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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第四章
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第⑤話 参観日です~釣り少女、『魔眼』解放。え?~

 

 その後。

 大量のフグが釣れたり、それを見て日向陽毬さんが絶望したり、そんな娘を見て日向紅葉さんが爆笑したり。

 更には桔梗トトキさんが地味に焦ってたり、その様子を見て波澤翠さんがニヤニヤしてたり。

 

 とにかくカオスでした。

 ツッコミどころが多すぎて、どこを注意して良いやら。


 取り敢えず、そんな状況で十六夜親子が静かに周囲を観察しているのが、何気に一番カオスな気がします。

 どうせ腹の中では色々と渦巻いているんでしょう?

 何か(彼らにとって)愉快な事を考えてそうで不気味です!


 何にしても、とにかくメチャクチャで混沌として。

 どこにも枠の存在しない無秩序状態です。


 それは普段の私なら即座に正そうとする状態。

 調和を崩す、否定すべき狂乱。

 なのですが……。


「……」


 不思議とその気が起きません。

 どう言えばいいのか分かりませんが、これでいい気がしています。


 感じたものを無理やり言葉にするなら、秩序のある無秩序……?

 混沌とした状態こそが安定している状態……?

 何故でしょうか。

 こんなにもまとまらない空気の中で、皆が生き生きとしています。


 もしかして私は間違っていたのでしょうか?

 調和に固執するあまり本来の目的を、『みんなが笑顔でいてほしい』という想いを忘れていたのでしょうか?


 少なくとも今までのやり方では、彼女たちにこんな笑顔を浮かべてもらうことは出来ない。

 それだけは間違いないです。


 ……そんなことを考えている間に、スクリーンの中では動きがありました。

 桔梗トトキさんが突然、ダメージを受けたかの様にふらつきます。

 フグばかり釣れていることを気にしているのでしょうか?

 すかさず、十六夜称美さんが何か声をかけています。

 こういうフォローの目敏さは凄いです。

 クラス委員長として私も頑張ってはいますが、気が付かずに見逃してしまった部分に、直ぐさまフォローを入れているのをよく見かけます。勉強になります。


 あれだけの気配りが出来るなら、桔梗トトキさんと日向陽毬さんをクラスに溶け込ませることも……いえ、無理やり調和させるだけではダメです。彼女たちの居場所がここであることに変わりはありませんから。


 まだ部活動参観は始まったばかりですが、この部を否定しようとは最早思えなくなっていました。

 ここは彼女たちが彼女たちらしく生きる為に必要な居場所です。

 だったら私は……、


 そうして静かに考えをまとめていた時でした。

 桔梗トトキさんが……なんでしょう?

 目を瞑ってから変身ポーズみたいな動きをしています。

 そして、カッ!と片目を見開きました。


 それを見た日向紅葉さんは興味深そうにニヤリと笑いました。

 逆に波澤翠さんはしっとりした雰囲気で佇んでいます。


「へぇ、あの歳でルーティンを使いこなすのか。しかも、きっちりゾーンにも入ってる。たぶん魔眼系のやつだな」

「トトキちゃん……成長したね」


 ……ルーティン?ゾーン??魔眼???


「なにを言っているかが分からないのかね?」


 絶対心を読みましたよね、十六夜壌砥さん?


「やれやれ、あまり睨まないでくれ。表情から推測しただけだ」

「そうですか」


 正直、信用できません。


「ふむ、まあ致し方ないか。お詫びと言ったらなんだが、ルーティンについて教えてあげよう」

「いえ、大丈夫です」

「まずルーティンというのはだね、」

「無視!?」


 結局、かなり強引に教えられてしまいました。


 ルーティンというのは決められた動作を行うことだそうです。

 何かを行う時、常に同じ動作をすることで自分自身を特定の状態に持っていくことが出来る様になる……らしいです。

 その『特定の状態』を『絶好調』に設定すれば、いつでも最高のパフォーマンスが出せるのだとか。

 なんだか胡散臭い話です。


 そして、さらに胡散臭いのが『ゾーン状態』。

 集中力が極限まで高まった状態を指す言葉で、普段よりも格段に感覚が研ぎ澄まされます。

 一流のアスリートは時折、この状態に突入するのだそうです。


 最後の魔眼に至っては

   「知らん」

 とのことです。


 ……ここまで語っといて知らないってなに!?

 そう言って抗議してみたら涼しい顔で、


「魔眼なんて非常識なもの、存在するはずないだろう」


 妖怪サトリが何か言ってます。

 あなたはまず鏡を見てみるべきです。


「しゃーねぇな。私が解説してやるよ」


 面倒くさそうに頭を掻きながら、日向紅葉さんがこちらにやってきました。

 彼女が言うには、『ゾーン』に入って脳の処理速度が上がると、自身の身体はもちろん、風の動きや周囲の景色など、あらゆる情報を余すところなく認識出来るようになるのだそうです。

 そうなると、その人の持つ五感の中でも特に鋭敏なものが、普通なら知覚出来ないものを知覚する事があるそうです。

 そのが視覚に拠っている場合を、魔眼系のゾーン状態と呼んでいるそうです。


 ……どゆこと!?

 この話を聞いて、「あー、そういう感覚わかるわー」って顔して普通に頷く波澤翠さんも含めて、さてはこの人たち全員が妖怪変化なんですね?そうなんですね??

 私は食べても美味しくないですよ!?


 ここにいるとガラガラと常識が崩れていきます。

 崩れすぎて粉々です。

 サラッサラの砂みたいです。


 ……前言撤回します。

 やっぱりこの部活動は有害です!

 お前ら私の常識を返せ!!


 

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