第11話:Masquerade of the dawn
遅くなりましたが、少しでも見て頂けると嬉しいです。
人は誰しも仮面を付けている───仮面の奥に潜む素顔が美しいか醜いかは自分次第だ。
そんな訳で真夜中───私は謎のコンビに襲われている・・・とは言うものの、私が先に仕掛けたのだが。
1人は大きな身体で私より倍以上もある人物で、もう1人は、その大きな人物の肩に乗って優雅に傘を差しており、日も差してない雨も降ってない時間帯だから尚更イミフだ。
「・・・キャラ付けにしては、場違いじゃない?」
そんな軽口を叩いていると、可愛らしい美少女声で私に返答した。
「ふふ、貴女って面白い人ね。良いわ───"お兄様"、叩き潰して」
お姫様からの残酷な命令が下された騎士はそれに従い、悪魔を討つ───その悪魔は私だ。
確かに二本角が生えているし、コスチュームのモデルが地元の妖怪だから仕方ないけど・・・私が悪魔? "秋津市の悪魔"とでも名乗ろうかな。
まぁ、そんな冗談はさておいて、"お兄様"と呼ばれている巨体のバーサーカーは、返事をする様に悍ましい息遣いをしながら、私に向かって襲い掛かる。しかも激しい動きをしながらも肩から落っこちず、動じないあの娘は本当に人間?
巨大なメイスを私へと振るい、それを避ける。避け切った私は反撃にサウンドブラストを放つ。しかし、威力が弱かったのか、びくともしない。
それなら、肩に座ってるあのお嬢様に攻撃・・・と言いたいところだが、そもそも攻撃が届かないどころか、その子を守る奴が素早く回避してしまうのだ。見た目に対して器用過ぎない?
隙を突かれた私はメイスで腹部を殴打され、その衝撃で吹き飛ばされた後、車にぶつかる。幸いまだ疲労は溜まり切ってないおかげで惨事にはならずに済んだものの・・・それでもダメージはあり、吐血してしまった。
全身骨折に火傷などを経験しているせいか日に日に慣れてしまっている私は、痛がって涙目にはなっても、まだ相手を定められる。
しかし、立ち上がると同時に敵は間合いを詰め始め───私は咄嗟に横へ転がり、ソイツの攻撃は空振りした。
正直、横振りだったらまた吹き飛ばされる所だったが、マジで危機一髪・・・縦振りで良かったけど、私がぶつかったあの車は完全にお釈迦になった。
車買った人には申し訳ないとは思いつつ、私は目の前の敵に集中する。クスクスと控えめながらも小馬鹿にしている様な笑い声と私に向かって鼻息や荒い息遣いをする大男・・・ヴェンジェンスよりは少し小さく感じるが、威圧感は同じだ。
腕を左右に伸ばし、少し姿勢を低くして態勢を変える。これは私が敵との間合いを慎重に取るための体勢で、特撮ヒーローがよくやるあの動きだ。
敵と睨み合いながら間合いを取るこの駆け引き・・・極度の緊張によるストレスのせいで堪らなく胃が痛くなるが、それを我慢しながらも相手を眼中に捉え続けた。
しかし、肩に座っている人物が手を2回叩き、大柄の人物はメイスの打撃部分を道路の上につけた。
「はいはい、これでお終い。行きましょう、お兄様」
「まっ、待て───!!」
「私、暇ではないので」
そう言ってそのコンビは暗闇の中に消えていく。私も後を追おうとしたが、気付いた頃には見失っていた。
「私と戦っている時点で暇じゃん・・・」
それから次の日───私は本部で話を聞いていた。
「今回集まって貰ったのには他でも無い。今日の1時頃に現れた2人組についてだ」
