A章1話 ぷろろーぐ
ご覧いただき、ありがとうございます。
初投稿作品となりますので、お見苦しい点も多々あるかと思いますが、たったお一人様でも、ほんの少しでも、お楽しみいただけたらと思います。
これからどうぞ、応援よろしくお願いいたします。
2700文字
「今日はお前と、二人きりで夜を過ごしたい」
俺は出来る限り優しく、そう彼女に提案した。
辺りを見るともう日が沈みかけ、照り輝いていた太陽は真っ赤に染まり、地平線へと沈もうとしている。この辺は日本もこの世界も、特に変わりはない。
日が沈む刹那の間に見せる、美しい景色だ。
先ほど、俺の魔法で火を起こし、もう今は薪に燃え移りパチッと音を立てている。
「えええ!? 私の聞き間違いだよね? もう一度言ってほしいんだけど」
驚きをこめた彼女の声が、夕焼け空へと吸い込まれる。
彼女は聞いた瞬間こそ動揺したようだが、すぐに平静を取り戻すと今度はジト目で俺をにらんでくる。
彼女はどうやら俺を警戒しているように見える。
眉を寄せ、怪訝な表情をしている。
少しイラッとした。
もちろん俺だって即座にイエスと言ってくれるとは思っていなかった。
断るなら断るで、良かった。
イエスでもなくノーでもなく、嫌そうな顔で聞き返されたのだ。
よりにもよってそんな顔をすることはないと思う。
彼女だって望んでいたはずだ。
大体、最初に言ってきたのはあっちだったのに!
もちろん、だからと言って強制はしたくないから俺は優しく話しかけたつもりだし、実際そんな目で見られるような口調ではなかったと思う。
自分で言うのもアレだが、紳士的だったと思う。
反応としては失礼だ。
そんなだったから思わず、つい強めの口調で言い返してしまった。
「はぁ? なんでこんな簡単なセリフを聞き間違えるんだよ! いいか、もう一度言うぞ? 俺はお前と夜を過ごしたいと思ってるんだ!」
言い切った。
変に着飾ることのない本心を言ってやった!
これだけ強く言えば彼女にも俺の気持ちが伝わったはずだ。
まあ、言い切って満足して少し冷めた頭で考えてみたら、確かにちょっと急だったかもしれない。
「怒鳴ってごめんな。けど俺は、お前と。そうしたいと思ってるんだ」
そうだ。俺にも非があった。
どんなものであれ、突然出された提案に即座にイエスとはなかなか言えないであろう。
俺は素直に頭を下げて、優しく頼み込んだ。
これで彼女も了承してくれるだろう。
そう思って俺は彼女のほうを見る。
しかし俺の思惑は外れて、彼女は驚いたように反論してきた。
「なっ、なんでいきなりそんなことになるの!」
なんだって?
流石にこの態度にはまたイラッとしてしまう。
「いきなりなんてことはないだろ! 俺とお前の仲じゃないか!」
また怒鳴ってしまった。
すると、彼女は急にシュンとして発言する。
「で、でもそんな急に・・・。私にだって心の準備があるし・・・。その・・・ど、どうしても今夜じゃなきゃ、だめ・・・?」
彼女は顔を真っ赤にして上目遣いでこちらを見てくる。
さっきからこの反応はなんなんだ一体。
何をいまさら言ってるんだ。
「ああ。そのために俺は今日までためてきたんだからな!」
「ちょ、ちょっと生々しいこと言わないでよ! ・・・・・・で、でも、その、男の子って、誰とでも良いんでしょ・・・?」
「そんなわけないだろう! お前じゃなきゃ、嫌なんだ!」
心外なことを言われ、さらに声を荒げてしまった俺。
それに対し彼女は赤かった顔をさらに真っ赤にして、うつむいて黙り込んでしまった。
誰でも良いわけがない。
そんなことを、言ってほしくはなかった。
でも、ちょっと怖かったかな。
必要以上に大きな声で怒鳴ってしまったと自分でも反省する。
だがこれで、きっと俺の想いは通じたはずだ。
俺は再び、優しく彼女に語り掛ける。
「まあ、俺だって初めてなんだ。でもお前が痛い思いをすることのないように精一杯努力するからさ。だから今夜、俺と一緒に、さ」
人を誘うにはあんまり強引でも上手くいかないらしい。そこで俺は少し間をあけ、一歩引いた発言をしてみることにした。
「それともやっぱり俺とじゃダメ・・・かな?」
このセリフ、言っててめっちゃ恥ずかしい。ええい、もうなるようになれ。言いたいことは言い切った。
彼女はまだ迷っている様子だったが、顔をあげると少し涙目になりながら
「う、うん。分かった。 だ、だめなんかじゃないよ! 急だったからちょっと驚いちゃっただけ」
「そっか、良かった!」
俺は満面の笑みで彼女に笑いかける。
「で、でもひとつだけ約束して。こういうのは私とだけにしてほしいの。他の人とは絶対やだからね! それが守れないなら、私はいやだ!」
そんなことはいちいち言われるまでもない。俺だってずっと一緒にいてくれる彼女だからこそこんなお願いをするんだし。
「よし、約束な」
「うん。 よ、よろしくね」
誘うことが出来た!
めちゃくちゃ緊張したが、のどもと過ぎればなんとやら。
やはり勇気を出して言ってみることが大事だ。
彼女も迷いは吹っ切れたようだ。大きくその場で深呼吸をすると、その目には迷いの色はなく、決意の色が宿っていた。
「よし、それじゃあ早速支度を始めようか! 今夜一緒に攻略に行くダンジョンに挑むための」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
彼女の同意も得られた。
この日のために、色々と準備もしてきた。
途中の関所で支払うためのお金も「今日のためにためてきた」し、必要になる道具だって一通り揃えた。
あと残すのは攻略に向けた準備だけだ。
やってやる! 俺は今度のダンジョンを絶対に制覇してみせる!
「ちょっと待って。 え? どういうこと?」
彼女はワケが分からないといった顔で俺を見つめてくる。
往生際が悪い!!
さっきOKといったのに、もう早速ケチをつけようとしてきた。
「どういうこともなにも、今夜ダンジョンに二人きりで一緒に行こうって話だよ。しばらく前に言ったじゃん?俺が今夜ダンジョンに挑むつもりだって」
俺は呆れて、ふぅとため息をつく。
「えっと・・・。じゃあさっきの初めてってのはなんだったの・・・?」
「それは未踏破のダンジョンにペアで挑むのが初めてってことだよ」
「じゃ、じゃあ、私が痛い思いをしないようにってのは・・・?」
「魔物が襲い掛かってくるかもしれないだろ?」
俺のセリフを聞き、彼女の真っ赤だった顔から一気に血の気がうせ、今度はサーッと真っ青に染まっていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・ばか」
「え? 何か言ったか?」
「嫌い! 大っっっキライ! そう言ったの!」
彼女はそういって、ふええと泣き出してしまった。
一体なんなんだよ・・・。
女の子って本当によく分からない。
俺は深くため息をついて、泣き出した彼女が落ち着くのを待つことにした。