愛犬ラッキーと獣医さん
帰宅すると我が家の愛犬であるゴールデンレトリバーのラッキーが玄関に走ってきた。
ー ラッキーは僕が小学校六年生の時に渚と下校中に見つけた捨て犬のうちの一匹だ。
一匹は片足を車にでも引かれたのだろう。
酷く出血していてかなり弱っていた。
もう一匹は幸い無傷だったが人間を怖がり、怪我をしている犬と一緒にうずくまっていた。
急いで家に帰り、動物病院に連れて行ってもらった。
女の獣医さんは僕と渚に向かって
「よく見捨てなかったね。ちゃんと助けて
君たちはえらいよ」
と言ってくれた。
「あとは私たちに任せて待合室で待っててね」
と優しく微笑んでから獣医さんは早足で手術室に戻った。
2時間後、獣医さんが出てきた。
「手術は成功したよ。君たちが見つけてくれていなかったら仔犬たちを助けられなかったかもしれない。君たちがこの仔たちを救ったんだよ」
その言葉は小学生の僕と渚の心に響いた。
(僕たちが…助けた…)
僕は命を救えたという嬉しさとともにあんな酷い状態から助けられた獣医さんに憧れを抱いた。
ほぼ同じ時に、渚も思った。
(私も動物を助けたい)と。
それから順調に回復したラッキーは家で飼うことになり、もう一匹はミルクと名付けられ、渚の家で飼うことになった。
それから十年近く経った今でも皆から愛されて元気に育っている ー
玄関に走ってきたラッキーは
「僕を撫でて!」と言わんばかりに甘えてきた。
ラッキーを優しくワシャワシャと撫でながら
リビングに向かい母親に、ハンバーグのことを話し、渚の家に向かった。