藤堂さんの話によると、肩に乗っていた少女の名前は、"鐸宮セリス"、日本で古くからある鐸宮財閥の令嬢で、日本とスウェーデンのハーフである美少女・・・しかも何処かとは言わないが、私より大きい。
って、これじゃあ変態みたいな言い方だ・・・そこは忘れてね。しかもこの娘、15歳で現当主してるからとんでもない。
表向きは投資家らしいが、裏では犯罪に手を染めているようで、その時の名前は"プリンセス・マスカレード"・・・仮面の姫君なんて洒落た名前。
そうなると彼女を肩に乗せて戦ってた鎧のアイツは何だよって話になるんだけど・・・それは後ほど。
ちなみに私も参加する羽目になっているが・・・レディブラストのコスチュームを持っていくのは危険だと判断された・・・しかし、その代わりステルス特化のスーツを渡された。
「立花、この時だけお前はレディブラストじゃなくなる。コールサインは───」
「はいはーい!! 私"ナイトバード"と名乗りまーす!!」
この時、会議室は一気に静寂な雰囲気に包まれる。まるでクラスとかでギャグが滑ったみたいな感じでやらかしたよ・・・ただ、他の人も私の事を察しているのかスルーして話を進めた。
「立花、ならお前はそれで良い。この会議が終わったら柚宮からスーツを貰ってこい」
「は、はい・・・」
そして会議が終わり───私はナイトバード用のスーツを貰いに研究室へ来ていた。
どうしてナイトバードか・・・これはステルス特化型のスーツだと言う事でというよりかは、レディブラストの名義が商標登録されていた時の為の名義として考えていた。
しかも、ナイトバードって良くない? だって夜鳥だよ夜鳥・・・ってそれだけならカッコ良くないか。
柚宮さん達が作ったステルス特化のスーツは全身タイツと見間違えるぐらいに黒く、マスクも、いつものスーツと違って顔全体を覆う目出し帽だ。
パッと見、忍者っぽく感じるこのコスチューム・・・マスクにはバイザーがあり、それを目元へ倒すと、暗視やサーモビジョンが使える仕様だ。
「そのスーツ、隠密行動には適してるけど、衝撃吸収機能は無いからそこは気を付けて」
柚宮さんは淡々と言い放ち、私は頭を下げて感謝した後、家に帰って行った。
任務を引き受けたのだが、実は任務当日・・・修学旅行の真っ只中だ。だから予定のどれかは潰れるだろうなとげんなりしていたが、"舞踏会"が始まるのはどうやら3日目の0時・・・まぁ、3日目が一番パッと来ないから良いけど。
そして修学旅行当日───ちなみにここは端折るね。ちなみに言うと楽しかったよ、修学旅行。大阪、京都なんて初めて行ったよ・・・
そして2日目・・・私は橙子と2人で寝ていた。
橙子、他にも友達いる筈なのになんで私選んだんだろう・・・とは思ったけど、居心地悪くないから良し。
まぁ、橙子は先生の見回りが終わった後に友達の部屋へ遊びに行っちゃうから、私とじゃない方が良かったのではとなってしまう。まぁ、今の私としては好都合だ。
私は、橙子に倣って自分が毛布に包まって寝ているよう細工をし、窓から出て行く。流石に勘違いされそうなので、窓は閉めていった。
空を飛び、指定された場所へ・・・そこに来ると、なんとアルヴァンさんがいた。
「あっ、すみません。遅くなりました・・・」
「いや、謝るのは俺達の方だ。折角の学校行事、台無しにして悪いな」
「いえいえ。私、正義の味方なので」
私が笑顔でそう言うと、アルヴァンさんも笑みを浮かべてくれた・・・嬉しい!
