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猫より役立つ!!ユニオンバース  作者: がおたん兄丸
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第86話 初めての依頼で迷宮を巡ろう(迷宮ダンジョンから帰還後すぐの広場での出来事)


「とりゃっ!!インパクトスタンプ!!」

「ブモオオオ!!」


 アレンが豚のような姿のモンスターに戦士の技を使ってハンマーの頭部を思い切り叩きつけると、モンスターは豚の鳴き声そっくりな断末魔を上げて地に沈む。そして飛び散った血もろともその姿が消えて、その場に魔貨を残した。


「へっへーん。魔貨ゲット!!セーヌ姉ちゃんよろしく。」

「はい、お預かりしますね。」


 アレンが拾った魔貨を皆に見せつけた後でそれをセーヌに手渡した。ここまでの道のりで目立った負傷を負った物はおらず、治癒士として手が空いていたセーヌには拾得物の預かり役をしてもらっていたのだ。彼女はアレンから預かった魔貨を大事そうに袖にしまう。セーヌの袖には普段は武器のトンファーが隠されており、他にも携帯食や傷薬を仕舞う場所があるのだそうだ。彼女が袖を振って歩くと中の魔貨がじゃらじゃらと音を立てた。


「いい感じじゃないかアレン。呑み込みが早いな。戦士の打撃技、「インパクトスタンプ」…誰に教わったんだ?」

「この間猫亭の裏庭でバレルのおっちゃんにね。あの人(ハンマー)使いだから。他の戦士の冒険者にもいくつか教わったよ。もちろん突撃技と斬撃技もね!!さっきまでは種類があるとか知らなかったけど。」

「頼もしいな。その感じで頑張ってくれ。セーヌも荷物持ちなどやらせて済まないな。そろそろ袖が魔貨で一杯なんじゃないか?半分持とうか。」

「ええ、確かにこれだけの量の魔貨持つのは初めてですが、まだ大丈夫でございます。魔貨はお金に等しき価値の物。落としてしまっては罰があたります。一枚たりとも無くさないように気を付けますのでご心配なく。」

「それは心強い。明日はダンジョンの前になんでもくんを借りてくるから今だけ我慢してくれ。」

「はい、かしこまりました。後方へ戻りますね。」


 クロノスの呼びかけにセーヌは頷いてから編成の後ろまで戻っていくのだった。




 迷宮ダンジョンの一層目を攻略中のイゾルデ御一行。彼女たちは時折襲ってくるゴブリンの集団やそれ以外のモンスターを蹴散らしながら先へと進んでいた。あの後もいくつかの小部屋までたどり着き複数の通路から正解だと思われる道を多数決で決めて進み、当たれば通路を通って次の小部屋へ。外れて行き止まりに突き当れば引き返してもう一つの通路を選び直す。そんな風にしながら進んでいると、新たな小部屋を見つけた。


「…中にはモンスターはいないようだな。ついでに宝箱も。入って大丈夫だ。」

「次の通路は…ありゃ、行き止まり?なんか水晶があるね。さっきのと同じ青いのと…赤いのもある。」


 リリファが先行して中の安全を伝え残りのメンバーが中へ入る。しかしその小部屋には他の通路へ続く穴が無く入ってきた穴が一つ空いていただけ。そして部屋の中央にはスタート地点と同じ青い大きな水晶が一つと、その隣には同じくらいの大きさの赤い水晶が鎮座していたのだった。


「水晶があるってことはここがこのマップのゴールだ。おめでとう君達。迷宮ダンジョン一層目記念すべき初攻略完了だな。」

「って言ってもなぁ、あんまり歯ごたえが無かったと言うか…そこまで嬉しい物じゃないね。」

「お宝も一つも無かったしな。モンスターの種類もゴブリンとさっきの豚のモンスターだけだったし。」

「あら、そうなんですの?あたくしは非常に感動していますわ!!」


 やりごたえをいまいち感じなかったと残念そうなリリファとアレン。一方で雇い主のイゾルデは実に満足気だった。


「まぁ一層目の難易度なんてこんなもんだろ。君達は以前からいくつかのダンジョンに挑戦しているし不満なのは仕方ない。むしろこれで苦戦している様ではこの先たかが知れている。つまらないくらいがちょうどいいんだ。」

