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A章4話 科学の力

4000文字

「泰史っ!!」


ジェリームーンの猛攻を前に、解決策の見出せない俺たちはジリ貧に陥っていた。

幸いにしてか、ジェリームーンは攻撃力が高いわけではなかったので、紙装甲の俺が唯に守ってもらう形になっている。


「ど、どど、どうしましょう…」

「こ、こんなんどうしようもないっすよ!ひぃっ」


ティアーナさんとジョルノーさんは盾役のベルグさんが守ってくれている。

リーダーのフレイグさんは自力でジェリームーンの攻撃を防いでいた。


ジェリームーンの攻撃が一辺倒であることも幸いした。

ただその場からほとんど動かずに触手を飛ばしてくるだけなのだ。

まあこの俺ぐらいの紙装甲になると、直撃したらあちこち骨が折れるが。

なんとか会議が出来る程度の余裕はありそうだった。


相手は物理無効、魔法無効だ。

単純に考えれば無敵と思われるかもしれないが、色々と考えていけば倒す手段が無いわけではないだろう。


あるいは強引に攻める手段もある。

壁に点在する魔物を全滅させることだ。

こいつらが魔法を打ち消しているので、全滅させればジェリームーンに魔法が通ることは間違いない。


それに、俺にはいざという時には切り札がある。

大丈夫。乗り切れるはずだ。



「唯!お前、学生カバンを持ってたよな!」

「え? う、うん。あるけど。 被って頭でも守るの?」


いや学生カバン被っても気休めにもならないだろうよ。


「その中からあるものを出してほしいんだ」

「わ、分かった。泰史を信じる」


さっきは突っ込んでしまったが、突っ込みたいのは俺以外の面々であっただろう。

現にフレイグさんたちから向けられる視線が痛い。



俺の考えでは、有効なはずだ。


昔話では、ジェリームーンは雷に打たれて倒れたという。

それならば。


雷は魔法ではない。

科学の力で発生するものだ。


当時のジェリームーンは別に魔法無効では無かっただろうし、雷属性の魔法を放った人がいたのかも分からないが、少なくとも確実に言えることは科学の雷ならばジェリームーンに通るということだ。

つまり、魔法がダメなら科学でジェリームーンにダメージを与えれば良い。



「唯!赤字消せるあの、レッドシート?ほら赤い透明な下敷きってあるか?」

「あるよ!ちょっと待って、今用意するから!」


唯は学生鞄を召喚(?)する。

ちなみにこれは唯のデフォルト装備だ。


「えっとぉ…あ、あったよ!」


探している最中唯は無防備になるが、直撃を受けてもまるで平然としている。

ただし全身ねっちょり液体まみれだ。


「はい、これでしょ?」

「よし、それを俺に貸してくれ!」


大丈夫。これさえあれば、うまくいく。

唯は鞄から取り出した赤シートを俺に差し出す。

この瞬間、俺の勝利が確定したと言っても過言ではないだろう。



「うおおおおおおおおおお」


俺は赤シートを受け取ると、勢いよくそれを自分の頭に擦り付けた。

何度も、何度も、何往復も繰り返す。



「「「・・・」」」


周りの視線が痛いが、今はそれどころじゃない。

唯に関しては汚物を見るような目で俺を見ている。

もはや唯は触手を回避すらしていない。ただただ俺の奇行に衝撃を受けているようだ。

くっ。背に腹はかえられないのだ。


そうして俺は十分だと判断した頃に擦り付けるのをやめ、


「喰らええぇぇぇぇ!!!」

「え?あああぁぁぁーーーっ!!私の赤シートがーーーー!!!」


ジェリームーンに向かって赤シートを投げつけた。

フリスビーの要領で回転しながら飛んでいく赤シート。


別に脅威だとは思わなかったのか、そんなものは意にも介さずジェリームーンは触手を俺たちに飛ばしてくる。


そして赤シートがジェリームーンに衝突した。

そしてその瞬間にチリッと音がして衝突した場所が一瞬光る。

勝った!!!


