第15話:さらばレディブラスト
遅れてすみません、サブタイトルの通り打ち切りです。
ヒーローは人を殺さない───それが、止むを得ざる事であっても。
誰がこの言葉を言い始めたのかは分からない・・・だが、スーパーヒーローは人を殺さないのが今では当たり前だ。
───どうしてこんな話をするのかって?
・・・今回はそれに因んだ話だからだ。
3月初め───私はいつも通り橙子と一緒に登校して、普通通りの会話をしていた。
いつも通りの日常。刺激は無いが、それで良いと私は感じていた。
橙子と別れて帰路についた私が歩いていると、懐かしい人物と出会った。
「あ・・・」
顔が青白く、痩せているその男子高校生は、私とばったり出会すや否や、気まずそうな声を出した。
「あっ"知尚"くん、久しぶり!」
私が元気そうに挨拶すると、知尚くんもぎこちないものの笑顔で挨拶してくれた。
加古谷知尚───彼は、小学校の時からの同級生で、私と同じく"あの事故"に巻き込まれた1人だった。
そう言えばあの事故に巻き込まれた細かい内容がまだだったね。あの爆発事故には、巻き込まれた子供が"私含めて3人"いるんだ。
私と知尚くんとあと1人───"十条現彦"くんって肥満な子含めての3人。
報道が真実だとするなら、被害に遭ったのはこの3人だけだ。
久々の級友と会った事で、私はある事が気になっていた。それは能力発現の有無だった。
あの爆発事故に巻き込まれたのなら、彼も例外では無い筈───でも、この事実を知っているのはこの時点で私ぐらいだから、自然と訊くようにした。
私達は近くの公園にあるベンチへと座り、話を始めた。
「最近、どう?」
「どうって?」
「ほら、体の調子とか」
「ああ、僕は"いつも通り"だよ」
私は、この時の「いつも通り」という言葉に深い意味を求めず、安心する。しかし、答える時の表情が何か・・・引っ掛かった。
彼の中で何か思う所があったのか、一瞬、目を泳がせた気がする。
───しかし、ここで問い詰めるのも怪しまれるどころか、彼の地雷を踏みそうな気がしてならなかった。
「そうだ、レディブラストの事は追い掛けてる? ミカちゃんなら興味ありそうだし」
「うん、ご名答」
そこからは私の自画自賛タイム・・・とはいかず、レディブラストの話は持ち上げ過ぎず話した。
ちなみに知尚くんもヒーローものが好きで、それで小学校の頃は打ち解けていた。
・・・中学校の時からだろうか。その時にはあまり話さなくなり、彼自身も不登校気味になってしまった。
ただ、学ランの校章やボタンを見るに、中学校ではなく何処かの高校に入学したようだ。
ちゃんと高校に行っている事を知って、少し安心した私だが───何故か胸が騒ついていた。
何というべきか。知尚くんは笑顔で私と話しているものの、少し無理をしながら話しているように感じていた。
その後、私達は話を終えて別れる。再び帰路についた直後、I.S.M.A.から電話が掛かってきた。
『───かつての級友と会った気分はどうだ?』
「・・・それ、悪役ムーブですか? 藤堂さん」
『そんなつもりは無かったんだけどな・・・』
「しかも、今までの私の動向ずっと見てたんですか? まるでストーカーみたいですね!」
私がそう言うと、藤堂さんは動揺しているのか咳き込み、他の人の笑い声が聞こえた。
恐らく、周りに聞こえるようなモードにしていたんだろうか。
『───ストーカーはやめろストーカーは!』
「あはっ、すみませーん」
『ったく・・・お前も言うようになったな』
