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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【お試し版】吸血鬼になった悪役令嬢による闇の英雄譚~婚約破棄されたので魔王の力で王子に復讐して人類支配も目指すダークヒロイン、邪魔をする勇者と聖女を倒しに行く~

「オプトゼチ! お前との婚約は破棄する!」


 王子からとんでもない事を言われた。

 私がただただ震えていると、さらに恐ろしい言葉を投げつけられた。


「お前は死刑だ。連れていけ」


 部下の兵士たちに囲まれる。

 混乱する頭を落ち着かせると、私はようやく喋る事が出来た。


「い、意味がわかりません。な、なぜこのような目に合わねばいけないのですか?」


「ふん、とぼけるなよ。お前が父上の暗殺を企んでいるのは知っているんだ」


 ――!?

 何だそれ?

 全く身に覚えがない。


「終わりだ。裏庭で首をはねろ。全くあの聖女を少しは見習えばいいものを」


 またあの平民女の話か!

 周りにいた紳士淑女はみなクスクスと笑っている。

 何もパーティー会場で恥をかかせなくたっていいじゃないか。

 どうせなら部屋に押し掛けて言ってほしかった。


 いやいやそうじゃなくて。

 嫌よ嫌よ嫌よイヤよいやよ!

 私、まだ死にたくない!


 兵士たちの手が迫ってくる。

 私は目と口をつぶり、死んだ家族の事を考えた。


 しかし、どうしたものか。いくら経っても触れられない。

 恐る恐る目を開けると、兵士たちは止まっていた。


「なっ?」


 私に手を伸ばした体勢でだ。

 彼らだけではない。

 王子も周りの王侯貴族たちも、この大広間にいる全員が動きを止めている。

 さっきまで騒がしかったのに、今は静まりかえっている。


「何よどうなっているの?」


 自分の声が響くだけだった。

 さらに遠くのテーブルに目をやると、信じられない光景があった。

 落としたグラスが中のお酒ごと宙に浮いていたのだ。


「ま、魔法なの?」


 誰の仕業なんだろう。理由は何だろう。

 でも今はどうでもいい。早く逃げなくては。


 ところが足が動かない。


「う、ウソ? やだ」


 上半身は大丈夫だけど、下半身は駄目だった。


「いや! 助けて! 私、死にたくない! もっと生きていたいの! 誰か、誰か助けて!」


「お困りですかな、お嬢さん。ヒッヒッヒ」


 突然、目の前にお婆さんが現れた。

 いや、ほんと。いつの間に?


「私の魔法で貴女様以外の人間の時を止めておりますじゃ。とんだ災難でございますな、オプトゼチ様や」


「ど、どうして私の名前を?」


 しかしお婆さんは質問には答えてくれなかった。

 代わりにビンを取り出してきた。


「これをお飲みなされ。毒薬ですじゃ」


「ちょ、冗談じゃないわ!」


 殴ってやろうとするもとどかない。

 お婆さんは続ける。


「普通の人間にはただの毒薬です。しかし魔王に選ばれし者であれば、神に匹敵するお力を授かる事でしょう。ヒッヒッヒ」


「い、意味が分からないわ……」


「無理にとは申しません。ご不満でしたら私は帰らせてもらいますじゃ。そうなると彼らは動き出し、貴女様は殺されまする。ヒッヒッヒ」


「待って! 助けて!」


「ではこれをお飲みなさい。魔王様の血液です。真の実力を発揮して、魔王様の復活にご協力するのです」


「わ、分かったわ……」


 差し出されたビンを奪い取り、目をつぶって一気飲みする。

 味はしなかった。

 痛みもない。

 目を開けるとお婆さんの姿はなかった。


 途端に会場は騒がしくなる。

 動き出した兵士が迫ってきた。

 だから払い除けた。

 すると兵士は真っ二つになった。


「ウソ?」


 会場は悲鳴に包まれる。

 殴ったり蹴ったりしただけなのに人間は粉々になった。

 罪悪感は感じない。

 むしろ楽しく思える。

 最後に残った王子はおびえている。

 お腹が空いたな。

 彼は美味しそうだ。


「ま、待ってくれ! た、助けて――」


 首筋に噛みついた。

 ゴクゴクゴクと血を吸い取る。

 とても美味しい。

 王子の悲鳴はだんだん小さくなって、そして聞こえなくなった。


 口を放すと、彼はミイラになっていた。そして霧のように消えてしまった。


「ごちそうさま」


「そこまでです、吸血鬼!」


 一人の少女が、背後にあった扉のところに立っている。


「あら、平民が何をしに来たの?」


「先ほど女神様からお言葉をいただきました。この城に魔王の手先が現れると」


「ふーん。だから何?」


「貴女を倒します!」


「ええいいわよ。私は貴女が憎いのよ!」



 ◆



 廃墟と化したお城。

 瓦礫に座っていた。お腹を触りながら語りかける。


「そこで人間たちが惨たらしく死んでいくさまを見届けなさい。聖女様、フフフ」


「安心してはなりませんよ、ヒッヒッヒ」


 背後に現れたお婆さんは楽しそうにしていた。


「あの少女は別の場所で復活したようです」


「嬉しいわね。また殺せるんだから」


 すると真剣な声を出された。


「女神に加勢する聖女や勇者はかなりの数になるようですじゃ。これでは魔王様復活が出来ません。どうか皆殺しにしていただきたい」


「大丈夫よ。返り討ちにしてあげるわ」


「いけませんぞ。奴らは『女神の聖書』なる物を探してあります。それを手に入れられると流石の貴女様も」


「先に奪えって言うのね。分かったわ。ついでに勇者も聖女も殺しておくわ」


「はい。よろしくお願いいたしますじゃ。ヒッヒッヒ」


 老婆は姿を消した。


 私は夜空を見上げた。白いため息をして、小さな――でもはっきりとした声で言った。


「最後に殺すのはあなたよ魔王、フフフ」

ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!

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「連載しろ」と思われましたら、是非是非ぜひ応援よろしくお願いしまああああす(;ω;)

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