第8話 料理するんだよ~捌く!~ 完成
休憩も済んだし、ここからは一気に捌いちゃうんだよ!
さてさて、まずは氷に乗せてなかったチヌの切り身、厨房の温湿度で放置してたやつからだね。
まあ放置って言っても、クーラーが効いてるから室温は寒いくらいだし、部屋の隅にある加湿機も白煙モクモクしてるし。
だからそんなに表面は乾いてないよ?
むしろ、少し水が出てきてるかもね。だって表面に軽く塩を振っておいたし。
……え?
もちろん刺身にするよ?
最初からそう言ってるじゃん。
表面に付いちゃってる塩も、きっちり洗い流してから刺身にするし、何も問題ないんだよ。
この一手間をかけると、丁度いいくらいに……味が馴染むって言えばいいのかな?
なんか新鮮さが落ち着いて、旨さがググッときてマイルドになるんだよねぇ。
何故かは分かんないけど。
皆んな「新鮮なモノが美味しい!」って言うけど、そうでもないと思うんだよね。
何でもかんでも新鮮がいいなら、採れたてのバナナとか干す前の渋柿も美味しいってこと?そんな訳ない。
だから敢えて冷やさずに、さらに塩までかけて放置したんだよ!
ほらよく言うじゃん。「食べ物は腐りかけが美味しい」って。
ってことで、切り身をじっくりとチェック。
いい感じに旨くなって来てるかな?
「ふむふむ……」
ぺらっと裏側もウォッチング。
「……うん、もうちょっと置いとこう」
じわじわ旨くなってるけど、まだたりないかな?
てか本当なら冷蔵庫で、約1日くらい置いときたいところなんだけど。
まぁ、仕方ないから冷やしてた方のチヌと、まだ水槽で泳いでいるアジ。
そいつらから先に捌いちゃおう。
よく冷えたチヌの切り身を、まな板に置きつつ弾力チェック!
指先でぷにぷに……なるほど弾力が凄い。
さすがは捌いた瞬間に直ぐ冷やしただけあるね。
これなら、ちょい薄めの刺身が食感的にいいかな。
しゅしゅしゅ、っとスライスして完成。
潮汁に使わず残してたチヌの頭や尻尾と一緒に、お造り用の大皿に乗せる。
……うん。泳いでる感が出てますねぇ。
頭の中の完成図に近づいて来ましたよん。
さて残りのアジも、ささっと刺身にしちゃうんだよ。
って、そういえば先に盛り付けたアジにも塩振っといたんだった。
放置できる時間が短いから、モノは試しってことで刺身にしちゃった状態で、パラパラっと振りかけたんだけど……。
見た所、いい感じだね。よくよく旨味が出てるんじゃないかな?
こっちの刺身は魚の旨さを楽しむために、洗い流さずに塩味で食べて貰うんだよ。
さて、問題ないことも分かったし。さっそくアジのお造りなんだよ!
同じく三枚下ろしは身体に任せて、潮汁の出来を確認してみよう。くんかくんか。
「むふぅ」
ホッとする香りが立ち上がってますねぇ。バッチリ完成かな。
急いでアラを取り出さなきゃ。
刺身にしたアジを盛り付けて、ささっと鍋の前に移動。
アラを取り出してお椀にそーっと盛り付け。
そんでお汁を注いだら、湯引きしたチヌの皮と、緑鮮やかな三つ葉を散らして潮汁の完成!
よし!全部出来たぜ!!
冷める前に食べて貰わなきゃ!!
「花森さん!」
「すでに整っております」
声のする方に振り向くと、テーブルセットは準備万端。
花柄のテーブルクロスの上には料理やお箸、称美ちゃんセレクトのドリンクがセッティング済み。
そして、計ったようなタイミングで開かれる扉。
「本日はどんな美食が待ち受けているのかしら。陽毬さん、愉しませていただきますわ」
「うん。美味しそう」
ウキウキとした表情のショウビーとトトッチ。
そして二人に連れ添う花森さん。
料理完成の瞬間、ドンピシャで連れてくるあたり、やっぱりヤバいほど有能なんだよ。
60代の爺さんでなければ惚れてるところだよね。
それはともかく。
ここからは皆んなが笑顔になる(予定)の、お食事タイムだよ!
陽毬というキャラを表現しきれたかどうか……。
この章はいずれ、大きく修正を加えるかもしれません。
この後は陽毬の学校パート、からの称美パートです。
称美パートは学校パートに大きく絡んでいく予定です。