「ちなみに本題は何ですか?」
『ああ、本題に入るか───』
藤堂さん達は私を監視していたというより、会話相手である知尚くんを監視していたようで、その理由も私と同じ考えだった。
『───レディブラストが活動を開始し、I.S.M.A.がここに本部を設置してから、十条除くお前達2人の様子には目を光らせていた。
・・・だが、加古谷の方にはまだ影響が無いみたいだな』
「そっちからでも確認できるんですね」
『一応な。だが、学校生活とか家の中までは判らないからもしかしたら発現している可能性もある』
「まぁ、ですよね・・・」
流石にI.S.M.A.も人間だからか、四六時中の監視はできないのだろう。しかし、これは知らなきゃ良かった話かな・・・まるでディストピア世界の住民にでもなった気分だよ。
通話を終えて家に帰った私だが、何だか心が落ち着かない・・・今思うと、この不安は"ある事件"が起こると示していたのかもしれない。
それから何日か経った後の事───この日は雨で、雷注意報が出る程だった。
天気が悪くてどんよりしている中、一閃の光と激しい轟音と共に、部屋の電気が消えた。
「えっ、嘘、停電!?」
いきなりの停電に慌てふためくが、すぐに復電した。
その直後、藤堂さんから連絡が入った。
「もしもし、立花です」
『───立花、雨の日にすまんな。さっき停電があっただろ?』
「はい───何か知ってるんですか?」
『ああ、確定情報ではないのだが───』
───その話を聴き、私は現場に急行する。どうやら落雷と同時に特定の座標で"大きなエネルギー波"を検知したようで、それが街を停電させた原因と予想されていた。
現場に着いた私は、その場所を改めて確認する。特定の場所とは校舎の屋上で、そこは私の通ってる高校では無く、別の高校だった。
大きなエネルギー波が検知された割に、現場には大きな痕跡は残されておらず、本当にここなのかと目を疑った。
しかし、ここである物を見つける。衣服のボタン・・・それが学ランに付いているようなボタンだというのは容易に判った。
ただ、何故ここにボタンが落ちているのかは分からず、証拠としては不十分であった。
停電から3日ぐらい経ち、ニュースを見ているとそこには───
『停電のあった───日に、───高校に通う一名の男子生徒が行方不明になりました。
名前は"加古谷知尚"さんで、警察が捜索に当たっています』
「嘘、でしょ・・・」
ニュースを見た私は思わず手を震わせる。
あの停電は。
あのボタンは。
まるでピースが続々と見つかり、私の中ではパズルが完成してしまった。
呆然としている私に、I.S.M.A.本部から連絡が入る。その着信で我に返り、電話に出ると───
『立花、すまないが出動してくれ。"アストラル"と名乗る超人が市民を襲っている』
現場である駅前へ急行した私は、"変わり果てた姿であろう"知尚くんを見つけた。
身体は青く、体内は透けて見えるものの、血管のようなものが見えるだけで内臓は無い。髪は逆立ち、目は完全に生気など無かった。
知尚くんは抵抗する警察官はおろか、自身が邪魔だと判別した市民すら攻撃した。
彼から放たれる電撃は、火花を散らしながら被害を及ぼし、当たった人は麻痺しながら倒れていった。
知尚くんが向かう先には4人の男女───彼等も高校生のようで、まさかだと思い、私は知尚くんに声を掛けた。
「ねぇ!!」
知尚くんは振り向いて私を見るや否や、険しい表情から一転して、仲間を見つけたような表情となった。
「アア、レディブラスト=サン!!
