に部屋の景色が変わり始め、真っ暗な空間になった。


 拳を握り、左足を引き、瞳を閉じてひと呼吸。そして───


 私は何も無い(くう)を殴り付ける。すると、殴りつけた所にドローンが現れ、その機体は壊れ落ちた。


 1機、2機、3機・・・・・・と場所を見抜いて破壊する。そして、10機目のドローンを破壊しようと機体を掴むが、そのドローンは急上昇していった。


 足が床から離れ、ドローンから手を離すとそこはビルの壁───くっついてるように私は立っていた。


 頭の中が混乱するような状況だが、現彦くんのドローンはそんな事などどうでもいいように私を攻撃してきた。


 機銃や空気砲、それに光線など・・・・・・風景や地形などの状況が変わりながらもドローンを破壊(こわ)していくが、このままじゃキリが無い・・・・・・これでは本体を永遠に攻撃出来なかった。


 ───そんな中、現彦くんは隙を見せる。それは些細な事だが、ある意味それが致命傷となった。


 私は一機のドローンをその場所に投げつけた後、サウンドブラストを撃ち込んで爆発させる。そして、煙の舞うその場所へ走って飛び上がった後、私は現彦くんの右頬に一発、チャージした左拳を喰らわせた。


 現彦くんが被っていたマスクの右半分が割れ、彼の肌に拳が触れる。

 そして、私の拳が現彦くんの頬を殴り抜け、彼はそのまま横へ吹き飛び、倒れた。



 私は現彦くんに近付き、馬乗りになって胸ぐらを掴み、もう一発殴る体勢をとる。彼は口の中が血だらけになっており、息も上がっていた。


「・・・・・・やれよ、それが正義の味方(ヒーロー)の務めだろ?」


 彼の言葉に対し、私の答えは決まっていた。


「ヒーローとして、貴方を殺さない───それが、どんなに後悔するような選択(こと)であっても」


 そう言った私は殴る体勢をやめ、現彦くんは驚いた表情をした後、笑みを浮かべて言った。


「・・・・・・負けたよ」


 その表情(かお)は、今までのとは別に、とても穏やかに見えた。



 私は現彦くんに肩を貸し、科学センターから出ていく。するとそこには枢木さんや藤堂さんをはじめとしたI.S.M.A.のエージェントや山内隊長率いる実働部隊の隊員が待ち構えており、彼等はこちらを眩しい光で照らした後、一斉に銃を構えた。


「待って、撃たないで!!」


 私が大声で周りにそう言うと、彼等は警戒を緩めて銃を下ろす。そして枢木さんがメガホンでこちらに話しかけた。


「未可矢さん、お疲れ様でした。

───十条現彦、貴方を複数の罪状にて身柄を拘束させて貰う」


 現彦くんは私に頷いて、私は彼の身柄をI.S.M.A.に引き渡そうとするその時だった。


 私が引き渡そうとしたその時、隣で何か不穏な気配を感じ取る。現彦くんの方を見ると、唇や目蓋を小刻みに震わせており、次第に掴んでいた手すら震え始めていた。


「・・・・・・は、早く、こ、殺す・・・・・・んだ」


 現彦くんの言葉が徐々に途切れ途切れになっていく。私は心配そうに声を掛けるが、彼は大声で叫び声を上げた。

───まるで、最後の抵抗すらままならなったように。


 そう、私達の背後をはじめとした周りには武装ドローンが展開し始め、私達に狙いを付ける。私は現彦くんを信じたかったのに、こんな状況になってしまい、頭が追いつかなくなっていた。



