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猫より役立つ!!ユニオンバース  作者: がおたん兄丸
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第62話 小さなチャレンジ・スピリッツ(消えた冒険者達は何をしているのでしょう)


「おーいだれかー。へるぷみー。めいあいへるぷゆー…あれ?私を助けてほしいってこれであってるっけ?まぁいいや。英語2のナナミさんにはわかりません!!へーいりっすん!!」


 間抜けな声で助けを求めるのは猫亭の団員で魔術師の少女ナナミだった。彼女は自分が入っていた檻の鉄格子を握ってゆさゆさと揺らす。しかし硬い鉄格子はピクリともせず自分の体がゆらゆらと揺れるだけだ。やがて意味がないと諦めて手を放した。


「はぁ…ダメか…」

「いい加減にあきらめろ。檻から出られないかさっき皆で試しただろう。」


 へこたれるナナミに話しかけたのはリリファだった。彼女もまたナナミと同じように檻の中に閉じ込められていたのだ。ナナミとリリファだけではない。彼女たちのカメガモ捜索チームの冒険者や他の冒険者も同様に広い檻の中にいた。ではなぜ彼女たちが降りの中にいるのか?まずはそこから振り返ろう。





 謎の骨塚を発見し報告のために戻ろうとしていたナナミ達だったが、道の途中で濃い霧が突然立ち込めた。そしていつの間にか仲間のメルシェがどこかえと消え、これ以上はぐれないようにお互いが固まったところで巨大で毛むくじゃらなモンスターに襲われたのだ。今のナナミ達はくじ引きで決めた適当なパーティーだ。役割や連携があったもんじゃない。それに霧の中ではなぜか体が重くなり思ったように戦えなかったのだ。


 そういった事情もあり今のメンバーでは勝ち目が望めないと全員一致で逃走を試みて走り出したところで…地面に穴が開いてナナミ達は地下深くへ落とされた。気が付くと今いる広い檻の中に捕まっており先に捕まっていたリリファ達のチームやその他の冒険者達がいたのだ。話を聞けば皆同じように仲間とはぐれた所にモンスターに襲われ、穴から落ちてしまったらしい。


「鉄格子は硬いし仮に出れても時々あの毛むくじゃらが巡回に来ているからな。この檻は私達を外へ出さないのと同時に外の脅威から守ってくれている。怪我人もいるんだ。何かしたところで壊せるとも思えんが下手に手を出さない方がいいぞ。」


 そう言ってリリファは奥の方で治癒士から手当てを受ける怪我をした冒険者達を見た。彼らはここへ落ちる前にナナミ達同様に毛むくじゃらのモンスターと戦って怪我を負ったり、地面の穴から落ちた際受け身に失敗して体のどこかを痛めてしまった者たちだ。幸いにも死人は出ていなかったが骨を折る重傷者も何人か出ており、次に毛むくじゃらとの戦いになれば命の保証はないだろう。


「ウチの治癒士四人のチームが真っ先に捕まっていたのは不幸中の幸いだったな。」


「いつつ…」「ほら我慢なさい。ターナ、こっちの奴にもヒールかけて。」「セーヌ様がいない…やる気が出ない…」「だってさ。」「あの子…しょうがない。この秘密兵器を…ほーら。」「そのハンカチ…!!セーヌ様の香り!?」「私が怪我したときにセーヌにもらったのよ。もちろん彼女には同じ物を買って返してある。欲しい?」「欲しい欲しい欲しい!!」「じゃみんなにヒールかけて。」「おまかせあれっ!!「オーバーヒールサークル」!!」「…痛みが引いてく!?」「こいつ…上級の神聖術を無詠唱で…化け物か…!!」「ご苦労様。それじゃはいこれ。」「うおっはぁ!!スーハ―スーハ―ペロペロモグモグ…!!」



 奥で冒険者達を必死に治療する四人の治癒士達。他にも何人かの治癒士が怪我人の治療に当たっていた。檻は一面を除いて全て岩に囲まれており、檻というよりは岩穴の開いたところに鉄格子を足したと言うのがふさわしいように思えるつくりだ。一面からは綺麗な湧き水が流れ出ておりそれで清潔に怪我人の手当てが行えた。