そして任務開始───招待状は何処からかこしらえて来たようで、一応大丈夫そうだった。
パーティは洋風のお城でやるようで、参加者は仮面を付けるのが決まりとなっている。普通なら私も華やかなドレスを着ているのだが───
「私・・・似合ってますか?」
「ああ、まるで男装の麗人みたいだ」
そう・・・タキシードだ。しかも髪をオールバックにしており、アルヴァンさんとは親子の設定・・・私これでもレディなんだけど・・・褒められたからヨシ。
金属探知機などで検身されるものの、何とかそれを突破・・・そして、会場へ入った。
会場に着くと、正装した多くの人がおり、様々な仮面を付けていた。
恰幅のいいおじさんから若いイケメンまで、姑みたいなおばさんから色気のある若い美女まで・・・本当にこれ何の集まり?
おまけに警備員や執事、メイドも仮面付けてるし・・・何なら裏方のコックさん達も付けてるよ。
私は父親にくっつくようにアルヴァンさんの近くに寄り、キョドるように周りを見る───やはりここは華やかそうな見た目と違い、怪しい。何がとは言えないが、とにかく怪しかった。
そしてパーティが始まり、中央の階段からは"衛兵"を引き連れたお姫様が現れた。
妖しい紫色のドレスに、ゴスロリでよくあるボンネットって帽子を被っており、そして更には蝶の形みたいな仮面・・・あの娘だ。紫色の綺麗な長い髪からはいい匂いがするんだろうなぁ・・・と思うと妬ましい。
そして姫君のスピーチが終わり、食事会へ・・・ちなみに中央では舞踏会が行われており、私達はただ眺めていた。
「お飲み物は如何ですか?」
近くに来た執事にそう訊かれて、私はふざけてある事を言った。
「ああ、なら───ウォッカマティーニ、ステアではなくシェイクで」
「ああ、息子にはオレンジジュースをやってくれ、それで良いな?」
「えっ!? あっ、はい・・・」
ドヤ顔で決めた私の決め台詞をスルーしてアルヴァンさんはオレンジジュースを頼む。一度言ってみたかった言葉だが、今言う必要は無かった。
そんな黒歴史を作りながらも私は、食事を楽しむ。そんな中、アルヴァンさんはターゲットに接触する為、踊りに誘おうとしていた。
どうやら、姫君も面食いだったのか、彼女はアルヴァンさんの手を取って踊り始める。あー私もアルヴァンさんと踊りたかったなー!!
しかし私、社交ダンスなんて踊った事も無く、しかも運動神経クソザコだから、すぐ駄目そうだけど・・・ああ、お腹痛い。
ちなみにこの時、自棄になってオレンジジュースを飲みまくったせいで尿意が・・・しかも男装してるから女子トイレに入ったら一瞬でバレそうだし・・・仕方ない、個室使わせてもらうか。
私はトイレの場所を訊いてお花を摘みに行った・・・幸い、トイレは水洗式だったから一安心。私、和式苦手なのよ。
トイレと手洗いを済ませた私が戻ろうと歩いていると、談話室の本棚の間から出て来た人物が・・・しかも、彼が出て来た後、一冊の本を棚に戻すと、同時に本棚がスライドした。
まるで隠し通路のようで、私はその人物が出て行った後、同じ様な事をする。すると、同じ様に本棚がスライドして隠し通路が現れた。
そして内部へ・・・中は暗いと思いきや、薄明かりが自動でつく仕組みとなっており、視界は確保できた。しかしこの場所と繋がっていたのは───
「嘘・・・コイツは・・・」
そこにいたのは、秋津市で私と戦った大柄の人物で、その両手両足には手枷が付けられ、身体には鎖が巻かれていた。
大の字で動きを封じられているが、正直いつ動き出すか分からない・・・そもそも鎧といい、兜のバイザーといい、どういう思考でこんなクリーチャーが出来上がるんだろう。
