幕間その2 〜陽毬スクール 1〜
料理って最強かもしれない!
そう思い立ったのは小学生の時だった。
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わたしには弟がいる。
すっごい生意気でムカつく奴だけど、まぁ嫌いじゃない。
そんな感じの弟。
幼い頃、そいつとめちゃくちゃ大喧嘩したことがあった。
理由は……なんだっけ?おもちゃの取り合いとかそんな感じだったかな。
そんなしょうもない喧嘩だったけど、幼いわたしたちは大真面目で取っ組み合いしてたんだよ。
二人ともマジ泣きしながら、家中を上に下にの大騒ぎ。
それを見て、エプロンの似合う優しいお父さん(主夫なんだよ)は、心配そうにワタワタしてたっけ。
ちなみにお母さんは、ポニテでスレンダーな感じの、タイトなジーンズが似合う美人さんだよ。
どんな馴れ初めがあったのか、ちょっと気になるよね。
まあ、それはともかく。
お父さんは喧嘩を止めようとするんだけど、ちょこまか動き回るわたしたちを捕まえきれなくて。
完全に涙目だったなあ、お父さん。
そうやって、結果的に三人でドタバタやってたら、
リビングで休日を満喫してたお母さんの方から『ブチィ!』って音が聞こえてきた。
頭の血管が切れた音じゃないよ?
スルメを5本、一気に噛みちぎった音なんだよ。
昼ドラ見ながらの酒盛りを邪魔されて、ぶちキレちゃったみたい。
そのまま無言で台所にスタスタ歩いていっちゃって。それでも、わたしたち姉弟は気にせず喧嘩を続行。
なんせ、二人ともすっごい怒ってたからね。
周りを気にする余裕はゼロ。
そのまま暴れ回るわたしたちが、やっと動きを止めたのは……だいたい10分後かな?
なんか良い香りが漂ってきて、わたしも弟もそっちに気を取られたんだよね。
鳥肌が立っちゃうくらいの、美味しそうな香り。
怒りを忘れて立ち止まってたわたしたちの元に、ドスドスと足音荒くやってきたお母さん。
わたしたち姉弟をまとめて『ゲシッ』と踏みつけて確保。
ついでにお父さんにもアイアンクローを喰らわせながら言い放った。
「飯の時間だよ!」
あれよあれよと言う間にダイニングへ連れて行かれて、身体が求めるままに皆んなで食事タイム。
あんなに怒ってたのが嘘みたいに、わたしも弟もお父さんも、気が付いたら満面の笑みになっちゃってた。
で、お母さんの絶品料理を食べながら思ったんだよ。
あれだけ凄いムカムカを消しされるんだったら。
きっとどんな状況でも、美味しい料理こそが最強だ!
ってね。
ちなみにもう分かってるかもしれないけど、お母さんの職業はシェフなんだよ。
うーん。プロの料理人はカッコイイ!
そんなこんなで、わたしの目指す将来が決まったわけです。
それ以来、毎日三食料理したし、何か思いつけば速攻で試して食べた。
そうやって古漬けみたいに、どっぷり料理漬けの日々を送って、どんどん料理を覚えていって、気がついたら小学生時代が終わってた。
んで中学生になった訳だけど……事あるごとに集団から浮いちゃうんだよね。
なんでだー!