「うーす。戻ったッスよ。」

「ただいまー。」

「あ、ダンツさんとエティさんお帰りなさい。どうだった?」


 ナナミ達が話し合っていると捕まった冒険者の集団の中からダンツとエティがこちらへと来た。彼らは先に捕まった冒険者に話を聞きに行くと共に自分達のチームの姿を見せない何人かを探しに行っていたのだ。


「メルシェさんいた?」

「いなかったねー。僕らの所のニャルテマもいないみたいだったよー。ナッシュのとこもカエルのゲルンがいないってー。」

「ゲルンは上手く逃げおおせたのかそれとも他の冒険者に美味しく頂かれたのか…できれば前者であると祈りたいもんッスねぇ。まぁウサギのユニスが無事なんだから大丈夫じゃないッスか?」

「そうなってないことを祈るけど…それにしても捕まった冒険者たくさんいるわねー。」


 ナナミが周囲を見渡せばそこには自分たち以外のたくさんの冒険者がいる。実はメルシェ達はモンスターと遭遇することなく本部へと戻ることができたのだが今のナナミ達はそれを知る術がない。


「他も何人か捕まらなかったパーティーがあるみたいだねー。それにしてもこの数…いったいどれだけいるのやらー。」

「それならクルロ達が数えている。正確でなくていいと言っていたからもう戻るだろう。」

「終わりましたー!!こっちで捕まっているのは~なんと百人!!クルロさん達は百人数えましたぞ!!」

「こっちも…百人。猫亭出入り組のチームも何人かいたよ。おおざっぱだから数え間違いはあるけど…」


 噂をすれば影か。捕まった冒険者の数を数えていたその他のメンバーがちょうどよくこちらへ戻ってきた。


「なら捕まったのは約二百…カメガモを探しに来た半分が捕えられてしまったのか。」

「さすがにこれだけいなくなれば他の連中が探してくれると思うッスけど…まずここがどこなのかわからんことにはどうしようもないッス。」


 捕まった冒険者達は全員大きな檻の中だ。檻から外を覗いても奥にある通路の突き当りまでしか見えず、そこから先はどうなっているのかわからない。ここから出られないのでここがどこなのかわからないでいた。


「こうなったら…しるしるくーん出ておいで―。」

「オヨビデスカななみサマ。」


 ナナミが自分の短杖をぶんと振るとその先端から白い物体がもにゅんと現れた。ナナミが旅立つ際に師匠からもらった魔法生物しるしるくんである。驚くダンツとエティだったが前に一度見たことのあったリリファは特に動じなかった。


「わっ、なんだそれ?」

「ほぉー、魔術師の使う使役魔導獣ってやつッスかね。ナナミちゃんいいもん持ってるじゃないッスか。」

「そういやそんなのいたな。久しぶりに見た。」

「一人の時に時々出してたよ?ね、しるしるくん。」

「前回ノ起動カラ、37日ト6時間9分21秒ブリノ起動デス。」

「…あれ?」


 久しぶりだなとがっかりしたような物言いで告げるしるしるくんを見てナナミは思い出した。一月ほど前に自由市でリリファに初めて見せてから一度も出していなかったことに。


「あ、あはは~。旅ではしょっちゅうお世話になっていたから。…だってこっちに来てからわからないことは誰かが教えてくれたもん。特にクロノスさんとヴェラさんが。もうね、知識の量がすごい。歩く人間図書館って感じだもん。」

「イエネ、イインデスヨ。ななみ様ガワタシヲ必要トシナイコトハ。全然、コレッポッチモ気ニシテオリマセン。ナナミ様ガ助力ヲ求メタトキノミ知識ヲ役立テル。ソレガ私ノ作ラレタ意義。」

