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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第四章
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第①話 ウィルフル・ピース



「益有、そこをどうにか……頼む。この通りだ!!」


 担任の先生が両手を合わせて頭を下げてくる。

 大人のこういう姿は、正直あまり見たくないなと思う。


「先生が自分で称美さんに頼めばいいじゃないですか」

「うーん、それはなぁ……ちょっと高くつくと言うかなんと言うか」

「クラスでは勉強の手助けたり、困ってる人にアドバイスしたり、色々と面倒見がいいですよ?」

「それは生徒同士だからなぁ」

「……?」


 よくわから無いけれど何か問題があるらしい。


「とにかく、ダメ元でいいから頼んでみてくれ」


 と言うだけ言って、担任は職員会議に行ってしまった。


「はぁー」


 十六夜称美さんとはあまり親しくないから、こんな事をお願いするのは気が進まない。

 それに、その立ち居振る舞いの美しさや高い運動神経、そして人当たりのいい性格から周囲の尊敬を集める彼女が、桔梗トトキさんと日向陽毬さんに下手な事を言えば、イジメに発展する事もあり得ます。


「……」


 小学五年生の頃、私はイジメを目の当たりにしました。


 一人の女の子が、数人の男の子からずっとイジメを受けていて。

 特にそのリーダー格の男の子がしつこくイジメをしていた。


 でも、私を含む他のクラスメイトは皆んな見て見ぬ振りだった。

 下手に口出ししたら、今度は自分が標的にされる。

 それが怖かったから。


 先生もずっと知らん振りで、結局その女の子は転校していった。

 その数日後、イジメをしていたグループのリーダーも不登校になってしまった。


 もしかすると、そのイジメは好きの裏返しだったのかもしれない。

 好きな子に構って欲しくて嫌がらせをして、次第にエスカレートしてしまったのかも。

 だから、転校に追い込んでしまった自分を責めて、学校に行けなくなった……とか。

 もちろん違うかもしれない。

 単に、学校へ行かずに遊んでいるだけかも。


 どちらにしても、笑顔のない結末だった。


 そして私たちのクラスは四月を迎えて、クラス替えとなった。

 胸の中に気持ち悪さを残して。


「……ふぅ」


 また同じ状況になった時、私はイジメを止められるのか。正直、自信がない。

 だから私はクラス委員に立候補した。


 ルールとモラルをちゃんと守って生活したい。してほしい。

 だからクラス委員として、いけない事をした人がいれば注意するし、困ってる人がいれば話を聞く。ちゃんとみんながルールを守って、みんながモラルに従うように気をつける。

 そうすれば、きっとイジメは起きないから。


「……こっそり注意してって頼めば、きっと大丈夫だよね」


 明日、十六夜称美さんに頼んでみよう。

 彼女に注意されれば、態度を改めてくれるかもしれない。

 もしそうなれば、クラスはもっと一致団結する。


 そしたらきっと、イジメなんて絶対に起こらない。



『みんなが笑顔でいられますように』



 不純だけど、クラスのためじゃない。

 これは私のワガママだ。


 

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