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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第二章
28/51

幕間その2 〜陽毬スクール 2〜

 

 小学生時代は、どっぷり料理漬けの日々を送ったわたし、日向陽毬。

 料理が最強と信じて、その他のことはそっち除け。

 とりあえず中学生まで突っ走った訳だけど……。

 事あるごとに集団から浮いちゃうんだよね。


 なんでだー!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おっはよーございまーす!」


 今日も元気に、教室の扉を開け放つ。


「あ、ひまちゃん。おはよー」

「ひまっち、おっはー」

「陽毬ちゃん、おはよう……。(なんで『スッ◯リ!』の山◯さん風なんだろう?)」


「おはよー」「おはよー」って、クラスメートたちから、いろんな反応がドバーッと返ってくる。

 リアクションの、満漢全席やー!


 ……え?

 クラスから浮いてないじゃんって?

 うん、今はそこそこ馴染んでるよ。

 調理実習のおかげで。


 やっぱり料理は最強!



 ……でも、入学してから数ヶ月は完全に敬遠されてたんだよね。

 てか、小学生時代も多分敬遠されてたんだと思う。

 料理に夢中過ぎて気が付かなかったケド。


 中学校っていう新しい環境になって、ちょっと冷静に周りを見たら「あれ?浮いてる!」ってなってたんだよ。

 チャーハンの上のグリンピース気分を味わったね。


 んで、そこで気が付いたわけ。

 好きな事だけやって生きていくのは、普通のことじゃないんだなって。

 集団行動ってやつだね!


 確かに、集団の和って大事なんだよ。

 フレンチのフルコース食べてる時に、いきなり味噌汁が出てきたら、もう台無し。

 ガクン!って食欲が下がっちゃう。


 ……だとしたら、学生っていう集団フルコースを美味しく食べたいのは誰なんだろうね?

 これって大切だと思うんだよ。

 だって、このまま味噌汁で居続けるためには、フルコースを全部ねじ伏せるくらい美味しくないとダメだし。

 だったら、食べる人がどんな人か分かってなきゃね。


 まぁ、それはともかく。


 お喋りしてたら、いきなり料理を始めたり。

 突然教室を飛び出したかと思えば、口元に食べカスつけて戻ってきたり。

 そんなわたしを、若干迷惑そうに見つめるクラスの皆さん。

 これが日常だったんだよ。


 そんな感じで、ふわっふわに浮いていたわたしは、調理実習の班分けで余ってしまったのです。


 思いのままに料理してやったぜ!!


 課題はナポリタンだったけど……まあ当然、時間が余っちゃうよね。

 その辺の素人中学生が何人いたって、わたし一人の調理スピードにはついてこれないんだよ。

 だから余分に持ってた材料とか、購買で売ってた牛乳とかお菓子とか、いろいろ使って品目を追加!


 ビシソワーズっぽいスープとかクリームコロッケもどきとか。

 有り合わせの素材で、ナポリタンに合いそうな物を無理矢理作ってみました。

 授業中に堂々と料理が出来る!って思ったらテンション上がっちゃって、だいたい20人前くらい作っちゃった。

 つい、パッ!となってやりました。後悔はしてないぜ!!


 んで、一人じゃ食べ切れないから、他の人にも食べて貰う流れになって……あとは御察しの通り。

 皆んなが「美味い!!」ってなって、わたしの存在が認められるようになったんだよ。

 見事、ねじ伏せる味噌汁になれたわけだね。料理、マジ最強!!


 それ以来、突然キュウリを切り始めようとも、数種類のうま◯棒を粉々にして調合し始めても、ハサミと下敷きをアルコール消毒して包丁とまな板代わりにしても、色んな厚みの鉛筆削りカスを作って匂いを嗅ぎ比べても、いきなり芋虫とかをぱくっと食べても……いや、あの時はさすがにドン引きされてたかな?


 とにかく!

 これまでなら嫌な顔されてた行動が、なぜか調理実習以来は、


「まぁ、仕方ないか」

 

 って感じで、黙認されるようになった。

 てか、むしろ積極的に「今度は何してるの?」ってイジられるようになったんだよ。

 いわゆる、マスコットキャラクターみたいな感じかな?