「ゴメンってば。それよりここってどこなのかな?座標機能とかでわからない?」

「…少々オ待チクダサイ。」


 しょぼくれているしるしるくんに君は役立っているとナナミはフォローしてから彼にそう尋ねた。しるしるくんにはナナミの師匠が付けた様々な機能がありナナミの旅を手助けしてきた。その中には自分がどこにいるのかを調べる機能もあったはずだ。しるしるくんは気を取り直してから頭を上に伸ばして鼻をくんくんと引くつかせる仕草をした。


「位置情報ヲ取得デキマセン。デスガ…特殊ナ魔力ノ残滓。ソレニもんすたーノ臭イ…答エヲ導キ出スニ、ココハだんじょんノ中デアルト推測シマス。」

「「ダンジョン?」」


 しるしるくんのダンジョンという単語を聞きダンツとエティは考え出す。そして答えを見つけたのだろう。二人は顔を見合わせうんと頷いてから答えた。


「なら多分「うすのろの休憩室」ッス。」

「この辺で一番近いのはそこだからねー。他のダンジョンは湖からだとかなり遠いからありえない。ならあの毛むくじゃらはトロルだろうねー。そこの守護者がトロルだった気がするよー。」

「そういえばダンジョンは異空間なのよね。それなら位置情報がわからないのも無理ないか。ありがとうしるしるくん。また何かあったら教えてね。」

「御意。」


 ナナミはしるしるくんに礼を言って彼を短杖の中に戻した。使役魔導獣である魔法生物しるしるくんは主であるナナミの魔力を使って形を保っている。いつまでも出していると魔力の無駄使いになるので、魔力は節約したい今は出しっぱなしにしておくのはよくないからだ。


「ダンジョンと言えば私達が落とされたあの穴…前によそのダンジョンで私が引っかかった落とし穴に似ているな。」


 冒険者達をここまで運んだ穴にリリファは見覚えがあった。ここ一か月で挑んだダンジョンの一つにあった罠の落とし穴。それに良く似ているのだ。リリファは解除が難しいトラップなのに調子に乗って解除しようとして不用意に上に乗っかり、一人下の階層に落ちてモンスターに囲まれてしまった。そして急いで助けに来たクロノス達にしこたま怒られたのだ。そのことを思い出して恥ずかしくなったリリファだった。


「でもダンジョンの罠がどうして外に?」

「誰かが真似してイタズラで作ったんじゃないのー?」

「冒険者くらいしか来ないこの森にわざわざ精巧な偽物造るか?どんだけ冒険者に恨みがあってもそんなことする暇人はいないッス。もちろん同業者にもな。」

「じゃあ誰が何のために…」

「ハイハイハイ!!それだけじゃないよ!!クルロさんとキャルロはあの霧に見覚えがあります!!」

「霧の中では力が鈍くなった…たぶんあれ「地下霧ダンジョンミスト」だよ。ダンジョンの中で前触れなく突如発生して冒険者に体の不調を起こさせるヤツ。」


 落とし穴の作り主を意見し合っていたダンツとエティの話に割り込むようにクルロとキャルロが入ってきた。曰くあれは一部のダンジョンの中で発生する地下霧ダンジョンミストであると。


「ダンジョンの罠にはそういうのもあるんだね。ミツユースのダンジョンには無かったトラップだけど。」

「結構難易度高いダンジョンでしか発生しない罠だからね…ミツユース周辺の低レベルダンジョンじゃあまずお目にかかれない。それに罠といってもダンジョン内の天候みたいなものだから人為的に解除とかはできないよ。中には対処できる「祈祷師シャーマン」とかいうレアな職業クラスもあることにはあるけどそれはおいといて…今回のは弱めだけど酷い時は目が潰れて息もできないんだ。でもモンスターには影響ないみたいで…迷宮都市の迷宮ラビリンスダンジョンで遭遇したときは当時私がいたパーティーが半分死んだ。」

「でもでもでも!!そのおかげで死んだリーダーの彼女寝取ることに成功したんですけどねー!!いやぁ、悲しみに暮れる女はあっちの具合もぐちょぐちょで最高でしたよー!!」

