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茶吉の日常

魔法科高校ロボットコンテスト

作者: 茶吉

今年の魔法科高校ロボットコンテストのお題は「相撲」。

各校が格闘ロボットを作り、相撲のルールにのっとって土俵の上で戦わせる。というもの。碇教授はガンダムン型ロボットで勝負することにした。だが、ガンダムンといっても、世代によって微妙な食い違いがあることが判明した。教授が求めているのは初代のガンダムンで、初代のガンダムン世代のオブザーバーを父兄の中に募集した。ガンダムンファンの茶吉ははもちろん応募した。そして適任かどうかの面接試験を受けることになった。聞かれた質問はただ一つ「ガンプラの値段は?」という質問に、茶吉が「300円」と答えると、「ハイ採用です」と教授。「みんな600円と答えるんです。」と言う。教授が、ガンダムン型ロボットで行こうと決めたとき、ロボコン部の学生たちにそう発表すると、みんながゼーダガンダムンのことだと理解した。だか、教授が言っているのは初代のガンダムンだ。それぞれの世代にそれぞれの観てきたガンダムンがあって、イメージもデザインも食い違う。

教授の質実剛健といった印象の執務室に通された。壁には作り付けの特注のケースがそなえられていてその中に等身大のガンプラが飾られている。初期型がもっともシンプルだ。計算し尽くされていて美の比率が完璧。見た目が美しい。性能美と機能美。そうそうこれこれ。茶吉も持っていた。結婚と同時に泣く泣く捨ててしまったが、捨てたくなんかなかったし、いまだ独身で、教授室で大好きなフィギュアに囲まれている教授が心底羨ましくなってきた。教授は「このプラモデルをもとにして、これを補強していこうと思っているんです」だそうだ。大賛成だ。茶吉は若かりし日に燃やしたガンダムンへのあの懐かしい情熱が戻ってくるのを感じた。

相撲ということで、転びにくくなるように全体のバランスを計算してみたが、初期型なら、重心のバランスも申し分なく完璧でまさに黄金比率だった。そこにカーボンケプラーで補強をしていく作業に教授と茶吉は没頭した。そして1週間かけて全てのパーツを補強してようやく実践に耐えうるガンプラが出来上がった。あまりに見事な等身大ガンダムンを見てるうちに、幼い頃、ガンダムンに搭乗したいと願っていたことが思い出された。さて次に動力はどうするのかと、まずは公式ルールをよおおく読んでみた。搭乗してはいけないとはどこにも書かれていない。ガンプラの背中にジッパーを目立たないようにつけたら、着られるようになった。等身がガンダムンにぴったりの学生を教授が連れてきた。その学生は格闘技の経験はないが、優先すべきはガンプラを着られること。だ。ロボットコンテストの当日を迎えた。

他校のロボットは軒並み、人型ロボットで、歩く時に腰が引けておじいさんのような動きだ。対する我が校はといえば、立っているだけでも重そうであるが動きは滑らかでパンチやキックをひょいとよける。人が入っているのだから当たり前なのだが、我が校の関係者以外はそんなこととは知らないものだから、負け知らずの順調な試合運びと滑らかな動きとが話題を呼び、科学雑誌の取材が来たが、動力の秘密は明かすわけがない。まだ決勝もまだなのだから各校とも秘密に決まっている。

動力源が生身の人間の場合のデメリットももちろんある。ロボットなら不眠不休で活動できるが生身の人間は、疲労する。それにロボットなら重さに不満を言わないだろうが、学生は着せられているものが重たすぎるので休憩なしに連戦するのは2、3試合が限度だ。それにヘトヘトに疲れて、控え室に戻ってくるなり、ガンプラを脱ぎ捨て、「トイレに行かせてくださいー!」とトイレへ駆け込む。このトイレ問題もなんとかしなくてはならない。だがそれについては、教授が同じような体格の学生を10数名学内でスカウトしてきてベンチで待機させることで解決した。その後もずっと順調に勝ち進み、決勝戦へ進出した。決勝戦に搭乗するのは、なかなか喧嘩に強そうな筋肉質の体型で武闘派の番長くん。実際に喧嘩に強い。が、唯一の弱点がカエル。幼い頃、ドブ川で遊んでいて、誤ってイボガエルの口に足を突っ込んでしまい、カエルが足にくっついたまま離れてくれず、足の先にカエルが生えているような絵になってしまったまま、カエルがどうしても離れてくれなかったことがトラウマになっている。なぜこんな昔話を披露するのかといえば、決勝戦の対戦相手はカエル型ロボット。重心をなるべく低くして、なおかつ手で前に押す力にこだわったらカエルのような姿になったのだろう。ご丁寧にみどり色の塗装が施されている。どこからどう見てもカエルだ。さすがの番長くんといえどもカエルを目にしてがっくり膝をついてしまった。そのままばったり倒れて動かなくなってしまった。中では番長くんが滝のように吹き出した汗と過呼吸とでほんとうに息も絶え絶えだったのだが、対戦相手にはそれは見えない。不具合というよりほかには何が起こったのか分からぬまま、不戦勝となった。

まさかの準決勝に敗北した理由が明かされることは遂に無かった。

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