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第四話~逃げるアルヴィオ~

先ほどは、申し訳ありませんでした。

自分の確認不足で、違う話を投稿していたようです……。

 クエスト内容はこうだ。

 最近、森の様子がおかしい。どうやら、ウィードウルフの上位種であるウィードウルフズが現れているようだ。問題になる前に倒してきて欲しい。


 ウィードウルフズというのは、単純にウィードウルフの頭が二つになった魔物のことを言う。現在確認されているだけで、八体ほど。

 ひとつのクエストにつき、四体の討伐となっている。

 そのため、まずは先攻であるアルヴィオ達がウィードウルフズを倒す。


「いやぁ、ごめんね。エイジのわがままを聞いてくれてさ」


 いつもなら、ここまで森の奥に来る間、ミザリィのために休むことになっているのだが。今は、ミザリィの代わりにエイジ側の魔法使いであるカテジナが仲間になっている。

 彼女の表情からは疲労の色は全然見えない。

 

「別に気にするなって。勝負を利用して、めんどくさいクエストを消化できるから。ギルド側からしたら、とても助かっていることなわけだし」


 ウィードウルフズは、ウィードウルフの上位種。

 単純に、頭が二つになっただけではなくスピードも攻撃力も上がっている。それをひとつのクエストで五体を倒すというのは、なかなかめんどうなものだ。

 クエストランクは、Cとされているが。場合によってはBランクでもおかしくない。

 上位種ということもあり、使える魔法も多く、食べる量も半端ではない。


「そういえば、今更だけど。ティカってCランクなんだっけ?」

「そうだよ。でも、すぐBランクに上がってみせる! じゃないとポイントが入らないからね」


 ハウス持ちのパーティーは、特例としてランクが低くともそのランクの冒険者が居ればクエストに参加することができる。

 例えば、ティカはCランク。普通ならば、Bランク以上のクエストはできない。しかし、アルヴィオやエルシーがいることでパーティーとしてなら参加できるのだ。

 とはいえ、本来はランク不足でできないことを特例でやっているため、もらえるポイントが極端に少ないのだ。


「でも聞いてるよ? ティカの実力はもうBランクに届いているって」

「まあ、それは言えてるな。常識とか、そういうところはまだまだだけど。実力は、相当なものだ」

「何度か特訓に付き合いましたが、私についてこれた人はルチルさん以来でしたね」


 アルヴィオの力を受け取ってからのエルシーは、身体能力がかなり向上した。だが、それでもハードな特訓を今でも続けている。 

 単純に強くなるだけではだめなのだ。

 アルヴィオから授かった力を完全に使いこなし、少しでも全盛期のアルヴィオに近づくためにと。そんなエルシーの特訓にティカはついていったのだ。

 

