第一話~アルヴィオの噂~
どうも。今回は、早めに投稿できることができました!
「ふわあぁ……まだかしらねぇ。あの子達」
結局、探索クエストには、ミザリィだけいかなかった。
ハウスで一人だらだらしているのも、なんだか寂しいと思ったミザリィはギルド内のテーブルで、冒険者達の騒がしい声を聞きながら、アルヴィオ達の帰りを待っていた。
アルヴィオ達がクエストに行ったのは、今から四十分前。
特に制限時間はないので、いつ戻ってくるのかはクエストを受けた冒険者次第。戻り次第、探索の結果を聞く予定だが。
まだかまだかと、テーブルにうつ伏せになっていると。
「それにしても、マジで謎だよなぁ」
「あ? 何がだよ」
後ろの席で、二人の冒険者がこんな話を始める。
「アルヴィオだよ」
「あぁ? そんなの飽きるほど話してるじゃねぇか。あいつが、ランクに実力が合わねぇってことは」
「違ぇよ。そっちもそうだが、ハウスのことだよ」
「ハウス?」
興味がある話なので、ミザリィはそのままうつ伏せになったまま男達の話に聞き耳を立てる。どうやら、あっちはこちらに気づいていないようだ。
「そう。ハウスってのは、ギルドから認められたパーディーに与えられるものだろ?」
「ああ、そうだな」
「エルシーたんの実力は、誰もが認めているけど。アルヴィオは違う。エルシーたん一人が認められていても、それはパーティー全体として認められているわけじゃないよね?」
(エルシーたんって……あの子にも変なファンがついているものね)
ちなみに、ルチルやティカなどにも変なファンがいるようだ。自分には、いないというのに。まあ、そこのところは気にしていない。
ルチルには、最初の頃より棘がなくなってきて、今ではツンデレ最高! やお姉様最高! など男にも女にもファンがいる。
ティカは、あの元気のよさと人懐っこい性格から色んな年齢層にファンがいる。
「まあ、そうだな。エルシーちゃんが認められていても、アルヴィオは違うしな。あいつのランクだって、エルシーちゃんと一緒にいるからこそのものだからな」
「だけどよ。結局のところ、ギルドからはハウスを与えられているんだよな。それって、あいつも含めパーティーとしてギルドから認められているって、ことだよな?」
「……確かに」
(まあ、実際アルヴィオくんの実力はエルシーちゃんを超えるものがあり。エルシーちゃんの力も、元はアルヴィオくんのものなんだけどね)
しかし、改めて考えてみれば、彼らの疑問はわかる。
ミザリィやティカ、ルチルが入る前。
まだアルヴィオとエルシー二人だけの頃から、ハウスを所持していた。ハウスは、誰もが知っている通り、ギルドから認められたパーティーに与えられるパーティー専用の家。
当然、エルシーはギルドからも冒険者達からも認められているが。アルヴィオは、誰から見てもぐーたらしていて、妹におんぶに抱っこ状態。
最近は、ぐーたらしていることも多いが。しっかりとクエストをこなしている。むしろ、今後ろで朝からクエストに行かず、雑談をしている二人よりマシになっている。
(まあ、私も後ろの二人と変わらないんだけどねぇ)
自分も、クエストに行かずだらだらとしている状態なので、なんとも言えない。
「もしかしてさ、アルヴィオって実はすげぇ強い奴なんじゃねぇか?」
「馬鹿。んなわけあるかよ。本当に強いなら、なんで妹におんぶに抱っこ状態なんだ? それに、あいつの実力はよく見ただろ? オーファンに攻めてきた魔物の大群を俺達で撃退していた時に、あいつ即効でやられたんだぜ?」
(あら、そんなことがあったのね。まだ、私がオーファンに来る前の話かしら)
だからこそ、冒険者達はアルヴィオのことを馬鹿にしているのだろう。それほどの大勢の前で、すぐやられたのであれば……頷ける。
確かに、アルヴィオはずっとエルシーと一緒にクエストをやり続けていたと話していた。それならば、どうやってアルヴィオの実力を知ったのか。
それが、今わかった。
「まあ、確かにそうだけどさ」
「けど、お前の言いたいことはわかる。しかもよぉ……」
「ああ、しかもだ」
なにかしら? と男達の言葉を待っていると。
「なんであいつばかり、美少女が集まるんだ!!」
「おう!! それだよ!! 最近じゃ、ルチルさんもあいつのハウスに入ったって話じゃねぇか! エルシーちゃんも、ティカちゃんも、それになんだかんだでミザリィも美女だしよ!」
(なんだかんだっていうのは、なんだか引っかかる言いかたね)
しかし、彼らは後ろにミザリィがいることに気づいていないまま話を続ける。ミザリィもミザリィで、彼らの言葉を気にしてはいるが、そのまま聞くことにした。
「俺見たぜ? アルヴィオが、獣耳の美少女と一緒に買い物しているところを!」
(それって、私かしら)
最近ミーシャの姿でアルヴィオと一緒に限定品の人形を買いに行った覚えがある。もちろん、彼らからしたらミーシャの姿には、ほとんど見覚えがなく。
彼女が、ミザリィであろうとは思わないだろう。
「マジかよ。ハウスの子達じゃ、飽き足らず他の子にまで!」
「マジ許せねぇ……」
これは、ますますアルヴィオは大変なことになりそうだと思いつつ、入り口のほうへと顔を向けると。丁度、アルヴィオ達が戻ってきた。
なんてタイミングはいいのか。いや悪いのか。
「よお、ミザリィ。ハウスで待っていなかったんだな。寂しかったのか?」
「そーよー。やっぱり、一人は寂しかったのよー」
すぐに寄ってきたアルヴィオにぬるりと絡みつくミザリィ。
それを見ていた男達は、羨ましそうな顔をしつつも、そこにミザリィが居たことに驚いている。
「ところで、何か面白いことはあった?」
「そうだなぁ、特に何も。ただただ洞窟を探索しつつ、魔物と戦って、採取をしてって感じかなぁ」
チラッと、男達がテーブルを見るとすでに姿はなかった。
どうやら、逃げたようだ。
「どうしたんだ? ミザリィ」
「いいえ、なんでもないわ」
「もしかして、ずっとここに居たわけ?」
クエスト達成の報告を済ませたルチルは呆れ顔で言う。
対して、ミザリィはいまだアルヴィオにくっ付きながら。
「そーよー」
「少しは、クエストをするって気はないの?」
「だって、一人じゃ寂しいんだものぉ。特に、アルヴィオくんが傍に居ないとやる気が出ないわー」
「こら! あんまりくっ付かない!」
「いーやーよー」
周りの目が集まっているから、離れなさい! とミザリィをアルヴィオから引き剥がそうとするルチルだが、中々引き剥がせない。
その後は、エルシーとティカも揃い、騒がしくなる。
ティカは一緒になり、アルヴィオへと抱きつき、エルシーはルチルと一緒に二人をアルヴィオから引き剥がそうとする。
そんなやり取りが、しばらくギルドで繰り広げられていた。




