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第十話~ハウスへ招待~

早いもので、もう十話。同時進行で、よく投稿できたなー。

「ほえー、そんな人だったんだ。あのお姉さん」

「まあ実際のところは、俺達も詳しい詳細はわかっていないんだけどな。なんで、俺達にこんな封印をして回っているのか。この封印になんの意味があるのか……」

「ちょっと不便だけど、感謝はしているわこの封印に。色々と向き合うまで、時間がいるから……」


 そういえば、ミザリィからはどうして封印に至ったのか聞いていなかったな……とアルヴィオは考える。とはいえ、そろそろ人は集まってきた。

 いつ隣の席に人が座るかわからない。

 この辺りが潮時。

 そう思った、アルヴィオはこんな提案をエルシーにした。


「なあ、エルシー。話の続きをしたいから、場所を移さないか?」

「それはいいけど。どこに?」

「俺達のハウスに、だよ」


 ハウスという言葉を聞き、ミザリィは興味を示した様子。


「あら、それは嬉しいわね。本来は、ギルドで正式に認められたパーティーしか入ることができないハウスになんて」

「ハウスってなに?」

「そこは、お爺さんに聞いていないのか……」


 それでどうだ? とエルシーにもう一度問いかける。

 すると、考える間もなく首を縦に振った。


「大丈夫だよ。それに、話の内容も内容だし。兄さんにも、何か考えがあるんだよね?」

「まあ、そうだな。ハウスに到着してから、いやこの話が一通り済んでから話すことにしている」

「それじゃ、さっそく移動しないと」


 話を一度中断し、アルヴィオ達は喫茶店から出て行く。時刻は、そろそろ昼食時だ。腹を空かせている冒険者や一般市民達が、何を食べる? と辺りで話し合っていた。

 そんな中で、ティカはハウスの存在を知らないので、問いかけてくる。


「ねえねえ。これから行くハウス? ってどんな場所」

「簡単に言えば、パーティーを組んだ冒険者達専用の家だ。これは、ギルドから認められてパーティーリーダーが絶対Bランク以上のものじゃなければならない」

「だから、個人がハウスがある空間へと入ることはできない。普通はね」

「ハウスを持っているパーティーがギルド側に正式な入場許可申請を出せば、一日だけその許可を出したハウスのみですが入れるようになるんです」


 つまり、これからアルヴィオ達はミザリィ、ティカの二人の入場許可をギルドで申請するつもりなのだ。入場許可申請は、一日限り。

 次の日の申請を出した時間まで。それを過ぎれば罰則として、ハウスに招待をした冒険者達と入場許可で入った冒険者達から、ランク上げに必要なポイントは引かれてしまう。


 この入場許可は、ハウスに興味がある者達。今後、自分達のハウスを持とうと考えている者達、そしてハウスを持っているパーティーに入ろうと思っている者達に対して、ギルドが決めたこと。

 ハウスの中を見て、そこで暮らし、いったいどう感じたか。

 その体験から、決断をしてもらうために。


「前から興味はあったのよ。でも、私をハウスに入れてくれる優しいパーティーはどこにもなかったわ……最初にパーティーへ誘ってくれた冒険者達は入れてくれるって行ってくれていたのだけれど」