貴女ダケガ仲間ダ!!」
まだ発展してない機械音声というべきか、そんな声を出しながら、私を仲間だと言った。
「それは嬉しいんだけど・・・もうやめない? これでは被害が増えるばかりよ」
「悪党ガ彼処ニ居ルノニ、見逃セト!?」
「あれはヴィランじゃなくて、普通の学生よ。だから───」
私が宥めようとするが・・・逆効果だった。
彼は激昂しながら私に叫んだ。
「何デ"オレ"ノ事ヲ解ッテクレナインダアァァァァ!!」
「待って"知尚"くん、話を───」
「オレノ名ハ、"アストラル"ダアァァァ!!」
知尚くんとしての人格はもう無いのか、彼はアストラルとして私に電撃を放ってきた。
直感のおかげで回避できたが、攻撃は止む事無く続いた。
電撃は数秒ほど追尾してくる事もあり、厄介だった。
私は片方のスティックをアストラルに投げ付けるものの、彼の身体は透過している為か、そのまま壁に当たり、私の元へと返ってきた。
「〔今の知尚くんは霊体・・・もしかして"あれ"なら!!〕」
私は返ってきたスティックを納めた後、再び放たれた電撃を回避してサウンドブラストをアストラルめがけて発射する。案の定、光線は彼に命中し、手応えのあるような反応を見せた。
普通よりさらに透け始めるアストラルだが、私が放ったもう一発を瞬間移動じみた能力で回避し、彼はショッピングモール・アーポにある液晶の近くに現れた。
アストラルは液晶に腕を入れ、何かを溜め込んだ後───駅前一帯の電気が全て停まった。
そして、彼の身体からは衝撃波が出て、周りを吹き飛ばした。
私も衝撃波に飛ばされそうになったが、何とかその場で耐え凌ぎ、宙へ飛んでチャージした拳をアストラルへお見舞いしようとした。
しかし、瞬間移動されてしまい、スカった私の隙を付いて電撃を放とうとした。
まぁ、それを間一髪で避ける私なのだが・・・電気を溜めたアストラルは最初の時よりも厄介な存在へと変わっていた。
瞬間移動で私を追い詰め、私も回避するので精一杯になっていった。
徐々にエネルギーを消耗していく私は、不意を突かれて電撃に当たった。
命中し、吹き飛ばされた私は、そのまま停めてあったバスにぶつかって道路に倒れる。立ち上がろうとしていたが、身体中が痺れていた。
体の麻痺によって手や足の感覚が無く、上手く立てない───痛くは無いのだが、痺れが体全体に回っていて、まともに動く事ができなかった。
「オ似合イダナ!! レディブラストハ正義ノ味方ジャナイ・・・悪党ダ!!」
まるでヴィランを倒し、優越感に浸っているアストラルに私は止めるよう忠告しようとするが・・・麻痺しているせいで口もまともに動かず、声も上手く出なかった。
万事休すかに思われたその時、スモークグレネードが何個か私の近くに投げられ、私の周りは煙に包まれた。
煙に包まれてキレるアストラルに対し、2機のドローンらしき影が、謎の光線を放って彼を攻撃した。
ドローンがアストラルと戦っている間、誰かが私の元へ駆け寄ってきた。
その人物は私を抱えると、その場を後に走っていき、離れた場所で私を下ろした。
麻痺する感覚の中、私は目の前にいる人物をどうにか視認しようとした。
───私を助けたその者は、"黒いマントを付けた騎士"のようだった。
その後、私は本部の医務室で目を覚ました。
「目覚めたね、具合はどう?」
「───あ、───」
全身の痺れは完治したものの、呂律が回らず普通に話す事が出来ない・・・竜田さんの名前を頑張って呼ぼうと何度か声を出していると───
「───たっ───たつ、た・・・たつたさん!!」
呂律がちゃんと戻った事で、竜田さんは驚いた後に嬉しそうな表情を見せた。
「良かった、呂律も回ったようね」
「はい! そういえばあの後って・・・」
「あぁ、あの後はね・・・」
竜田さんから教えて貰った話をまとめると、あの後私は救急隊員に変装したI.S.M.A.エージェントによりあの場から助け出されたようで、アストラルはあの場から姿を消したようだった。
そして───何より気になるのが、"あの場に煙幕を投げ、混乱させた人物"の存在である。どうやらI.S.M.A.の方では私が電撃に命中したと同時に全てのカメラ映像が遮断。
しかも、私のマスクにすらログが残っていなかった。