「これで終わりってわけじゃないからね。ダンジョンはもっともっと下まで続いているんだし。」

「ナナミの言うとおりだ。実際は連続で下に降り続けるから一層だけで体力切らしていては論外だな。さて、君達はまだ十分体力を残しているようだが…今日は元々迷宮ダンジョンの講座のために一層目だけという約束だ。今から二層目に入ったら地上のキャルロ達との合流に間に合わなくなる。帰るぞ。」

「そうですわね。約束の時間に遅れるなどレディーの恥でしかありませんわ。戻りますわよ。」

「雇い主の言葉だからな。おとなしく従うか。」

「さっき言ったように帰りは青い水晶に触るんだ。一人ずつ確実にだぞ。俺は全員の帰還を確認してから戻るから先に触ってくれ。あと絶対に忘れ物はするなよ?一度ダンジョンを出てまた同じマップに戻れる確率は青天井だからな。中には貴重なお宝や高い装備をうっかり置き忘れて、もし同じマップに入れたら持って帰って来てほしいという捜索のクエストがギルドに出されることもあるんだから。」

「はーい。杖ある…帽子ある…水筒ある…他には特に持ってきてないから…よしオッケー!!それじゃまず私が…」


 クロノスにそう言われて最初に持ち物確認を終えたナナミがひるむことなく青く輝く水晶に手を触れた。すると彼女の体と水晶が一瞬強く光り輝いて次の瞬間にはナナミは消えていた。おそらく地上に戻ったのだろう。ナナミの後を追うようにリリファ、アレン、セーヌ、イゾルデの順にそれぞれ自分の持ち物を確認し終わった者から水晶に触れて消えて行った。最後に残ったクロノスは誰かの忘れ物が本当に無いか周囲をよく確認してから水晶に触れて姿を消した。







 地上にある迷宮ダンジョンへの入り口となる巨大なゲート。そこが光り輝いて中からナナミが出てきた。それに続いて他の仲間も出てきて最後にクロノスが戻ってきて門番に帰還の報告をした。


「俺で最後だ。ご苦労さん。」

「おかえりなさい。収穫はありましたか?またのご挑戦を…六名の帰還を確認しました。続いて他の帰還要請を…」


 クロノスに声を掛けられた門番の男は軽く挨拶をして横の職員に報告をしていた。それからクロノス達は邪魔にならないようにゲートから離れてからそれぞれ久方ぶりの地上の空気を吸っていた。久方ぶりと言っても二時間くらいではあったが。


「帰って来きたよ地上!!」

「二時間だけとはいえ地上の空気を吸う感覚…初めての事ばかりですわ。もう夜ですのね…月と星が綺麗ですの。」


 そう言ってイゾルデもナナミと同じように大きく息を吸って吐いてから空を見上げた。ダンジョンに入る前にはまだわずかばかり残っていた太陽は完全に沈んでおり、今は夜空の月と星々がはっきりと見える。


「外の空気は快適だな。わずか二時間ばかりの別れだったとはいえやはりどこか懐かしい。」

「二時間で一層か。下の方もこのくらいのペースで攻略できるのか?」

「いや、下の階層に行くほどダンジョンのマップは広くなったり罠やモンスターの配置が多くなるからそれの対処のためにもっと時間はかかる。だがしばらくはこのペースを基準に考えるといいだろう。それについても一度ダンツ達と合流してから飯でも食って話し合おうぜ。さて、誰か来ているかな?予定通りなら既に迎えが来ているはずだが…お、いたいた。」

「キャルロさんでございますね。」


 クロノスがそう言ってダンジョンに入る前よりも人がまばらになった広場を見渡して顔見知りの姿を探すと、端の方にキャルロがいたのを見つけた。そして自分達の帰還を伝えるためにクロノスが彼女を呼ぼうとしたが開きかけた口が止まる。それはキャルロの周りを見るからに野蛮そうな格好の男が手に酒瓶を持って五人程で彼女を取り囲んでいたからだった。