私は一先ずコイツをスルーして、向かいにある部屋へと入る。そこはどうやら書斎のようで、中央の机には日記とプロジェクターが置かれていた。
気になって日記を読む───それは鐸宮セリスの書いた日記のようで、彼女には"兄"がいたようだ。
しかし、その兄は彼女をいやらしい目で見ていたようで、まぁ所謂女の敵・・・正直言って反吐が出そうなゲス野郎だ。
どうやらセクハラまがい・・・いやそれ以上の事をしていたようだが、そんな事をされても彼女はそんな兄を愛していたようだ。
そして私は興味本位でプロジェクターの電源を入れる。するとそこには───
『───これからお兄様を騎士にします。では、お願い』
『おい、止めろ・・・なぁ!!』
彼女が慕うお兄様の首に注射針が刺さり、何らかの液体を血管に流し込まれる。すると、画面がカットされたように切り替わって部屋の外へ───内部にいるお兄様の肉体は内部で爆発したかのように膨らみ、強引に身体を伸ばされているのか歪な動きまでし始めた。
苦痛に泣き叫ぶ声、そしてそのグロテスクな光景を嬉しそうに微笑むセリス───私は一連のショッキングな映像に心が耐えきれず、私はその場で吐いてしまった。
「〔・・・これが人間のやる事なの・・・!?〕」
あのお姫様は、お兄様のやった事で狂い、理想のお兄様を作り上げたのかもしれない・・・それだけなら悲劇のヒロインで済ませる事は出来たかもしれないのに───
怪物───彼女をそう形容するしか無かった。
その後私はこの隠し部屋から出て行く。幸い、お兄さまだったものは意識を失っているが、今はお姫様の忠実な騎士。いつ起きてくるかは彼女次第かもしれない。
周りを警戒しながら歩くものの、どうも様子がおかしい・・・急に人の気配がなくなったみたいだ。
不安な気持ちになりながら通路を進むと同時に背後から気配を感じた───研ぎ澄まして聴くと、二重の足音が聴こえることから2人ぐらいの人がこちらへと近付いて来ていた。
私は左腕をチャージし、後ろを振り向くとそこには───案の定、スーツを2人の男がいた。
しかし、その2人は直立不動のままで、警戒を解けなかった私がすり足で後ろに下がると、男達はこちら側に倒れた。
驚いた私は戦闘態勢に入るが、倒れた彼等の後ろから1人の料理人が銃を下ろして歩いて来た。
「大丈夫かい?」
「えっ?」となっていた私にそのコックは帽子と仮面を外す。その正体は岸田さんだった。
「岸田さん!」
「シーッ・・・奴らにバレる。僕に付いて来て」
私は同じく潜り込んでいた彼に付いて行き、物置部屋へと入る。そこにはメイド服を着た美咲さんや少しボロボロになっているアルヴァンさん、そして厳重に縛り上げられ、仮面を外された姫様がいた。
「美咲さん、メイド服似合ってますね」
「本当? ありがとう」
「いえ・・・それよりアルヴァンさん、その傷どうしたんですか?」
「大丈夫だ、すぐ治る」
その言葉通り、頬や身体にできた傷口は瞬く間に塞がる。その光景に驚くべきなのか安心すべきなのか・・・ちょっと複雑だった。
「心配してる所悪いんだけど、未可矢さん・・・吐いた?」
「えっ、まぁ・・・」
美咲さんはアルヴァンさんを見るが、彼が首を横に振った為、もう一度私の方を見た。
「実は・・・」
私は談話室にある隠し部屋の事とそこに隠されていた醜い───いや、歪んだ真実を話した。
「それは・・・吐いても仕方ないわね」
アルヴァンさんは縛られたセリスへと近付き、口に噛ませていた猿轡を下げた。
「どういう事か説明してもらおうじゃないか、お姫様?」
彼から睨み付けられられるが、やはり頭か心のネジが一本外れているのか、彼女は悪びれず無邪気に笑った。
「私はお兄様をあるべき役割に戻しただけですわ」
「あるべき役割・・・!? あんな事、人間がやる事じゃない!!」