私は医務室から出て藤堂さんに会いに行き、彼に煙幕を焚き、ドローンでアストラルを攻撃した事について訊くが、まるで初耳だと言わんばかりの驚き方だった。
「こちらの方ではドローンは出ていない・・・実働部隊も位置についていたが、何故か"撤退"してきた」
「撤退・・・?」
「その件については私から話そう」
私と藤堂さんの会話に、山内隊長も加わった。
山内隊長曰く、レディブラストへのバックアップ要員として狙撃班や陽動班に分けてあの近くに居たようだが、本部からの"撤退命令"が出て、彼等は持ち場から離れざるを得ない状況になってしまったようだ。
その後、撤退命令に疑問を抱いた実働部隊は、本部に戻って藤堂さんや衣莉奈さんに問うが、彼等は身に覚えが無いどころか撤退していく実働部隊に対して何度も呼びかけたが、応答しなかったと返されたようだった。
情報が錯綜し、本部と現場で話が噛み合わない状況・・・最初は誰もがアストラルの能力によるものだと思っていたが、調べた時に"何者かが介入したような痕跡"が見つかった。
私はもしかしたらと思い、意識を失う直前に見た黒い騎士の人物について言おうとした瞬間───
「藤堂さん、大変です」
1人のオペレーターがこちらへ足早に来て、藤堂さんにある事を話す。それは私や山内隊長にも聴こえており、その話を聴いて私は驚愕した。
近くの控室にあるテレビを付け、ニュースを見るとそこには───
『駅前を襲った超人の正体は、行方不明になった"加古谷知尚"さんとされており、その時の映像が提供されました。
過激な為、見る時はご注意ください』
提供された映像では、私が駅前に到着してアストラルに話してから戦闘となる所が流されており、その時に私が「知尚くん」と呼んだ所もしっかり入っていた。
「削除申請は・・・」
「・・・もう遅い」
山内隊長の言う通り、今更削除申請をしても遅く、その映像はネット上にも広がった。
SNS上ではこの動画に対し様々な意見が交差しており、レディブラストが何故アストラルの名前を知っているのか疑っている声もあった。
ニュースを見た後、私は本部から離れて独自の情報網を頼る事にする。それは・・・
「体の調子はどう?」
「うおっ!?
・・・って、何だお前か、驚かすなよ」
「元気そうで何より」
そう、私の兄だ。
彼は事故に遭って入院していたが、今は現場に復帰している。
・・・って、何たる治癒力。
私は事情を話し、彼は私と再びポートタワーの駐車場へと向かった。
兄が言う話をまとめると、アストラル───知尚くんは、鬱病を患っていたようで、学校側からも休学を勧められていたものの、本人はそれでも向かっていたそうだった。
どうやら知尚くんの両親は自分の息子が"普通"では無くなる事を危惧していたようで、その為無理矢理にでも学校に行かせていたようだった。
虐待とかの傷跡は見られなかったものの、心の中の傷は多かっただろう・・・
警察が捜査を進めていく内に、明らかになった情報なのだが、どうやら"いじめ"を受けていた可能性が浮上しており、彼の所有物がゴミ箱に投げ捨てられていたという情報もあった。
しかし、周りはいじめが遭った事を知らないと言う人が多数で、中には『知尚くんも様子がおかしかった』と言う人も居たそうだ。
ここである考えに私は至る───それは、知尚くんがアストラルとなった時の一人称だ。
私の知っている知尚くんは"僕"だが、アストラルの時は"オレ"だった。
・・・まるで、凶暴な面が剥き出しになったようにと言うべきか。
それとも、私が対峙したアストラルこそが、知尚くんの真姿なのだろうか。
───私は知尚くんを知っていた訳じゃない、知った"フリ"をしていただけだったのかもしれない。
春休み前日となり、私は他の人が春休みに浮かれている中、気持ちが落ち着かなかった。
卒業式の日には運良く現れなかったものの、だからこそ怖い。もっと力を蓄えているのでは無いかと。
・・・しかもそれは当たっていた。
修了式の日は午前中に終わり、橙子と下校する中、私の直感が頭痛として知らせてきた。
「ちょっ!? ミカ、大丈夫!?」
突然頭を抱えて跪いた私を見て、橙子が焦って心配するが、私は大丈夫だと言い、その場を後にした。
「私、用事を思い出したから先、帰るね!」
「えっ、ちょっと!?
