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渚への想い

渚の家はうちの真隣だ。二人とも自分の部屋は2階だが、向き合っていないため窓から窓へ移るといったメルヘンチックな事は一度もなかった。


「ピンポーン♪」


インターホンを鳴らすと渚が出た。


「あ、楓斗! 今開けるね」


渚が走ってくる音が聞こえドアが開く。


玄関には渚の家の愛犬"ミルク"がおすわりをしていた。ご存知のように、ミルクはラッキーとともに見つけた犬だ。

ラッキーの毛並みは茶色に近い色なのに対し、ミルクは白に近い金色のような色だ。

どちらも綺麗な色で触り心地が最高に良い。


ミルクの美しい毛並みにしばらく埋もれていると


「早くしないとお母さん帰ってきちゃうよ!」


と渚が急かした。


リビングに行くと11歳になる渚の

弟と妹が学校の宿題らしき物に夢中になっていた。


「あ、楓くんだ! こんばんは!」

「こんばんは。久しぶり!」


と挨拶をしてさっそく料理に取り掛かる。


「渚。買ってきた材料ってどこにある?」


手を洗いながら聞く。


「冷蔵庫にあるから今出すね!」


渚が買ってきたハンバーグの材料をキッチンの上に並べた。

それを僕が確認する。

(合挽き肉…玉ねぎ…卵…パン粉…よし)


「材料はばっちりだ!作り方は覚えてるか?」

「うん!なんてったって得意料理だからねっ」


ドヤ顔で言ってから渚は玉ねぎを手に取り、両サイドを切り落として皮を剥がした。


それからどんどんどん剥いていく。


「渚……ちょっと待っ……」


遅かった。


「あれ?玉ねぎって全部剥いて使うんじゃなかったっけ??」


大学生なんだからせめて玉ねぎの一般的な剥き方ぐらいは覚えていて欲しかった。

仕方がないのでそのまま微塵切りにしていき、調理を進めていく。

渚も不器用ながら一生懸命作っている。

そのせいか、顔に挽き肉がくっついている。どうしたらそんなところに付くのだろう…


フライパンに油を垂らし、ハンバーグのたねをこんがりと焼いていく。 両面焼けたところで水を入れて蒸し焼きにして完成だ。

ハンバーグを二人で試食してみる。

まず僕が焼いたものだ。


ごく普通のハンバーグ。


次に渚が焼いた分だが…

外は黒焦げ、中は半生になっていた。

これも一種の才能なのだろうかとも思ってしまうほど見事に失敗していた。

中学生の頃は見た目は良かったのに下手になってはないだろうか。


僕が多めに作っておいて良かった。


なんとかハンバーグを完成させ皿に盛りつけた。

すると、玄関のドアが開く音がした。


「ただいまー」


渚のお母さんとお父さんが帰ってきた。

弟と妹、ミルクが玄関に走って行き、渚もその後を追う。

渚はお母さんに抱きつき、涙ぐみながら


「おかえりなさい」


と言った。

リビングに全員集まり、挨拶をした。

渚は、


「今日は渚特製ハンバーグでーす」


と自信満々に言いながら食卓に並べていった。


僕は、久しぶりの一家団欒を邪魔しないように静かにうちへと帰ろうとした。


家に帰ろうと靴を履いている時に渚が走ってきて笑顔でこう言った。


「"ありがとう"」


その笑顔は僕の心を撃ち抜いた。そして思ったのだ。

(やっぱり渚のことが好きだ) と。


将来の夢を叶えることができたら渚に告白しよう。


楓斗は自分の心でそう決意し、家族が待つ

家へと帰っていった。


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