第二話~ウィザルの冒険者達~
今回はちょっと短め。
「おい。聞いてんのか!!」
「え? ……もしかして、俺に言ってた?」
本日もいつものようにクエストをクリアし、次はどうしよいかなぁっと思っていたアルヴィオ達。しかし、そんなアルヴィオ達に話しかけてくる物好きがいた。
どうやら、何度も声をかけていたようだがぼーっとしていたアルヴィオは気づかなかった。ようやく気づき、振り返るとそこには全身鎧で身を護っている剣士の青年が一人。
いや、後ろには青年のパーティーメンバーと思われる少女二人に、男一人が立っていた。
魔法使い、治癒術師、槍使いと意外にバランスがいい組み合わせだ。
ちなみに、現在エルシーとティカの二人はクエストの確認でクエストボードにいる。今、いるのはアルヴィオとミザリィだけだ。
「そうだよ! まったく、あまり耳がよくないのか? 視覚、聴覚は冒険者にとって大事なものだぞ。いや、そんなことはどうでもいい! いいか、アルヴィオ・マーカス!!」
ずびし! とリンゴをも貫きそうな勢いでアルヴィオを差す。
「僕の名は、エイジ! 【ウィザル】の冒険者だ! そして、僕の仲間の」
「どもー。魔法使いをやってますカテジナでーす」
カテジナと名乗った金髪の少女は、若干気だるそうな雰囲気のあり、ノーマルなとんがり帽子を深く被っていた。
「治癒術師のレレと申します」
ちょっと大人な雰囲気のある治癒術師のレレ。翡翠色の長い髪の毛に、大きな胸がとても特徴的だ。
「槍使いのタージンだ。よろしく頼む」
無骨な雰囲気がある眼帯の槍使いタージン。こちらを一切向かず、ギルドの雰囲気を観察していた。
「それで、ウィザルからわざわざどうしてここに?」
ウィザルはここ【オーファン】から、西に歩いても確実に一日半はかかる場所にある街。オーファンよりは、大きくないが冒険者の街としては有名なところだ。
アルヴィオ達以外の冒険者達は、当然のように騒ぎ始めている。
「あのウィザルから?」
「いったいアルヴィオに何のようなんだ?」
「僕の用事は簡単だ。アルヴィオ・マーカス! 僕と勝負をしろ!!」
「いやだ」
「なにっ!?」
「あはははは、即答されちゃったねぇ。エイジ」
「あらまあ、大変ね」
「ふん」
アルヴィオの有無を言わぬ即答っぷりにエイジは驚き、パーティーメンバーも苦笑してしまう。だが、諦めないエイジは再度アルヴィオに挑戦をしていく。
「勝負をしろ! アルヴィオ・マーカス!」
「だからいやだって。なんで、勝負なんてしなくちゃならないんだよ~」
まったくやる気の無い素振りを見せ付けるアルヴィオに対し、エイジは声を更に張り上げる。
「お前の噂はウィザルでも広まっている! ランクに不相応な冒険者だってな! だが、僕は本当にそうなのか自分で確かめたいんだ。本当は、実力を隠しているんじゃないかって!!」
その言葉に、ミザリィはふふっと笑いアルヴィオを見る。微笑みの意味はわかっている。冒険者の感、というものなのだろうが。
ルチルと同じで、このエイジという冒険者も感づいているのかもしれない。
とはいえ、ルチルと違い今日会ったばかりの他ギルドの冒険者。
いくらでも誤魔化しは聞くはずだ。
「はっはっはっは!! ウィザルの冒険者さんよ! それはねぇって!」
「そうそう! そいつは、可愛い子達に戦ってもらっているようなだめ人間なんだぜ?」
「本当の実力もなにも、今のそいつを見てわかるだろ?」
いつものようにアルヴィオを馬鹿にしてくる冒険者達。だが、こっちとしては好都合だ。こうして、本当にランクと実力が見合っていないと思わせれば、相手も。
「確かに、今のこいつはやる気の無いぐーたらな男にしか見えない。だけど、僕は自分の目でその実力を見ない限り信じない」
「……」
これはとても厄介だ。どうしたものか、と困っているとエルシーにティカが戻ってきた。
「兄さん、どうしたの?」
「あれ? 見ない顔だね。あっ! もしかして新人!?」
自分以外の新人を見て、先輩できるかもと思っているティカだが、違う違うとアルヴィオが制す。
「君が、アルヴィオ・マーカスの妹。エルシー・マーカスか」
「はい。そうですが」
「君は、兄と違い相当な実力者だと聞いている。……そんな君に問う。兄の実力は本当に馬鹿にされるような程度なのか?」
エイジの言葉に、エルシーはなるほどっと理解してくれたらしく悟られないようにエイジの問いに答えた。
「兄さんは、確かにランクと実力が合っていませんが。決して弱くはありません」
「そうそう。でも、強いってわけでもないんだよな。な?」
「そうね。この前なんて、魔物の目を狙おうとして矢を明後日の方向に撃っていたわね」
「えっと……この前なんて、アームルに吹き飛ばされてたね! あ、でもその後はちゃんと倒してたけど」
倒したのは、ミザリィだがそこはあえて言わないでおこう。今のアルヴィオの実力は、強くもなく弱くも無く。
とはいえ、ランクと実力が合っていないのは本当のことだということを教える。
「……そうか。だが! さっきも言ったが、僕は自分の目で見ない限り信じない!! 今日のところは引き下がるが、また挑戦しにくるぞ!」
「それじゃねー」
「失礼致します」
「……」
どうやら、今回は引き下がってくれたようだが。まったく諦めていないようだ。エイジ達がギルドから出て行った後、エルシーにティカが座りどうするのかと話し合うことにした。
「厄介なことになってきたわね、アルヴィオくん?」
「そうだなー。ああいうのは、強いっ噂されている冒険者のところに来るものなんだけどなぁ」
「あの様子だと、また来るよ明日にでも。ここは、もう思い切って勝負をしてみたらいいんじゃないかな?」
確かに、そういうのもありだろう。
あえて勝負をして、噂通りだと知らしめれば相手側も諦めてくれる、はずだ。
とはいえ。
「あんましやる気がでないんだよなぁ。勝負って言われても……」
どうにかならないものか。
だらーっと天井を見上げ、アルヴィオはため息を漏らした。