・・・気を付けてね」
私は橙子に見送られて、反応の方向へ向かう。コスチュームは制服の中に着ているから、リュックや制服を安全な場所に隠した。
宙を飛び、反応の強い方向に向かうとそこには高校があり、それは、知尚くんの通っていた学校だった。
ただもう後の祭りなようで、学校の周りにはパトカーや救急車が並んでいた。
屋上に着陸し、私は拳を強く握って自分の遅さを悔やむが、そんな時に通信が入った。
『───立花、アストラルはそこから海沿いの廃工場に潜伏していると衛星でキャッチした、エージェントや実働部隊も今そちらに向かっている』
「了解。藤堂さん、出来る事なら私1人で"彼"と対峙して宜しいでしょうか?」
『立花、言いたい事は解るが・・・』
「お願いします」
『・・・分かった、でもやられるなよ。
技研班がスーツを"強化"したが、それでも前とは変わらない』
「分かりました」
『あと、そちらに"蓄電池"を投下する。それまでに耐えてくれ』
藤堂さんの言う通り、スーツはアップグレードされている。しかし、それは絶縁素材を加えただけで、それ以外は特に変わってない。
ただ、アストラルには有効的だから延命としては妥当だった。
廃工場の窓から中を覗き、状況を確認する。内部にある柱には男女3人の高校生が縛り付けられており、1人の男子は拘束から開放されているものの、アストラルから制裁を喰らっていた。
私は屋根へと上がり、通気口から中へと潜入し、アストラルが気付いてない所で、彼の名前を叫んだ。
「アストラル───!!」
名前を呼ぶと、こちらに気付いたアストラルが私を睨みつける。それと同時に電撃で浮かせていた男子生徒を降ろした。
「来タナ・・・ヴィラン!!」
「そうね・・・貴方から見れば私はヴィランかもしれない。
───でも、私には貴方を止めなくちゃいけない理由があるの」
「偽物ノヒーローメ・・・!」
「流石に受け入れてくれないよね───!」
電撃が私を追いかけてくる。それと同時にアストラルも放った電撃と同時に瞬間移動して追いかけて来た。
流石に向こうも強化されており、初戦の時よりも私を追い詰めて来た。
電撃に命中こそするものの、絶縁のおかげで痺れる事は無く、まだまだ戦える状態だった。
チャージで殴り飛ばすものの、全然効いてる感じがしない・・・指からビリビリと電気を発生させた後、周りの物を浮かせて自身に纏わり付かせた。
電磁力とでも言うべきか、浮き上がった物のせいでサウンドブラストを撃ってもアストラルには至らず、私は飛ばされた物にぶつかっていった。
当りどころが悪く、口から涎と共に血が出て来る。あまりにも痛くて泣きそうだ。
ただ、ここで諦める訳にはいかない───絶対に彼を止めなきゃいけなかった。
でも、どうやって戦う?
───体力の消耗を狙う?
それとも、玉砕覚悟でアサルトシェル使う?