「なにか話をしているようですが…キャルロさんの方はなんだかお困りのご様子ですね。」

「ちっ…ありゃナンパされてるな。キャルロは見た目はいい女だからな。しかたない、ちょっと行ってくる。」


 どうやら悪質なナンパを受けていたらしい。クロノスは舌打ちをしてから向こうを見ていたセーヌに伝えてそちらへ一人で向かっていくのだった。





「あの…そろそろ仲間を出迎えなくちゃだから…どいてほしいんだけど…?」

「どーしたお嬢ちゃん?仲間とはぐれたって?そりゃ大変だ。」

「俺らが一緒に探してやるよ。」

「あっちの裏路地が怪しいんじゃない?さ、行こ行こ…」

「俺らが一緒なら大丈夫。お代はそのキレーな体でいいからさ!!」

「あ、ちょっと…!!」


 男達から逃げようとしていたキャルロだったが、取り囲んでいた男の一人が彼女の腕を強引に引っ張って連れて行こうとしていた。キャルロは抵抗のそぶりを見せていたが大の男に女のキャルロが敵うはずもなく、無理やり歩かされる形になっていた。


「ねぇやめてよ…私は猫亭の旦那のお友達だぞ…!!クロノスさんは借りてきた猫の手よりも役に立つ男なんだぞ。どうなっても知らないからね…!!」


 キャルロは引っ張られながら首に掛けた生意気そうな顔をした黒猫のアクセサリーを男たちに見せつけたが、男たちは「似合う似合う。素っ裸でそれだけつけたならもっと素敵だ。」とゲラゲラ笑って相手にしていなかった。


「なんだぁ?猫亭の旦那って誰だよ?」

「猫に手があるわけないだろ。あるのは四本の足だけだ。」

「あっはっは、姉ちゃんもすぐに楽しくなるさ。俺ら冒険者としてはまだまだぺーぺーだがあっちの方は天才的で、イヤイヤ言う姉ちゃんみたいな強気な女も途中でひぃひぃヨガって求めてくるんだぜぇ。姉ちゃんもこれから気持ちよく…ギャフ!!」

「おいどーした?あんまり興奮しすぎて…なんだ!?」


 両の手を気持ち悪くわきわきとさせていた男が、突然奇声を上げて前に倒れた。他の男たちが何事かと倒れた男の後ろを見れば、そこには剣の柄を倒れた男の頭があった場所に振り下ろしたクロノスがいたのである。


「あ、クロノスさん…」

「なんだおめぇ、俺らの神聖な男のナンパを邪魔する気か!!」

「別に彼女が乗り気ならば止める気は無かったんだがな。どうやら嫌がっていたようだし、それに彼女には俺たちを宿に案内するという大切な使命がある。それを放棄してもらう訳にはいかない。…なにより、その思わずぎゃふんと言わせたくなるような黒猫を見せつけられたのなら俺は役に立つ猫にならなくてはならないのさ。」

「何言ってんだコイツ…酔っ払いか?」

「ふん、誰だか知らねぇが俺たちがどこの誰だかわかってんのか?」

「ああ知らない。ぜひともご教授願いたいね。」

「あ…?ごきょ…なんたらってなんだよ?まぁいい。聞いて驚け、ションベン垂らして後悔しろ!!俺たちゃ泣く子も黙る冒険者クラン「バンデッド・カンパニー」の団員だぜ?おらどうだ参ったか?」

