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サカナ部の暇潰し’nシーサイド  作者: カカカ
第二章
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第9話 陽毬たちの わーるど

学校パートの前に、この話が残ってました。

次こそ学校パートです。


 おしゃれにセッティングされた丸テーブルを、サカナ部の三人と花森さんが囲む。

 そこに会話は無く、ただ静かにたかぶる雰囲気だけがあった。


 なんとなく神聖で、少し不思議な空白の時間。

『いただきます』を言うちょっと前、このなんとも言えない静寂が大好きなんだよ。


 食べ物に対する感謝とか罪悪感とか、それらを口に入れる覚悟とか。

 それと同時に「早く食べたい!」っていう相反する気持ちを抱えながら、

 各々が食事に対して想いを馳せる。


『食べる』ってなんだろうね?


 そこにわたしの「料理」はどう関わるんだろう。


 正直、まだ分かんないけど。


「にひひ」


 わたしの料理で目の前にいる三人を、とびっきりの笑顔にしたい!

 この心がどんな過程を踏んだって、きっと最後はこの結論に行き着く。

 それは間違いないと思う。


 だったら、考え込んで立ち止まる必要はない。

 とにかく前進しながら、時々考えればいいんだよ。きっと。


 わたしたちの中央に広げられた、渾身の魚料理たち。

 トトキっちの釣り上げたチヌは、もう刺身になってるのに、今にも暴れだしそうな生命力がある。

 新鮮さと旨さがキレイにいいとこ取りしてる感じ。

 我ながら上手く捌けたんだよ。


 その隣には、淡い琥珀色で満たされたワイングラス。

 うん、見ただけでわかる。

 あのドリンクは上等なお出汁みたいに、全ての料理を引き立てるに違いないんだよ。


 こうして料理を見つめていると、どんどんお腹が減ってきて、細かい考え事とかがグツグツ煮えて溶けていく。



「皆さま、準備は良くて?」



 心の雑味が溶け切ったタイミングで、ショウビーのかけ声が響く。


 もちろん準備は万端。

 もう食べることしか考えてない。


 トトッチも準備は出来てそう。

 純粋な食欲が、ぎゅーっと詰まった瞳を輝かせてる。


 ショウビーに至っては、お嬢様にあるまじきトロトロの表情なんだよ。

 豊富な料理の知識で、色々と想像が膨らんだんだろうね。

 ちょっとお見せできないレベルかも。


 そんなトロトロお嬢様は、待ちきれないとばかりに食前の音頭をとった。


「それでは、」

「「「「いただきます!」」」」


 わたしを認めてくれる人達に囲まれて。

 その人達を笑顔に出来るわたしがいて。

 だから、誰にどう思われても関係ない。

 

 料理中心の生き方は止められないし、止めたくないかな。


 料理をする前に思い浮かべた、皆が笑顔になってる素敵な光景。

 アレの何十倍もふわふわした世界が、テーブルを囲んで広がっていた。


 それはきっと、わたし一人では作り上げることが出来ない一品だと思う。

 トトッチへの対抗心と、ショウビーへの信頼感、そして花森さんのハイパーサポートのおかげ。


「……」


 違うかな。

 対抗心とか信頼感とか、そういうのは付属品。

 単純に、三人のことが好きだから、食べてもらいたいから、美味しい料理とふわふわな世界が出来上がるんだよ。


「にひひ」


 なにはともあれ、

 やっぱり料理は最強だと思いました、まる。



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