「じゃあどうして?」

「な・い・しょ」

「すごい運動音痴で、周りのことを気にせず魔法をぶっ放す問題児だからだぞー」

「なるほどー」

「もう。はっきり言うわね、あなたは。というか、考えもなしにっていうのは違うわよ。私だって、ちゃんと考えて魔法を放っているわ」


 へぇ、どんなことを考えて? とギルドに入りながらミザリィに問いかけるアルヴィオ。

 アルヴィオ達がギルドに入ったことで、近くに居た冒険者達は一斉に視線を向ける。

 それはそのはずだ。

 このギルドで、いや街でアルヴィオとエルシー、それにミザリィを知らない者達はいないぐらい有名なのだから。

 最近では、よくパーティーを組んで順調にクエストをクリアしているというのもあり余計に。


「おい、なんか一人増えてないか?」

「あの子って、あれだろ? 朝、お金が足りないとか騒いでいた」

「なんだか、注目の的だね。私達」


 きょろきょろと見渡すティカに対して、気にしないほうがいいわよ、とミザリィが制す。


「おや? 随分と注目を集めそうな組み合わせですね。先ほど、新しいクエストが申請されたところですが」


 冗談交じりな言葉を言いつつ、しっかりと自分の仕事を真っ当するワット。だが、エルシーは首を横に振り、近くにあった用紙を一枚手に取った。


「今日は、ハウスへの入場許可申請に来たんです。クエストは、その後で」

「ほう……わかりました。では、必要項目に記載をして、パーティーリーダーであるエルシーさんの端末を一緒に出してください」

「わかりました」


 ワットからペンを受け取り、さらさらと入場許可申請書の必要項目にペンを走らせる。

 その背後では、入って来た時よりもざわついた声が聞こえてきた。


「にゅ、入場許可って……まさか、あの二人をハウスに?」

「てことは、エルシーちゃんはミザリィとあの新人をパーティーに入れるつもりなのか?」

「アルヴィオだけでも、お荷物だっていうのに、大丈夫かよ……」


 お荷物、という言葉を聞きティカはむっと不機嫌そうな表情になる。


「ちょっと! さっきから」

「はいまったー」

「あうっ!?」


 勢いよく振り返り、文句を言ってやろうとしたティカをアルヴィオは止める。無理やり、方向転換をさせミザリィの胸に押し付けた。


「あら、可愛いわねぇティカちゃんは」

「く、苦しい……あ、でも温かいぃ……」


 暴走する子供を宥めるように、ミザリィは己の胸の中でティカを優しく撫でていく。そんなことをしていたら、入場許可申請書をエルシーは書き終わったようだ。

 言われたとおり、端末と一緒にワットへと出し、しばらくすると。


「はい、では、これは許可書になります。二人とも手を出してください」

「こうかしら?」

「ぷはっ!? これで、いいの?」


 ワットに言われ、手を差し出す二人。すると、ハンコのようなものを取り出し二人の掌に押し付けた。


「これで大丈夫です。現在の時刻から、明日のこの時間まであなた方のハウス空間への入場許可を受理しました。必ず、時間内までにハウス空間から出てくるようにお願い致します。出ないと、ポイントを失ってしまいますので」

「わかっているわ」

「はーい」

「それじゃ、行くか。この辺りも騒がしくなってきたし」

「う、うん」


 未だに騒いでいる冒険者達の視線を背中で受けながら、アルヴィオ達はハウスへの入り口であるドアの前に向かう。


「では、ハウス空間へ」


 エルシーがドアを開け、アルヴィオ、ミザリィ、ティカの順番に光り輝く空間へと姿を消していく。


「……おお。ここが、ハウス空間」

「噂通り、とても澄んだ空気で、広々とした場所ね」


 このハウス空間はいったいどれだけ広いのか。そして、どれだけのハウスがあるのか。それはギルド側にしかわからない。

 かなり広大な空間で、ハウスへとはこの先にある転移魔法陣から転移することになっている。更に、ハウスの主。つまり、パーティーリーダーが許可をすればハウスから他のハウスへと転移も可能なのだ。


「転移魔法陣はこっちです」

「ねえ、ここってギルドの中……じゃないんだよね」

「そうじゃない、とは言い切れませんね。私達にもこの空間がどこにあるのか、どういう仕組みなのかはっきりとは理解していませんから」


 神々が作った別世界、と言っている者達もいるぐらい謎多き場所なのだ。


「あ、そういえばミザリィ。話の途中だったけど、お前、何を考えて魔法を放っているんだ?」

「あぁ、そのこと。それは、もちろん」


 ばさぁ! と羽織っているマントを翻し、叫んだ。


「敵をぶっ倒す!! これに限るわ!!!」

「だよね! 戦う時は、それが一番だよ!」

「ええ。単純にして、明確。これ以外ないって、断言できるわ」

「……」


 これには、エルシー苦笑い。

 アルヴィオにいたっては、そっかーとどうでもよくなったかのように空を見上げていた。

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