「ルチルもルチルで、すごい特訓をしているらしいからなぁ」

「ルチルって、あの青い鎧の人?」

「会ったことがあるのか?」

「あたしってば、意外と好奇心旺盛だからね~。噂になっているものや、人にはすぐ近づきたくなるんだよ~」

「それで、会ってみた感想は?」

「意外と面倒見がいいつんつんした人」


 それを聞いて、アルヴィオはぷっと吹き出す。まさか、会って間もないのにそこまでわかってしまうとは。二人が、そこに気づくまで一週間はかかった。

 ルチルは、強気な性格なうえに、武力もSランクでもおかしくないと言われている。周りも認める美少女ではあるが、なかなか近づき難いオーラを放っている。

 勇気ある冒険者達が、ふざけ半分でデートに誘っていたようだが。見事に撃沈。


「あ、そういえば私この間ルチルを小物屋で見かけたよ! 入ろうか帰ろうかすっごく迷っていた!」

「ほうほう。それは、いい情報を手に入れたな」


 ティカの情報ににやりと怪しい微笑を見せるアルヴィオ。


「兄さん。あんまりルチルさんをいじめないようにね?」

「心配するな、妹よ。ちょっとだけ、反応を楽しむだけだって~」


 そんな楽しげな会話をしていると、エルシーは立ち止まり隠れてと指示する。

 即座に茂みへと身を隠し、隙間を作って遠くを見詰めると……今回の討伐対象を発見した。


「好都合なことに、二体か」


 二体程度ならば、めんどうな連携を取られる心配もない。いつもなら、連携をされる前にミザリィの魔法をぶっ放し数を減らした後、残党を狩るのだが、今回はそれができない。

 ここに来る間に、カテジナのことをアルヴィオ達は聞いたが、彼女は雷と氷属性の魔法が得意で、どちらとも、中級魔法まで覚えている。

 他にも拘束系の魔法を扱えるようだ。拘束系の魔法が使えるのなら、それを使わない理由がない。

 エルシーは、カテジナに視線を送ると杖を構え、頷いた。


「束縛せよ」


 魔力を込めると、アルヴィオ達の存在に気づいていないウィードウルフズは光の縄にて動きを封じられた。それを好機と見て、エルシーとティカが一斉に飛び出す。

 二人を近づけさせまいと、周りの草木を操り攻撃してくるも、それでは二人は止まらなかった。


「はっ!!」

「せりゃ!!」


 見事に回避をし、一撃にて撃退。


「やったな、二人とも」

「うん。この調子で、後三体も倒しちゃおう!!」

「ありゃ。これは、二人が強すぎてアルヴィオの実力ってやつを見れないかな?」

「あははは。大丈夫大丈夫。次は、これで攻撃するから」


 そう言って、収納バックから取り出したのは弓矢だった。あれから、少しは練習をした。あの時よりも命中度上がっている、はずだとアルヴィオの中で思っていた。

 その後は、残りの三体を探して森の奥へと進んでいく。

 すでに、十五分ほどが経っているがこれでも順調なほうだろう。オーファンから森まで、徒歩で移動しても十分はかかる。 

 往復で二十分。とはいえ、帰りは走って帰れば時間はいくらか短縮されるはずだ。


「さてさて、残りはどこかなぁっと」

「見つからないね」


 今回の勝負はどれだけ早くクエストを終わらせれるか。あちらでは、当然のようにアルヴィオ達が戻ってくるのを時間を計りながら待っていることだろう。

 のんびりやりたいところだが。


「ん?」

「いたね……」


 森を抜け広い空間。そこには洞窟があり、その周りを三体のウィードウルフズが歩いていた。


「よーし。今回もあたしの拘束魔法で」

「いや、待ってください。この気配は……」

「み、見てっ。洞窟から……!」


 先ほどと同じようにカテジナが拘束をして、エルシーとティカが倒す。その戦法をやろうとしたところで、洞窟から何かが出てくる。

 巨大な熊だ。

 しかし、腕が普通の熊とは違い方岩のようなもので覆われている。そして何よりも。


(この気配……)


 微かにだが、アルヴィオが探している魔物の気配が感じる。エルシーとティカに視線を送り、ここは俺に任せてくれと伝えた。

 二人は頷き、茂みから出て行く。


「ティカさん! 行きますよ!」

「うん! カテジナ! 援護お願い! 狙いはウィードウルフズ!」

「え!? あ、あの熊の魔物じゃないの?」


 困惑しているカテジナを置いてアルヴィオも茂みから出て行き熊の魔物めがけ矢を放つ。少しずれてしまった腕を掠めた。


「お前……俺に喧嘩を売るつもりか?」

「喋った!?」


 カテジナの驚いた声を聞きながらも、アルヴィオはにやっと笑う。


「そうだ! 熊野郎! お前の相手は俺がやってやる!」

「ほう……ふん。丁度腹が減っていたところだ。貴様を俺の胃袋に!!」


 アルヴィオの挑発に熊の魔物は二本足で立ち上がり牙を光らせるが……アルヴィオは、逃げ出した。


「えええ!?」


 魔物が喋った以上の衝撃だったのか。カテジナは、大声をあげ驚いていた。カテジナの中では、本当の実力で戦うのだろう、と思っていたのだろう。


「はっはっは! 俺と戦いたいなら、捕まえてみろよー!」

「この腰抜けめ……。逃がさん!!」


 アルヴィオが逃げ出したのは、作戦。魔物と一対一になれるように。うまくいくか不安だったが、うまい具合にかかってくれたようだ。

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