───どちらにせよ、私の方が先に落ちてしまうのは確定だった。
どちらかが折れるまでの持久戦に挑もうとしたその時───"あの人物"が再び現れた。
アストラルの周りを固めているガラクタのあちこちに小さい何かが張り付く。それは赤く点滅しており、その後爆発した。
瓦礫が爆発した後、その音に反応したアストラルが防御を崩した。
「誰ダ・・・!?」
その声に反応し、私の前に降りて来たのは黒いマントの人物だった。
騎士の鎧に思えるスーツの人物を見て、アストラルは激昂した。
「ヴィラン共ガ・・・!!」
怒り狂うアストラルは雷撃を喰らわせようとするが、私とその人物は交差するように回避した。
「あなた、名前はなんて・・・?」
「───"クロウナイト"」
クロウナイトと呼ばれる人物は、マントを翻してアストラルの方に走る。そして、彼の上に向けてワイヤーガンを撃ち込むと、そのまま急接近し、一発殴り付けた。
ワイヤーを収め、着地したクロウナイトは、まるで時間稼ぎをしてくれるかのように戦う。
超能力者には見えないものの、その動きは超人と張り合える程だった。
思わぬ共闘が起きている中、私にある通信が入った。
『立花、今上から"蓄電池"を投下する! 場所はお前のいる場所だから避けろ!!」
私はその通信を聴き、すぐに別の方向へ避ける。すると、小型のコンテナが先程いた場所に落ち、そのコンテナが解放された。
蓄電池───"十条エンタープライズ"で生産・販売されているもので、これにアストラルを閉じ込める戦法だった。
蓄電池を見たクロウナイトは煙幕を張ってアストラルの視界を奪う。彼の目が奪われている内にケーブルを引っ張り、それの先端を額に付ける。
蓄電池ケーブルの先端を付けられたアストラルは、叫び声を上げながら蓄電池に吸収されていった。
煙が晴れると、そこにはもうクロウナイトの姿はなかった。
私が不思議そうにしていると、蓄電池からアストラルの声が聞こえてきた。
『フザケルナアァァァァァッ!!』
「知尚くん聴いて、私は貴方を元にもど───」
『オレハ誰ニモ馬鹿ニサレナイ力ヲ手ニ入レタンダ!!』
「知尚くんお願い、私は───」
『ドウセ誰モ解ッテクレナイ、アイツラハ死ヌベキ奴等ダ!! 見テ見ヌフリシテキタ奴等モ、ミンナブッ殺シテヤル!!』
アストラルを入れた蓄電池はビリビリと電流が流れ始め、今にも爆発しそうな雰囲気だった。
「ヤバいよ!」
「レディブラスト、何とかしてよ!! "ヒーロー"なんでしょ!?」
縛られていた生徒が私にそう言う。友達を救いたい気持ちとヒーローとして正しい事をしなくてはいけない気持ちが頭の中で錯綜し、その焦りから私は───
蓄電池を持ち上げ、私は海の方を向く。中にいるアストラルは憎悪で埋め尽くされていた。
『偽善者ノ立花モ、"裏切リヤガッタ十条"モ、ミンナ死ネ!! クズハミンナ死ネ、死ネ、死ネ、シネ、シネ───』
私は精一杯の力で蓄電池を海に向けて投げた。
蓄電池からはアストラルの悲痛な断末魔が聴こえた。
海に落ちた蓄電池は水中で爆発を起こし、水飛沫を上げる。海水は電気を分解する為、流石の彼も復活する事は出来なかった。
「アストラル撃破、オーバー・・・」
私は通信機を切り、その場に座り込んだ。
人を殺した。
ヒーローとしてあるべき行為では無いのに。私は殺した。
この手で、友達を殺した。
本当に友達なのか? 自分で思っているだけでは?
偽善者、人殺し。
───視界がだんだん揺らぎ始める。口が震え、目からは涙が滴り落ちる。私が殺した、わたしが殺した、わたしがころした。
「あ・・・あぁ・・・あ───」
わたしの中で糸が切れる。自分を保っていた筈の糸が切れたのか、股にじんわりとした温かい感触があった。
───言葉にならない程の慟哭が廃工場内に響き渡る。
・・・発狂にも近いその叫びは、本当の悪を裁けない自分への絶望でもあった。
その後、助け出された4人の生徒はレディブラストを褒め称えるが、それと同時にいじめは完全に揉み消されてしまった。
打ち切りというのは冗談で、後3話続きます。