「なら、あなたはどうなの? あなたの家族は? みんな仮面を付けているのよ。私はお兄様の仮面を外してあげただけ───」
「あれの何処が!? 確かに貴方のお兄様は元々ゲス野郎だったかもしれないけど、だからってあんな事が許される訳ないじゃない!!」
「ナイトバード、落ち着け・・・」
カチンと来てしまった私をアルヴァンさんは落ち着かせる。そして彼はターゲットに猿轡と目隠しをした。
「この娘はテラーゲート刑務所に送る。少年法で守らせてたまるものか」
「でも・・・此処からどうやって逃げるの?」
「この部屋の外は姫様の操り人形で溢れかえってるっすよ」
3人の話が理解出来ずに私が分からない旨を伝えると、アルヴァンさんはちゃんと解説してくれた。
どうやら鐸宮セリス───又の名をプリンセス・マスカレードの能力は仮面を付けた相手を操る能力で、私を含めた4人の仮面には予め細工をしていたおかげで操られずに済んだようだ・・・尚、操られている時は仮面を外さなくなるどころかくっついているようなので、仮面の姫君恐るべし・・・
ちなみに作戦は決まり、私とアルヴァンさんで城内にいる操られた人達を無力化。岸田さんと美咲さんでターゲットを運ぶようだ。
「ナイトバード、行けるか?」
「はい、勿論───」
私は蝶ネクタイを外してタキシードの胸元を開けると───そこにはナイトバードのコスチューム・・・これ一回やってみたかったのよね!!
では作戦開始・・・私は日々の訓練の成果を見せつけるように1人ずつステルスで撃退していく。運動音痴だった筈の私がここまで強くなるなんて・・・まるでラノベみたい。
しかし、相手は一筋縄ではいかず・・・どう見ても失神する程の攻撃を与えたというのにも関わらず起き上がる・・・まるでゾンビだ。
ただ、このまま過剰に攻撃するのもマズいので、取り敢えず引き付けながら戦う事に・・・何処かにマインドコントロール装置でもあるのかと考えているが、そんな物が何処にあるか───
『───聴こえるか未可矢』
マスクの通信機に誰かがこちらに声を掛ける。その声は藤堂さんっぽく、私はすぐ応答した。
「聴こえますよ、どうしましたか?」
『彼等を操っている装置はセリスの部屋にある───彼女の部屋は2階だ』
「えっ!? 2階って言われても分かりませんよ〜!」
『俺が案内する───』
そう言われた私は彼の指示に従ってセリスの部屋まで一直線に走る。道中襲って来る人達はいるものの、軽やかな動きで退けた。
目的の部屋に辿り着いた私は、華やかで可愛らしい感じの部屋とは不釣り合いの装置を発見し、腕にチャージして殴り付けた。
装置を壊し、私は彼に感謝しようとするが、電波でも悪いのか通信できなくなっていた。
因みに装置を壊したおかげで、操られた人達はバタバタと倒れており、囲まれていたアルヴァンさんも危機からは脱せたようだ。
城から出て、お姫様を連れ去ろうとしていたところ───中央にある噴水が水を止め、半分に分かれる。そして、その裂け目からはアイツが飛び出して来た。
お兄様───姫君の忠実な騎士だ。私はコイツを"狂暴な騎士"と呼ぶ事にする・・・名前ダサいって言った人、後でサウンドブラストの刑ね。
───まぁ、それはどうでもよくて、車から刀を取り出したアルヴァンさんは私と一緒に目の前のヴィランと戦う。そもそも私達の目的は鐸宮セリスを連行する事で、コイツの事は正直どうでもいい。しかし、コイツが独りでに人気のある場所で暴れるなら話は別だ。
姫君を乗せた車は発進し、騎士は後を追おうとするものの、アルヴァンさんが目の前に立ち塞がり、刀で皮膚を斬りつけた。
しかし、切創は瞬く間に塞がり、バーサクナイトは自身の武器であるメイスをアルヴァンさん向けて振る。しかし彼は持ち前の身体能力で騎士の攻撃をすんなりと回避した。
