第十二話~新たな仲間~
お久しぶりです。しばらく投稿していない間に、なんだかじんわりと評価されていて驚きました……。
「……ふひぃ」
「なんだか今日は、やる気が出ないわねぇ」
「そうだねぇ……あれかな? この前のキノコ狩りで結構貯金が溜まったからかなー」
アルヴィオ達は、ハウス内のリビングでぐーたらとうつ伏せになっていたり、仰向けになっていたりと各々寝ていた。
昼食後ということもあって、すごく眠い。
だが、それだけではない。
この前のキノコ狩りで、クイーンを倒した後に、残党狩りということで辺り一面の【マシュル】を狩りつくした。
どうやら、クイーンを護るマシュルということもあって他のマシュルよりも強く、落ちたキノコもかなり大きかった。
その結果、大分貯金が溜まったのだ。
とはいえ、アルヴィオ達は無駄使いはしていない。贅沢は、冒険者にとっては敵だ。どれだけ金が溜まったとしてもより多く溜め込み、どう使うかが重要。
特にパーティーを組んでおり、ハウスに住んでいるならば尚更だ。
一応個人貯金としてあるが。
話し合えば、共有貯金にもできる。
その辺りのことは、まだ話し合ってはいないが。
「ちょっとあなた達、だらけすぎじゃないの? いつもこうなの?」
ハウス招待を受けたルチルは、いつもの青い鎧ではなく白いシャツにショートパンツを身につけた姿でアルヴィオ達のぐーたらさに呆れため息を漏らし、唯一しっかりしているエルシーに問いかけた。
そうですねぇ、と三人に毛布をかけながら語りだす。
「昼食後は、大体こんな感じですね。ですが、しっかり休むのも冒険者としては重要なことですね?」
「確かにそうだけど……」
「そうだぞー、先輩は休むことは無いのかー」
「休む時はしっかり休んでいるわ。ただ、あなた達みたいにぐーたらはしていなわよ。後輩」
「それで? あなたは、私達のパーティーに入るのかしら?」
一度にクエストにいけるパーティーの上限は四人までだが、それ以上にパーティーを組んでもいいようになっている。
そもそも、このハウス自体、四人で住むにしてはかなり広すぎる。
そのため、他のハウスでも同様に、四人以上のパーティーを組み、ローテーションでクエストに挑んでいたり、四人、四人でそれぞれ違うクエストへと挑んでいる者達もいる。
ちなみに、ハウスへと住める人数は八人までが限界。
初めは寝室が二部屋だけだが、ギルド側に連絡を入れればもう二部屋寝室を増やすことができる。元々空き部屋が二つあるので、そこが寝室となるのだろう。
「あ、あたしは別に入りたくて来たわけじゃないわ」
「つんつんしちゃってー、かわいいなぁ、先輩」
「う、うるさいわね!!」
「ルチルが入ってくれれば、私達は大助かりなんだけどなー。色々と学びたいことがあるし」
「ですが、無理にとは言いません。ルチルさんには、ルチルさんの事情があると思いますから」
とはいえ、エルシーもルチルにはパーティーに加わって欲しいと思っているようだ。
その真っ直ぐで期待に満ちた目を見れば一目瞭然である。
視線攻撃受けているルチルは、その圧倒的な攻撃力に怯みつつも真剣に考える。
そして。
「……あたしは、ずっと一人でやってきたし。今まで困ることは無かった」
ソファーにどっかりと座り、クッションを膝の上に置きながら自分のことを語っていく。アルヴィオ達も、それに自然を聞き耳を立てていた。
「あなた達が来る前は、一人でやるのはつらくないか? 一緒にクエストをやろうよって何度も誘われたわ……だけど、その時のあたしは今よりも棘のある性格をしていたの」
「自覚していたんだ」
「まあ、初めて会った時は目つきの鋭い人だとは思ったわね」
「そ、そうね……まあともかくよ。それが、あなた達みたいな一風代わった人達と関わっていくうちに、あたしも少しずつだけど変わっているって気づいたの」
確かに、初めて会った時と比べると今は、表情も柔らかくなり、よく笑うようになった。最初は、優しくはしてくれていたが。
全然笑わず、歴戦の冒険者、という雰囲気を出していたのを今でも覚えている。
「変わった、というよりも昔のあたしに戻ってきたっていうのは正しいかな。信じられないかもしれないけど、昔はもっと女の子らしく笑っていたの、あたし」
「とても可愛らしい女の子だったんですね」
「うーん、想像できないわ」
「同じく」
「昔から冒険者になりたかったってことは、笑顔で魔物を倒していたってことかな?」
「……あなた達ね」
ルチルはともかく、この三人は、と頭を抱えるがすぐ気にせずその場から立ち上がった。
「あなた達となら、なんだか楽しい冒険者生活が送れそうだわ」
「お? てことは」
クッションを抱きながらアルヴィオはルチルを見上げる。
「ええ。今日から、あなた達のパーティーでお世話になるわ」
「新戦力ね」
「よろしくねー、ルチル」
「ふふ。これは、一層料理の腕を上げなくちゃですね」
「さーて、あたしが加わったからには半端なことは許さないわよ!! さっそく食後の運動しに行くわよ!! ほらほら、さっさと立ちなさい!!」
えー!! と抗議の声を上げるアルヴィオとミザリィだったが、エルシーとティカはすでに準備万端という格好をしていた。
「兄さん。あまり無理はしないでください。もうちょっと休んでからでも」
「だめよ、エルシー。いつまでも、ぐーたらばかりしていたらアルヴィオがだめ男になってしまうわ。あなただって、かっこいいアルヴィオが良いでしょ?」
「ですが、兄さんはこのままでも十分」
「だーめ。ほら、立って立って」
「アルヴィオくん。私が倒れたら……後はお願い」
「マジでそうなりそうだから、とりあえず頷いておく」
前回も、お礼として特訓をやってもらった時を思い出したのか。
ミザリィは、すでに死にそうな表情でアルヴィオに後は頼むと呟く。すでに、ティカはハウス周辺を走っており、玄関では早く来いと言わんばかりの顔をしているルチルと、心配そうに見ているエルシーが待っていた。
アルヴィオは二人の顔を見詰めながら、しょうがないなぁっと頭を掻き、ミザリィを連れて歩き出す。
「全員揃ったわね! さっそくだけど、まずは柔軟体操からね」
「え?」
「なに、惚けているのよ? 当たり前でしょ。いきなり激しい運動なんてするわけないじゃない。二人一組に、と言いたいところだけど一人余るわね。それじゃあ」
その後、一番やばそうなミザリィにルチルがペアを組み、俺にはティカ。エルシーは一人でもしっかりやるだろうと言うことで一人で柔軟体操をすることに。
しっかり、体を解したところで……ルチルの目つきが変わった。
「ハウスがあるこの空間……どこまでも続いているみたいで面白そうね」
「言っておくが、あんまり奥まで行くと結界みたいなのがあってぶつかるからな」
「あら、そうなの? いい情報を聞いたわね。じゃあ、その結界が出てくるところまでランニングと行きましょうか」
激しい運動はしないんじゃなかったんですか? とアルヴィオとミザリィは肩をがっくりと落とした。