「まぁ当時の記憶がある私としてもそれは同感…はっ。私は女の子ラヴとかじゃないからね!!普通に男は好きだよ…!!ただこれはカルロの時の話で…いやカルロがホモだったわけじゃないよ…!!ああ紛らわしい…!!」


 過去の自分と今の自分をあたふたしながら必死にフォローするキャルロを無視して五人は話を続けた。実はクルロも相棒を無視していたりするがもしかしたら意外とドライな性格なのかもしれない。


「カルロが迷宮都市に行ったことあるとかカルロ結構下衆だなとかそういう話は置いておいて…とりあえずはどうやてってここから出るかだが。」

「というか助けは来そうなのか?」

「それはわかんねぇ。ここが仮にうすのろの休憩室だったとしたらあんまり人気のないドマイナーなダンジョンだからな。ミツユースが地元の俺たちですら来たことない。そもそも外の奴らは俺らがダンジョンに捕まっていると思うかどうか…」


 割り込んで他の冒険者との話を打ち切って戻ってきたグザンが会話に入ってきて助けは期待できないと首を振った。


「まぁ何が必要になるかもわからんッスからとりあえず怪我していない冒険者にも協力を呼び掛けて…ん?この揺れは…」

「天井が開いたぞ。次の御一行が到着だ。」


 ワイワイとこれからを話し合っていた冒険者達だったが、頭上から大きな音がして牢獄の天井がぱかりと開くのを確認した。おそらく新たに捕まった冒険者が落ちてくるのだろう。ナナミ達の時もそうだったらしい。


「おーい、天井が開いたぞ。」

「そこで休んでる奴ら。どかないと潰されちゃうぞー。」

「あ?おわっ天井が!!」「避けろ避けろー!!」


 穴の下にいた冒険者がそこに置かれた上着を集めて作った即席のクッションからどくと同時に四人の冒険者が上から落ちてきた。


「グエッ!!」「ひょん!!」「うわぁ!!」「ぐっ…!!」


 クッションの上に無事着地したが即席のクッション故防御性能はそこまで高くない。痛みで体のあちこちを抑える冒険者達に治癒士が駆け寄り治療した。


「ほら、しっかりなさい…ヒール。」

「あいたたたた…ここは…?」

「いやー、治療士がそれなりに捕まっていて助かったッスね。さてさて落ちてきたのは…およ?オルファンのとこッスか。」

「え?ダンツ…それにみんなも。ここは一体…」


 新たな犠牲者は湖周辺の捜索をしていたオルファン達のチームだった。そしてダンツ達はこれまでに落ちてきた冒険者達と同じように事のあらましを伝えるのだった。







「あのモンスターはトロルって言うんですか。名前だけならおとぎ話とかに時々出てきますよね。絵本ではずんぐりむっくりな森の妖精さんって感じだったけど…現実は厳しいね。」

「やっぱり。前にアカデミーの図鑑で見たことあると思ってたんだ。」


 怪我は大したことの無かったオルファンとヘメヤはナナミ達が推測したモンスターの名前を聞かされて納得していたようだった。バレルとセインは老齢で腰を痛めた事と小太りであったため足を痛めてしまい引き続き治療を受けていた。


「アカデミー出身のヘメヤが言うんならトロルで確定だろ。」

「それにしても守護者様は何をどうして地下霧ダンジョンミストと落とし穴を使ってまで俺らを捕まえてるんだろうな。しかもダンジョンを飛び出して。てゆうか出られないだろダンジョンモンスターは。」

「えっ?守護者?ちょ、ちょっと待って!!」


 ダンツとグザンに慌てて手を伸ばして制止の合図を送ったのは話を聞いていたオルファンだった。彼は眼鏡をかけ直してから告げる。


「ダンジョンモンスターなのは倒したら消えて魔貨を落としたからそうなんじゃないかと思っていたけど…守護者?ないない。僕らは四匹も倒したんだよ。一匹だけならともかく複数匹いる守護者なんて聞いたことないよ。」