一方で私の方はチャージによるパンチやキックで応戦するものの、やはり効いてる感触がない・・・この騎士の肉体に攻撃を当てても相殺されているような感覚だ。
私は振り下ろされるメイスを後ろに下がって退けた後、そこから登って奴の顔の近くへ・・・そして顎に宙返り蹴りを繰り出して、相手を怯ませた。
同じ頃にアルヴァンさんは股の間をスライディングで通過した後、奴のアキレス腱を斬って足を止めた。
だが、その傷も治癒されてしまい、数秒もしない内にまた動き始める。しかも、アルヴァンさんが吹き飛ばされてしまい、私は彼の元へ駆け寄った。
「アルヴァンさん!!」
「うっ・・・油断した・・・」
彼の口からは血を吐いており、右腕は骨折・・・正直もう戦える状態では無かった。
背後からはこちらに走ってくるバーサクナイト・・・アルヴァンさんに肩を貸して空を飛ぶのも可能だが、もう間に合わない───それなら、私は───
私は両腕を構えてサウンドブラストを放つ。出力を上げ、寄せ付けないように───
相手は光線の勢いに耐えるものの、私だって一歩も引けない───体勢が崩れないよう踏ん張り、出来るだけ───これでもかと言う程に出力を上げた。
ただ、この出力は強過ぎて、足が地面にヒビを入れ、視界には靄がかかり始める───どっちが倒れるのが先か、それは予想出来なかった。
私の意識が途絶えそうになるが、その前にバーサクナイトが勢いに負けて吹き飛ばされ、近くの木々にぶつかってそのまま意識を失った。
その後、I.S.M.A.の実働隊が現れ、彼等は周囲の状況を確認して、城内へと入っていく。そして、現場の指揮を取っている隊長のような人物がこちらに駆け寄って来た。
「アルヴァンさん、レディブラストさん、ご無事でしょうか?」
座り込んだ私は頷き、その指揮官は笑顔を見せた。
「プリンセス・マスカレードを連行したエージェントの方々から聞きました。お疲れ様です───」
彼は衛生兵を呼び、私達の手当てをしようとするが、私は即座に断った。
「アルヴァンさんだけお願いします、私は大丈夫なので・・・」
「待ってくだ───」
私には余裕が無い───コスチューム姿のまま空を飛んで、ホテルへと戻って行った。
そして黎明頃となり───ホテルの自室に私はまっすぐ風呂へと入る。鏡にはアザだらけの私が映っており、そんな自分を見て涙が出てきた。
どうしてこんな事をしているんだろう───私はふと、心の中でそう呟いてしまった。
シャワーの水滴と共に涙は落ちていく。戦いで付いた汚れはすぐに消える。しかし、戦いによる傷だけは、何度洗っても落ちる事はなかった。
コスチュームを袋の中に入れ、制服に着替える。前より髪も伸びているせいか、顔にアザが付いても見える事はないだろう。
私がバスルームから出ると、投稿は身体を伸ばしてあくびをしていた。
「あっミカ、おはよう───って、早くない?」
「あはは、早く起きちゃった・・・」
「嘘!? 私イビキかいてた?」
橙子は心配そうに訊いてきたが、私は首を横に振って彼女を安心させた。
それから修学旅行最終日───この日は自分の意識を保つのに必死で、まともに楽しめなかった。
気を緩ませれば崩れ落ちそうになる不安と戦いに勝った私は飛行機で帰る。学校生活で最高の思い出となる筈だった修学旅行が、私が始めた事により崩れ去った気がする・・・
飛行機に乗る最中、私は窓を眺めている橙子の肩に頭を乗せ、深い眠りに付いた。
───人は皆、仮面を被っている。現在の私にとって、仮面を付けている自分と仮面を付けていない自分、どちらが本物なのか、知る由も無かった・・・
次は12月〜年越し以降です。間に合わせるようにします。