 その場にいた全員が窮地に陥る中、一発の銃声が鳴り響く。それと同時に展開していたドローンは一斉に地面へ落ちていき、現彦くんも地面に倒れた。


 現彦くんに駆け寄ると、彼の額には銃創が出来ており、その額からは血が流れていた。


 私が何度も声を掛けても応答はない───現彦くんが倒れた先を見ると、そこには藤堂さんが銃を構えており、銃口からは硝煙(けむり)が出ていた。


 藤堂さんは銃を下ろし、私は現彦くんを見る。

彼は許されざる事をした。

 そして私を含めた大勢の人間を危険に晒した、撃たれて当然だ。

 ───それなのに、私は彼の冷たくなった肌に雫を滴らせていた。



 その後、センター跡で起こった出来事はI.S.M.A.の方で処理すると言う事で、私は地元の救助に向かう。

瓦礫の中に閉じ込められた人や負傷して動けなくなった人を救助し、この混乱に乗じて悪さをする人達を懲らしめて。


 その途中、私は責められる事もあったが、1人の子供が言った言葉が、私の言葉に刺さった。


「ヒーローが助けに来なかった。

お父さんやお母さんが死んじゃ(いなくな)ったのに、どうして助けに来なかったの」


 私のいる世界は、ヒーローがメディアだけの存在ではない・・・・・・しかも、私は目の前の敵にしか集中せず、他の人の悲鳴を無視していた。


 ───自分の選択には後悔したくない。だが、私の心に刺さったこの言葉は、自分がどんなヒーローになるべきか分かった気がした。



 それから1ヶ月が経ち───街は元通りになっていた。


 復興にはレディブラストとして協力したが、私は授与される身じゃないとして式には参加しなかった。



 枢木さんが指揮を取っていたI.S.M.A.は、これを機に日本支部へ戻る事となった。


 理由はレディブラストの活動を一年通して観察し、安全だと判断したようだ。

 正直、寂しい感じもするけど・・・・・・I.S.M.A.から記念に従来のコスチューム貰ったからいっか。


 引っ越しを手伝ってる最中、私は藤堂さんに呼び出される。彼は私を見るや否や、ある事を思い出して申し訳ないような表情を浮かべた。


「呼び出してすまんな。あと、"あの件"に関しても・・・・・・」


「まだ引きずってるんですか?

・・・・・・あれは藤堂さんが悪いわけでは無いですよ」


 しかし、藤堂さんが引きずるのも当然の話で、危機的な状況だとはいえ、彼は子供に発砲したのだ。

 それで逆に引きずらないのは怖いかもね。


 藤堂さんと話している中、私はUSBを受け取る。どうやら現彦くんが着ていたコスチュームのバックルに入っていたようで、内容は藤堂さん達の方で見たようだ。



 私はUSBをノートパソコンに挿し、そのファイルを見る。そこには動画が一件だけあり、他の情報はI.S.M.A.の方で分析するとの事だった。



 その動画を再生すると、画面には椅子に座った現彦くんが現れ、彼はカメラ目線で話を始めた。


『───ミカちゃん、この動画をもし見ているのなら、僕は捕まったか死んでいるという事だろう・・・・・・だからこそ、ここで話をしたい』


 現彦くんは続け様に真実を話す。センターでの事故後、彼は家族と共に旅行へ向かう途中、あの異星人と遭遇し、両親を殺された。


 彼は妹と共に誘拐された後、異星人の実験に協力させられたようで、15歳の時に一時解放された。


 しかし、妹とは一緒にさせてくれず、彼はブロンド髪の長身男性───"ミスターブロンド"と呼ばれている地球人に変装した異星人の監視下で活動していた。


 その際にアメリカにいる親戚の元に住んでいたが、異星人は同じ事故に巻き込まれた被害者(わたし)達に興味を示したようで、彼はすぐ秋津市へ向かう事になった。


 時折現れるドローンは、現彦くんが操っていたもので、藤堂さん達が私の感謝に対してぎこちない返答だったのはそれが理由だった。


『───君の兄を負傷させたのも僕だ、それは謝る。

 だが、もし良ければだが・・・・・・僕の妹を助けてくれないだろうか? 座標は───』


 現彦くんは私に座標を伝えた後、動画を終わらせる。何とも都合の良い話だが・・・・・・妹に罪は無いだろう。



 この件を藤堂さん達に話すと、彼等はもう手を回しており、座標も特定済みだった。


 現彦くんの妹が囚われている場所は南極大陸───私も同行を志願すると、すぐに承認された。



 それから数日後───私はセンター跡に行く。十条現彦アツモリソウの花束を置き、ここへ二度と来る事はないだろうと、背を向けた。


 ───私は未来(あす)に向かって進む。

その先が茨の道であっても、自分の可能性を信じて。

 そして、矢のように正義を貫き通す存在として。


 


 


 


 


 





 

 





 






 



 

 




 

 





 



 



 エピローグもあるので、まだ閉じないで頂けると嬉しいです。

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