 クラスの皆んなで、珍獣を一匹飼ってます。的な扱いなんだよ。


 確かに、以前よりはいい状況なのかもしれない。

 ……でも、わたしがちょっと(・・・・)変な事をすると、違う生き物を見つめる目を向けられる事が、割とある。

 そういう時は、どうしても心がざわつく。


 わたしは皆んなと同じ場所にいても、違う景色の中にいるんだなって。

 そう思うと、失敗したシフォンケーキみたいに、へなへなのショボーンってなる日もあったり。



 その点、委員長は態度が一貫してて、結構好きだったりするんだよ。



「日向さん」

「なあに、委員長。 あ、揚げた麺類あるけど食べる?」

「いりません。というか校則違反です!」


 怒られちった。

 ラーメンとか、うどんとか、そばとか。

 それぞれ味付けして、色々揚げてみたら意外と美味しかったから、食べて欲しかったんだけど。


「えー、美味しいのに」


 ちなみにオススメは、揚げた中華麺の甘酢風味!


「美味しいかどうかは関係ありません!」


 早くカバンに戻して下さい!と急かされる。

 相変わらず、委員長はブレないね。

 だがそこが良い!


「いいですか、日向さん。規則というのは、それを守ろうとする心こそが……」


 いつも通りにいっぱい説明してくれるけど、要は学校に調理器具とか材料を持ってくるな!って感じかな。

 どんなに美味しくても、味噌汁である時点でフレンチ失格!っていうスタンスだね。


 確かに正しい。でも、その頼みは聞けないね。


「でも、学校は色んな料理があっていいと思うんだよ!」


 誰もフレンチ限定なんて言ってない。

 色んなジャンルの集まった、ごった煮状態こそが学校だと思うんだけど。

 

「り、料理……?なんの話をしているのですか!」

「あれ?」


 そういう話じゃないの?なんか間違えた??


「とにかく。あなたの行動が、集団に悪影響を及ぼすんです」


 まぁ、味噌汁の残り香と一緒に、ローストビーフ食べるのは勘弁だよね。

 食べる人にとっては、コース料理全体としての調和も大切。

 ……でもなぁ。


「でも、委員長はわたしたち(フルコース)を食べないでしょ?」

「ん?えっと……???」


 あれま。また噛み合わない。


 ってやってる間に、チャイムが鳴り響く。

 残念。委員長とはもっともっと、お喋りしたいんだけど。


「と、とにかく!最低限、校則違反はしないで下さい!!」


 そう言い残し、彼女は席に戻っていく。

 わたしの言葉を解読しようと、頭を捻りながら。


 他の人なら「そういう生き物だから」で理解を諦めるけど、

 委員長はきっちり人間わたしに向き合ってくれる。


 やっぱ好きだなぁ。

 いつの日か、全力の手料理をお見舞いしてやるんだよ!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 委員長とのおしゃべりを堪能した、その日の午後。

 わたしは称美お嬢様と、初めて会話する事になった。


 会話するのは初めてだったけど、でも目はつけてたよ。

 だって、調理実習での反応が一人だけ違ったもん。


 他の人は「あ、うまい!」だったけど、

 でもお嬢様は「……美味い!」って感じだったからね。


 料理への造詣が深そうながあったんだよ。

 だから、そのうち何か食べさせて、感想を聞いてみたいと思ってた。


 あの瞬間までは。


 だって、


「規則を守るとはどういう事か、ご存知?」


 こんな事言ってくるし。

 この時はまだ、『ショウビー』とか『よいしょっち』って感じじゃなかった。

 ただの『お嬢様』だったんだよ。


 まあ、内容は委員長と一緒なんだけどね。

 でも心が違う。全然違う。

 本当はそんなこと思ってないのに、着ぐるみして喋ってる。

 ……って言えばいいのかな?

 しかも、着ぐるみするって事がどういう事なのか分かってて、

 深く深く分かってて、それなのに着ぐるみしちゃってる感じ。


 その辺が、こう、無自覚な人たちより、

 なんかモヤっとする。



 だから、言ってみた。



「はい、ダウト!!!」

「っ?!」


 あんなに驚いた顔のよいしょっちは、後にも先にも見た事ないかな。

 いつか、料理であんな顔させてみたいんだよっ!!


 

次から、称美パートが始まります。


お話が半分まで来ました。転に入ります。

 

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