「ピギャァッ」


この日初めて、ジェリームーンが叫び声をあげた。

昔話にもある通り、ジェリームーンは全身を明滅させている。


「えっ!泰史すごい!」

「な、何をしたんだ!?」


ふっ。

ここらへんで答え合わせといこう。


俺が下敷きを頭に擦り付けていたのには、ちゃんとした理由がある。

もう分かった人もいるかもしれない。


そう、静電気だ。


魔法ではなく科学によって発生した静電気なら、ジェリームーンに通るのではないかと俺は思ったのだ。

そして学生の頃に下敷きを頭に擦り付けて離すと、髪の毛が下敷きにくっつくというのを思い出した。

それを利用して、ジェリームーンを倒そうと思ったのだ。


雷というのも、元を辿れば静電気。

ジェリームーンに通じないはずが、無いのだ。



そしてジェリームーンは数秒ほど明滅すると、今度は打って変わってものすごい勢いで触手を振り回し始めた。

しかも触手を飛ばしながら、だ。

今の攻撃が効いたのだろう。新しい攻撃パターンで攻撃をしてきた。

少なくとも昔話の通り、ジェリームーンは電撃が苦手らしい。

今の攻撃でそれが確信に変わる。


厄介なのはその情報と引き換えに、新しい攻撃手段をジェリームーンが使い始めたことだ。

今までは飛ばされてくる触手を防ぐだけでよかったので、正面を守ればそれで良かった。

だが触手を振り回すようになって、今度は横の防御も必要になってくる。

結果、ベルグさんの負担が大きくなる。



「泰史!次は!次はどうするの!」

「泰史さん、私はアナタを信じますわ!」


唯とティアーナさん、女性二人から声がかかった。

二人は俺に次の作戦があると信じて疑っていない。

いや、二人だけじゃない。

フレイグさんやジョルノーさん、ベルグさんも俺に期待している。


「みんな、聞いてくれ」


俺は意を決して話し始める。

フレイグさんベルグさんを含む、みんなの視線が俺の方へと向いた。


俺はみんな一人一人に目を向け、そしてゆっくり目を閉じ、告げる。



「今ので終わりだ」



途端、ここにいるメンバー全員の表情が凍りついた。



いや!

待ってくれ!

俺なりに知恵を振り絞って考えたんだ!


確かに冷静に考えてみれば雷と下敷きの静電気じゃ全然威力が違うよね!

しかも昔話では雷ですら、倒すのは二発だった。

下敷き一発でどうにかできるはずが無いよね!



「泰史…死んで…」


うおおお。やばい。

唯の目がガチだ。

唯の手から放たれたファイヤーボールは俺の目の前で消える。

この空間が魔法無効で本当に良かった。


「って、唯!敵を間違えてるだろ!」

「はっ、いけない…。あまりの殺意に判断が鈍っちゃった!」


鈍っちゃった。じゃねえよ!

俺死ぬからね!唯の魔法直撃したら死ぬからね!

残念なことにそれを咎める者は誰もいなかった。

完全なアウェーだ。

そしてその状況を作り出したのは俺。自業自得かよ。



「ぬああああ!!精霊魔法ーーー!!」


半分自暴自棄になりながら、魔方陣を用意して詠唱をする。

俺は手を前に突き出し、ジェリームーン目掛けて雷属性魔法「サンダーボルト」を放つ。


サンダーショットはジェリームーンに向けて一直線に放たれ、そしてそのままジェリームーンを貫いた。


「プギャッ!ギィィィィ」


ジェリームーンは激しく明滅している。


「サンダーボルト、サンダーボルト、サンダーボルト、サンダーボルト」


やけになって叫び続ける俺。

もうなるようになればいいと思う。



ちなみにこのサンダーボルトは消えることなく全弾ジェリームーンに直撃している。

壁の魔物はどのようにして魔法をかき消しているのか。

恐らくだがジェリームーンが自分たちと距離を取って戦っていることや、魔法が一応発動はすることから考えて、空間の魔力をゼロにしているからという可能性が高い。


例えばファイヤーボールを真上に向けて放つとする。

このファイヤーボールはどこまで行くのだろうか。

雲に到達するまでか、あるいは宇宙に行ってもなお消えずに進み続けるのか。


惑星にぶつかれば消滅するだろうが、それまで消えずに進み続ける、なんてことはない。

空気中にだんだんと溶けていって、次第に小さくなっていくのだ。

まあ正確にいえば空気中に溶けるのではなく、空間に溶けていくのだが、イメージとしてはどっちでもいい。


湿度のようなものだ。

カラッカラの空気に水を置いとけばすぐ乾くだろう。

同じように、この空間内の魔力をカラッカラにしておけば、魔法はあっという間に散ってしまうというわけだ。

唯の魔法があっという間に消えてしまったことから、下手したら空間内の魔力はゼロどころかマイナスぐらいかもしれない。



魔法というのは魔力を使って放たれる。

魔力は空間中にいくらでもあるのだが、精霊と呼ばれる存在は空間中に漂う魔力の流れを操作できる。

あの壁に張り付いている魔物たちも、広義で言えば精霊に当てはまるのかもしれない。

この部屋内の魔力を操作して、俺たちの魔法をかき消している。


そっちが精霊の力を使うなら、こっちも精霊の力を使えば良い。

魔力に干渉してくるなら、同じ精霊の力で干渉し返せばいいのだ。

目には目を、ということである。


だからこそ、精霊の力を借りた俺の魔法は消えることなくジェリームーンにダメージを与えているわけだ。


これが俺の切り札、精霊魔法である。

精霊魔法は精霊召喚の部分的な使用だ。



「サンダーボルト、サンダーボルト、サンダーボルトォォォォォォ!!!」



何発打ったかも分からなくなるぐらいに連発したが、ようやくジェリームーンを倒すことが出来た。

最初からこうすれば良かったじゃん、なんて?

だから言ったじゃないか切り札だと!



さて、伝説の魔物を倒し終えたことだし、俺に待っているのは賞賛の嵐だろう。

ふふん、とドヤ顔で振り返ると、メンバーの全員が俺のことを冷たい目で見ていた。


「お前はすごいやつなんだろうが、なんというか非常にありがたみに欠ける決着だったな」

「あー。なんか?すごいっす。ご苦労様っす」

「ベルグ、私を守ってくれてありがとう」

「気にするな。お前を守るために、俺はここにいる」


…ですよね!

最初から精霊魔法使ってれば良かったよ!

フレイグさんとジョルノーさんは褒めてくれてはいるものの、戸惑いが大きいみたいだし!

ティアーナさんとベルグさんは俺の存在無視して完全に二人の世界入ってるし!



「最初からそうしとけば良かったのにね」



唯の一言が俺の心にグサッと、刺さった。

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