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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第三章
33/51

第伍話 賞味いたしますわ~一献カプリチオ~

 

 トトキさんと2人。

 特に何をするでもなく、心地良い雰囲気に身を任せていた時でした。

 耳に装着するタイプの通信機から、ピピピッと着信音が響きましたわ。


「うふふ、来ましたわね」


 陽毬さんのサポートなどを行っていた花森からの連絡ですわ。

 料理のラインナップを報告する手筈になっていますの。

 早速右手を耳元に当てて、通信をオンに。


「お嬢様、料理が完成間近にございます」

「偵察ご苦労ですわ。報告をお願い致します」

「鯖の湯引き、水菜、酢味噌を使った前菜。

 黒鯛の潮汁。

 鯵と黒鯛のお造り。

 以上の三種となっております」


 どうやら、チヌそのものを活かす品目にしてありますわね。

 普段なら少なくとも一品は、チャレンジングな物を創作するのですが……。


「うふふ」


 今回はトトキさんの想いの詰まったチヌを、最大限に味わう事に注力した料理構成にしたのでしょう。

 素晴らしいですわ!

 陽毬さんの独自な料理センスに目を取られがちですが、しかし彼女の積み重ねてきた料理研究は、繊細な味の調和バランスにこそ強く活かされますの。


「うふふふ」


 あまりの期待感に、つい身悶えしてしまいますわ!


「……よだれが垂れてる」


 ポケットの多く付いたジャケットから、ハンカチを一枚取り出してわたくしの口端を拭いてくれます。


「あら、ごめんあそばせ」

「ううん、大丈夫」


 顔色一つ変えずに、ハンカチでトントン。

 いつもの事だから問題ない、といった反応ですわね。

 少し恥ずかしくもあります。

 しかし一方で、学校などでは見せない姿を知って貰えている事が、それを当たり前と思ってくれる事が、たまらなく嬉しいですわ。


 すっかり口元が綺麗になり、ハンカチをまたポケットに仕舞うトトキさん。

 なんだか名残惜しいですわ。


「……で、ご飯出来たの?」

「あ、そうでしたわね」


 陽毬さんか腕をふるった、質素な魚料理たち。

 それら珠玉の三皿にどんな飲み物を合わせましょうか。

 お造りですから、日本酒が王道。少し外して白ワイン、あるいはスパークリングワインも悪くないですわね。


 ……ええ、わたくしは未成年ですわよ?

 けれど味は知っています。

 残念ながら、本物ではありませんが。


 何を隠そう、十六夜グループ傘下である『満月ドリンクス(株)』の、ノンアルコール飲料部門を統括しているのは、この私ですの!

 そこでは、新たなコンセプトドリンクとして、実在する日本酒やワイン、ウィスキーなどを完全再現したノンアルコールドリンクを研究、製造、販売していますのよ!!


 料理と酒類は、切っても切れない関係性ですもの。

 美食を志すのであれば、絶対に避けては通れないポイントですわ。


 ……職権濫用?いえいえ、ちゃんと市場調査なども行った上で、この商品は売れる!と判断したからこそ、うちの部門で販売していますのよ?ちなみに市場調査の結果、もしも需要がないと解った場合は私費で開発する気でしたわ。


 そんな私情混じりで始めたプロジェクトでしたが、医者にアルコールを禁止された方や、お酒が好きなのに酔いやすい方、アルコールアレルギーの方など、主に『飲みたいけれど飲めない』というジレンマを抱えた消費者に人気が出ましたの。

 価格も本物より少し手頃なくらいですから、代用品としても愛用されていますわね。


 それと、特典のプレミア商品が大当たりしていますわ!

 というのも、稀少なヴィンテージワインや、製造終了となった幻の酒など、数十万~数百万するお酒の再現品も勿論出来ますの。

 しかも開発の手間は、一般的なお酒を開発する場合と大して変わりません。

 お得ですわね。


 そんなお手軽プレミア商品ですが、当然ながら欲しがる人は幾らでもいます。

 それらを敢えて・・・販売せず・・・・、通常商品に付いている応募券の景品として、消費者の方にプレゼントしていますの。


 何せそれら稀少な酒類の価値は、味だけでなく物珍しさにもっていますから、大量生産大量消費を行えば、あっという間に飽きられて販売数が激減してしまいますの。

 それに、通常のノンアルコールドリンクも売れがたくなりますし。


 そんなわけで、あくまでもプレゼントのみで流通させたのですが、読み通りの大当たり!

 商品自体の完成度も相まって、それらの商品は飛ぶように売れましたの。

 おかげで、元々小さかったノンアルコール部門は急成長したのですわ。


 おっと、話が逸れましたわね。

 つまりは味が完全再現されたノンアルコールを、あくまでも試飲として好き放題飲むことができますの。

 トトキさんと陽毬さんには、試飲して簡単に感想をレポートして頂いています。

 テスターとして飲む、というていですわね。

 こちらに関しては、職権濫用のそしりをまぬがれませんわ。



 さて。

 本日のさかなには、何を合わせたものか……悩みますわ。


 ここはやはり、米の味わいが豊かな純米吟醸かしら?

 

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