 証拠だとオルファンが自分の懐から四枚の拳大のトロルの魔貨を取り出した。代表として預かっていたらしい。


「ホントだ…私達の時は一匹だけだったからそれしかいないのだと思っていたけど、まさか何匹もいたなんて…」

「守護者でないのなら…ダンジョンの雑魚?そんなまさかアハハ…」

「だな。そもそもトロルクラスのモンスターが雑魚として何匹も出るダンジョンだったら今頃うすのろの休憩室は大人気ダンジョンになっているはずだ。上級冒険者パーティー限定のな。」


 そんなわけはないとアハハと笑って見せるダンツとグザン。その横でリリファが次の質問をする。


「というかお前らあれを四匹も倒したのか。地下霧ダンジョンミストあったんだろう?よく戦えたな。」

「霧の対処法はヘメヤがある程度知っていたからね。それに僕らは即席のチームでも運よく構成が良かったんだ。戦士ウォリアーのバレルのじっちゃんとセイン。治癒士ヒーラーの僕に猟兵レンジャーのヘメヤ。そして剣士ソーディアンのジェニファーに射手アーチャーのチェルシー。魔術メインはいないけど中々のバランスでしょ。それなりに戦いに馴れた連中だったと言うのも良かったね。てゆうかティルダンと戦った時のことを考えれば楽勝さ。」


 以前の壮絶な戦いを思い起こしてオルファンはうんうんと頷いた。だがその話を聞いて新たに疑問が生まれたのが横のナナミだった。


「そういえばジェニファーさんは?チェルシーもいないね。」


 先ほど落ちてきたのはオルファン、ヘメヤ、セイン、バレルの四人だけだった。チェルシーは本来クロノスとセーヌのチームだったはずだが、解散前にジェニファーに着いていくのだと駄々をこねて引っ付いていたことを思い出す。


「それが…五匹目が出た所で付き合いきれないと撤退したときにはぐれてしまって…上手く逃げているといい…ぐえー!!」


 二人の安否を心配するオルファンの上に二人の冒険者が追加で降ってきた。話に夢中になるあまりいつの間にか座り心地の良いクッションの上まで移動してしまったらしい。そしてこれで終わりだとばかりに天上の穴が閉じられた。


「お、重い…」

「レディーに対して失礼ね。紳士としての礼儀が足りないわ。」

「品格。0点。」

「あ、ジェニファーさん。それにチェルシーも。」


 追加で降ってきた二人の冒険者はジェニファーとチェルシーだった。オルファンがクッションになったことで二人には着地の際の怪我も無かったようだ。下のオルファンはどうか知らないが。


「ぐ、ぐえー…」

「あら大変。よっと…」

「どくね。」

「怪我人追加だー。運べ運べ―。」

「あれ?オルファン無事じゃなかったの?」

「こいつ治癒士じゃーん。」

「あーあ、貴重な治癒士が…ってあれ。ジェニファーさん怪我してる!?」


 オルファンが泡を蟹のように吹き出し始めたのでどいた二人の兎獣人。そしてオルファンは怪我人運び要員の冒険者にこれ以上仕事増やすなとぐちぐち言われながら治癒士の所へ運ばれていった。治癒士が治癒士に治療を受けるとは…そう思っていたナナミとリリファだったが、ふとジェニファーを見れば彼女は利き腕をかばうように抑えており、そこには大きな青い痣を作っていた。


「大丈夫…ただの軽い打撲よ。打撲程度に手加減されたと言うべきかしら。」

「手加減?トロルにッスか?」

「トロル?ああ、あのデカブツの名前ね。残念だけどそいつじゃないわ。最も、あれに手加減なんてテクニックあるとは思えなかったけど。」

「え、じゃあ誰が…」


 ダンツがそう尋ねるとジェニファーと彼女にぴったりと張り付くチェルシーは首を横に振って否定した。


「トロルではないわ。私達はあいつに捕まったの。霧とトロルを操って冒険者を捕えている奴に。」


 そう言ってジェニファーは天井の下から上着のクッションの一つを抜き取って座ってからオルファン達とはぐれた後何があったかを静かに語りだした。



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