「お前終わったぜ?俺たちの愛の儀式を邪魔しやがって、財布から全額出したって許してやんねぇ。」


 どうだと得意げな顔で誇る男達だったが、クロノスは顔色一つ変えなかった。男たちはそれをビビッて声も出せないと勘違いしてますます調子に乗った。


「なんだこいつ、声も出せなくなってやがるぜ。」

「ちょうどいいや。この姉ちゃんに俺らがかっこよくて強いってこと見せてやろうぜ。…うりゃ!!」


 男の一人が無言になったクロノスに手に持っていた酒瓶を勢い良く叩きつけた。それはクロノスの頭に見事に当たり砕け散って周囲にわずかな中身と破片を撒き散らした。


「クロノスさん…!!」

「ヒャーハッハ!!見たか?気持ちいいくらいのクリーンショット!!余りの痛さにこいつも気絶して…えっ…!!」

「…それが君達のカッコよさなのか?」


 瓶を叩きつけた男はしばらく下品に笑っていたが、次の瞬間に声を失った。あれだけ強く叩いたはずのクロノスが何事も無かったかのようにぴんぴんとしていたのである。頭は飛び散った酒で濡れていたがそこに傷はなかった。


「なんだコイツ…痛くないのか?」

「痛いかって…ああ痛いさ。バカで面白い冒険者ではなく君達のようなバカで話にならない哀れな冒険者気取りの姿を見ていると、俺の心が痛い。こういう救いようのない奴が冒険者全体の評価を著しく下げてしまうのだな。ミツユースに住み着いてからしばらく見なかったが…いや、ナナミの時に三人斬ったか。あれは冒険者を隠れ蓑にして犯罪をメインにした奴らだったから今よりもっと論外だが…まぁいい。とにかくこんな連中がいると思うと自分が冒険者であることに誇りを失いそうだ。」

「何だコイツ…冒険者に誇りなんてあるわけないだろ!!」

「あるのは家の中のキッタナイ埃だけだぜギャハハ!!」

「なんかむかついたからこいつ囲んで嬲ってやろうぜ!!」

「おうよ!!俺たちバンデッド・カンパニーの底力…見せてやろうぜ!!」

「バンデッド・カンパニー…?またあそこなのか。ったく、赤獣庸兵団といいここといい…どうして大手のクランなのにこうダメダメなのかね?しかもそういうところに限ってなぜか人が集まるし…俺がまじめにやっても集まったのは四人だぞ。羨ましいを通り越して妬ましいぞ…!!」

「あ…ちょっと…」


 四人の男たちはそう言ってクロノスを馬鹿にして腰や背中の武器を取り出した。それを見たキャルロが顔を青くして四人を止めようと前に出た。


「どうした姉ちゃん?相手なら後でヒィヒィ言うほどしてやるからちょっと待ってな。」

「やめといたほうが…いいと思う…ただじゃすまないよ…」

「こんな何言ってんのかわからない酔っ払いを庇ってやるなんて嬢ちゃんは優しいねぇ。」

「なぁに、別に殺しやしねぇよ。適当なところで済まして…そりゃ!!…あれ?いねぇ…どこに…?」

「あいつ逃げたか?」


 キャルロの警告を無視して男の一人が手にはめたナックルダスターでクロノスの腹を殴りつけようとしたが…そこにクロノスの姿は既になかった。ならば彼はどこへ行ったのかと男たちが周囲を探せば…


「ぐべ」「ぐあ」「ぐっ」「どお」

「ナンパは結構だが相手を選べよ。乗り気の雌犬(ビッチ)な奴だけ連れて行け。」


 途端に全員がその場に倒れ、気を失った。そこで初めて消えたクロノスが彼らの前に降り立つ。そして彼の姿を見つけたキャルロが心配して駆け寄ってきた。


「クロノスさんありがとう…さっき殴られてたけど大丈夫…?」

「あんなもん猫のじゃれあいより軽い。君こそ大丈夫だったか?」

「私は大丈夫。くそ…男の時と同じ勝手で歩いて失敗したね…ミツユースではそんなことなかったから油断していた。」

「そういや君は元男だったか。まだ慣れぬ体だろうがこれからは気を一層引き締めると言い。今の君は外から見たら麗しい魔術師の女性冒険者でしかないのだから。」

「元男だと私が性転換したみたいじゃないか…まぁ似たような感じなんだけど…とにかくそうするよ。でもそれもこれもクルロのせいだよ…本当はあいつを迎えに行かせたかったんだけど…あいつ宿を見つけた後でどっかに消えちゃってさ…たぶん昔の女に会いに行ったんだと思う。カルロの記憶は私にもあるんだ。だからわかる。あいつが男なせいで私は女になって男にも女にも走れないで悶々とした夜を…!!」

