1.初めての死
私は今、数十人の騎士団に囲まれ剣先を突き付けられている。
なんでこんなことになっているのかを簡単に言うと、国に反乱したと見なされたからだ。
私の名前はアシュリー・フォード、12歳。2人の兄の妹としてこの世に生を生を受けた。
フォード家といえば、今勢力を拡大し続けているイシュバラム帝国の中でも有力な貴族として有名だ。古くから国のために忠義を尽くし国を支えてきた有所正しき一族である。
しかし、それは以前の評価だ。今はフォード家長男が第二王子を殺害したとして牢に閉じ込められた。私の一家はその責任をとらされて貴族の位と資産を剥奪された後、父と母も牢に入れられた。
金も行く当てのない私と次男は仕事を探そうとしたのだが、悪い噂はすぐに広まるもので誰も犯罪者の身内を働かせようとはしてくれなかった。
そして、つい数日前に次男は魔物を狩ってくると言ってから帰ってこない。
私は空腹を堪えて何日も道端で眠り続けていた。しかし、それも我慢の限界だった。プライドを捨てて道を歩く人々に恵みを求めていた。
しかし、その姿を見て足を止める人はほとんどいなかった。道行く人々は私を見ても足を止めずに過ぎ去ってゆく。たまに足を止めたと思ったら、指を指して笑うか怒号が飛んでくるかだ。
もうやってられないと諦めかけた時にそいつは来た。
「お腹が空いてるのかい?」
「はい……もう何日も食事をとってないです。どうかお恵みを……。」
「そうかい。どうやら泊まるところもないみたいだ。よかったら私の家に来なさい。」
その時の私は世界の全てに見捨てられていて正常な思考回路はとっくに失っていた。そしてそんな時に現れたこの男は自分を救ってくれる唯一の人。神様とさえ思えてしまっていた。
「はい。お願いします。」
その日は男の家に着いたら食事を貰い風呂に入って眠った。
問題があったのは次の日だ。私が目を覚ますと身体の自由が奪われていた。両手両足は私が寝ているベットの四方に縄できつくしばられ身動きひとつとれなくなっていたのだ。
「どういうことなの?」
「おーお目覚めか、嬢ちゃん。」
私が困惑していると昨日の男が現れた。しかし、その顔は下卑た笑顔が張り付いて昨日助けてくれたときとの印象はかけ離れている。
あの時は私も限界で、相手の表情を確認できずに、救ってくれるんだという思い込みでいい人に見えただけだったのだろう。
「嬢ちゃんはこれから奴隷として生きてもらうからな。」
その男がそう言うと、男の後ろから一人の老人、さらにその後ろにフードで顔を隠した人物が4人現れた。
私もここまでか……お父さん、お母さんごめんなさい……。親より先に死ぬ親不孝を許してください。
そう、親への気持ちを噛み締めながら、私は舌を思いっきり噛み自ら命を絶った。