「クロノスさんご無事ですか!?」


 キャルロがぶつぶつと言っているとゲートの方からセーヌ達が駆けつけてきた。どうやら騒ぎに気付いて来たらしい。クロノスが平気だと返事をするとセーヌがハンカチを手渡してくれたのでそれで濡れた頭を拭いていた。


「もう終わったから問題ない。ただの悪質なナンパだった。」

「おかげで助かったよ…もう少しで裏路地に連れていかれてイイようにされていたね…」

「一人の女性に五人掛かりで無理やりなど強姦と変わらないな。」

「この人たちこんなにして大丈夫なの?なんかどこかのクランの団員だとか叫んでいたし…因縁つけられたりしない?」


 ナナミが近くに落ちていた木の棒で気絶した男の一人をつんつんと突いていたが、やがて興味を無くして棒を男の鼻に突き挿して捨てた。


「それなら大丈夫だ。この程度は迷宮都市でいつもどこでもある冒険者同士の些細な喧嘩の一つに過ぎない。そして俺が勝者なら他の奴は何も言わないさ。」


 周囲には騒ぎを目撃していた冒険者や食い扶持を探す浮浪者が集まっていたが、誰も気にはしていなかったようだ。それどころか浮浪者の一人が倒れていた男の懐から財布を盗みだす始末。それを見た何人かがずるいぞ俺もと他の倒れた男から同様に財布や装備を剥ぎ取っていた。


「うっわリアル羅生門…迷宮都市えげつないわ。」

「バカをやらかさなければああはならない。君達も気を付けるんだぞ?やる時もやられるときもな…それで、迎えに来たってことは宿は見つかったんだろう?」

「あ…そうだよ。ちゃんと全員一つの宿で泊まれるところを見つけたんだ。下の階は壁を一面空けた外に吹きさらしの酒場になっていてそこでご飯とかも食べれるんだよ。今頃ダンツ達が席を取ってお腹を空かせて待っているから話はそこでご飯を食べながらにしよう。」

「やったー!!ごはんごはん!!もうお腹ペッコペコ。初の迷宮都市ごはんはどんな味かな~。」

「お前は本当に食うことばかりだな。」

「また誰かが絡んでこないようにしないとね。おいらたち女の人と子供ばっかりだから。」

「うん…なるべく大通りを歩いて行こう。ちょっと歩くけど…着いてきて。」


 キャルロは皆にそう伝えて先導する形で前を歩き出した。そのすぐ後ろでセーヌがまたキャルロに誰かが絡んでこないように見張り、他の仲間も着いていき広場を後にする。そして残ったイゾルデとクロノスが彼らの後を追おうとしたところで、イゾルデが足を止めてクロノスへ話しかけてきた。


「あなた…か弱き女性を守ることもできるのですわね。少し見直しましたの。」

「そりゃどうも。依頼主に高評価をいただけて冒険者冥利に尽きるぜ。」

「調子に乗らないことですね。あくまで一紳士として評価しただけにすぎませんわ。あたくしには依然としてあなたのような胡散臭い人間に合わせる足はありませんの。」

「俺は猫の手よりも役に立つ冒険者だぜ?足よりも手を合わせてほしいね。」

「言っている意味がさっぱり解りませんの。それに猫に手はありませんわ。あるのは四本の足だけですの。」


 イゾルデはそれだけ言ってからぷいと前を向いて仲間を追った。


「…なんか俺にだけツンツンしすぎではなかろうか?いや、これは逆に好感度が俺一人だけ上がったことで反応が他の奴と違くなったのかも…そうだ!!そうに違いない!!いやぁ、モテる男はつらいなぁ…ハッハッハ!!」


 最後に広場に残ったクロノスは、イゾルデの対応をポジティブに捉えながら高笑いして広場を後いするのだった。

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